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不親切だが、それがいい。ゼルダの皮をかぶった骨太探索ゲーム【TUNIC】

私は不親切なゲームが好きなのかもしれない。
そう思ったのは「outer wilds」で自ら進んで未知の世界を探索する喜びを感じたときや、「Return of the Obra Dinn」で名も知らぬ船員の人生に思いを馳せた際、「The witness」で隠しパズルを発見した際などに得られた感覚だった。
事実、その本の三作品は私の中でいつまでも色あせない体験として深く心に残っている。
知らない世界や事柄を自らの力だけで切り開くことは、困難であるがゆえに単調なゲーム体験よりも多くの達成感が得られるためだ。

そして今、私は先に上げた三本の作品をプレイしている時と同じ感覚をあるゲームで感じている。
そのゲームこそが「TUNIC」だ。

ここからゲームの紹介を行っていくが、このゲームにおいては一切情報を入れないほうが楽しめると思うので、以下のキーワードにピンと来た場合はこの先を読まずに即購入してプレイすることをお勧めする。

・The witnessのような隠し要素が好き
・outer wildsのような発見する喜びが好き
・Return of the Obra Dinnのような推測して答えを出す事柄が好き。

出はここからゲーム紹介に入っていこうと思う。

不親切だがそれがいい。突き放すゲームデザイン

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正にタイトルの通りである。
今作は詳しい説明が一切されないまま、素手の状態で敵が存在する草原へ投げ出されるところからストーリーが始まる。現実は非情である。
プレイヤーはどうしたらいいのかと思い、開始地点をうろうろしたところであることに気が付くはずだ。
「ゲーム内に出てくる事柄が、ほぼ全てゲーム内言語でのみ説明されている」ということに。
かろうじて日本語に翻訳されている部分もあるが、基本的には見たことの無い架空の文字であらゆるものが説明されている。
看板の内容やアイテムの説明、果ては説明書の内容までが架空の文字となっている。
しかし、数字や重要な部分はうっすらと日本語で解説されている。また、説明書の内容であればイラストから内容を把握することも可能だ。
ともかく、我々プレイヤーはその小さなヒントを元に何をするべきか、どうすればいいのかを探していくしかない。
正直最初はかなり面食らったが、1時間ほどプレイした段階で徐々にゲームのスタイルに慣れることができ、一気に引き込まれてしまった。
未知に対する探究は、いつだって心が躍る物だ。

説明書を集めることによって広がる世界

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皆さんは最近「説明書」を読んだだろうか。
私はかなり長い期間読んでいない気がする。
何故なら、今のゲームは作中にチュートリアルが存在し、プレイヤーに対する誘導も多岐にわたるため、読む必要が無い場合が多々あるためだ。
しかし、「TUNIC」は違う。
説明書を読むことが前提の作品となっているのだ。むしろ、説明書よりも攻略本と言ったほうが近いかもしれない。
内容としては基本的な操作から各所のマップ、小ネタまで様々な要素をカバーしたものとなっている。それだけでも便利なのだが、今作の面白い部分として、説明書はメモ書きが何者かによって為されている点が挙げられる。
隠し通路や罠の位置、敵の配置なども説明書があれば事前にある程度把握することが可能なのだ。
そう、説明書があれば。
なんとこの作品、説明書がバラバラになってマップ上に散らばっているのである。
そのため、プレイヤーはマップをめぐりながら説明書を見つけていかなければならない。最初は当然あらゆるページが抜け落ちているので、基本操作すら自らプレイすることで模索していかなければならない。
また、ページを見つけることで気が付かなかった操作を覚えることもある。
操作において面白いのが、ゲーム内には最初から実装されているのに説明書を読まないと気が付かない操作があるという点だ。
数時間プレイした後に見つけた説明書に基本的な操作が書かれており、作品における重要コマンドだった時は思わず笑ってしまった。
知識が無いだけで、クリアのための道自体は最初から開かれている…というOuter wildsの「閃きと知識」に通じるゲームデザインが非常に面白いと感じた。

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現在私はTUNICを数時間プレイしただけだが、それでもプレイ中は未知の知識に触れるたびにワクワクしてしまい、手に入れた説明書を穴が開くほどに隅から隅まで見てしまう状態となっている。
ここまで説明書をじっと見たのは子供の頃以来だと思う。
説明書に書かれたメモ書きも、小学校の友人同士で攻略情報を共有しているような感覚を覚えるデザインであり、ゲーム製作者の意図していないような…いわゆる情報チートをしているような感覚になり「ズルをしている楽しさ」を感じるのに一役買っている。

このようなゲームに何も知らない状態で出会えたのは素晴らしいことだと思うし、できればこのゲームを何も知らないまま、今からいろいろな人にプレイしてほしいという気持ちがある。

風変わりであり、探索は難しく、不親切で…しかし理解したときには間違いなく大きなカタルシスが起きる、そんなゲームが「TUNIC」だ。



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