見出し画像

落語日記 若手三人の小さな落語会

月島寄席 スーパーラクゴブラザーズ Vol.3
4月25日 アンノーン レンタルスペース 日本橋小網町
この日は、東京都へ三度目となる緊急事態宣言が発令された日。当初予定していた会場が中央区立の区民館なので、会場の使用が出来なくなり、当然中止だろうと思っていた。ところが、当日の朝、会場から本日より利用出来ないと連絡があったので、急遽、会場を探して変更しました、との主催者からのメールが入りビックリ。
緊急事態宣言の決定から発令までの日程が短かったために、公の施設の休館の連絡が混乱したのは致し方ないとは思うが、突然の休館の連絡を受けてからの主催者側の素早い対応には、大いに感心してしまった。
当然、中止を決めてもおかしくないタイミングでの区民館からの連絡。その連絡を当日に受けてからの代替の会場探しは、そう簡単なことではない。関係者や予約者に連絡し、連絡出来なかった来場者や当日客に備えて、従来開催予定だった会場にも担当者が待機されていたようだ。
緊急事態宣言の発令もあり、会の中止も選択肢として、当然検討されたことだろう。不可抗力の状況で、中止しても苦情を言う人はいないはず。それでも、新たな会場での感染症対策を取りながら、他にも色々と気遣いされている様子を見ると、手際の良さはもちろん、何とか開催してあげたいという主催者側の強い思いが伝わってきた。小さな落語会の多くは、こんな風に主催者の皆さんの熱い思いで運営されているのだ。

この会は、元々は中野の居酒屋で開催されていた小八師匠、かゑるさん、馬久さんの三人会。会場を月島駅近くの佃区民館に移して、会の名前も「月島寄席 スーパーラクゴブラザーズ」とリニューアルされたようだ。以前より好きな三人なので、予約して出掛けてきた。
開演時間を急遽30分遅らせたので、会場に入るとちょうど高座を設営されていた。常連さんもお手伝いされていて、手作り感あふれる雰囲気。小さい会場で少人数の観客、アットホームな落語会だ。この日は、全員ネタ出しで、楽しみに開演を待っていた。

金原亭馬久「田能久」
この日は香盤順に上がったようだ。マクラは短く、噺の原話は、世界中にあり、昔話が落語になった例も多いという話。この日の演目も四国の民話が元になった噺と解説して本編へ。
田能久といっても、若大将の実家の老舗すき焼き屋ではない。阿波の国、田能村の久兵衛が主役なので田能久。久兵衛は親孝行で芝居好きなお百姓。筋書きは、親孝行者が長者になるという、まさに日本昔ばなしのような噺。
ノンビリとした素朴な語り口で、馬久さんは我々観客をコロナ禍の現実世界から長閑な落語世界へ連れて行ってくれた。田能久の馬久、似た名前だし、代名詞の噺になるかもしれない。

柳家かゑる「崇徳院」
マクラはこのコロナ禍で仕事が無いという日常をめぐる話。奥様とお嬢様もソーシャルディスタンスを取るため実家に避難しているそうだ。そんな日常の話のなかでも、師匠と行ったラーメン屋での何気ないエピソードが楽しい。
元々、かゑるさんは落語界でも事情通、楽屋雀として通っている。しかし、最近は業界の話題が無いので、ネタに困っている。そんな嘆きも、かゑるさんらしいコロナ被害。
本編はネタ出しで、かゑるさんのきっちりした古典を聴くのは初めてかもしれず、楽しみにしていた。高座舞や馬生一門会のお手伝いなどで拝見していて、かゑるさんとは馴染があるのに、落語を聴いた印象は薄いのだ。
しかし、きっちりした古典で、意外性もあって楽しめた。悪戦苦闘する熊さんが、かゑるさんにぴったり。

仲入り

柳家小八「お見立て」
トリは、一番先輩の小八師匠。唯一の真打。ろべえさん時代から好きな落語家だったが、最近はご無沙汰していた。落ち着きはさすが。マクラではご家族のお話。
今年で5才となるお嬢様。結婚されてからもうそんなに経つのか、という感慨。このお嬢様が、ちょっと変わった子供に育っている。お笑い好きで、お父さんにボケてねだり、その返しのツッコミが鋭い。さすが芸人の子、血をひいている。お父さんも嬉しそう。両親が落語家であるとは言ってないが、何となく落語をやっていると薄々感づいているそうだ。
そして、今、奥様の弁財亭和泉師匠の真打披露興行の最中。先日も、その前方で出演。この日は常連さんばかりなので、奥様のことも承知のうえだが、寄席の高座で奥様のことに触れるのは難しい。そんな話から、今回の新真打についても触れ、そのエピソードがなかなかに楽しい。
本編は、馬治師匠とほぼ同じ型。もしかすると習ったのかも。杢兵衛お大尽の田舎ぶりが楽しい。声も良いし、どこか喜多八師匠の面影を感じる高座だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?