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Interview by KUVIZM #12 松島功

ビートメイカーのKUVIZMが、アーティスト、ビートメイカー、エンジニア、ライター、MV監督、カメラマン、デザイナー、レーベル関係者にインタビューをする"Interview by KUVIZM"。

第12回は、音楽専業のデータ分析・プロモーション・マーケティング会社arne代表の松島功氏にお話を伺いました。

【松島功プロフィール】
音楽と美容が好きな人。 2020年に音楽専業のデータ分析・プロモーション・マーケティング会社arneを設立。インディペンデントで活動する音楽家のアーティストサービス、並行して国内レコード会社・マネージメント会社 各社のプロモーション業務サポートにつとめる。

X:  https://x.com/komatsushima
note: https://note.com/komatsushima/
arne公式サイト: https://arne-jp.com/

KUVIZM:
まずはじめに、松島さんのお仕事を教えていただけますか?

松島:
はい。お仕事をさせていただいているクライアントさんは大きく分けて4つあります。
1つ目が、レコード会社さん。2つ目がマネージメント会社さん、いわゆる事務所と言われたりする会社さんです。3つ目は、レコード会社さんとDIYアーティストさん(楽曲の制作から発表など、活動にまつわることを自身で完結するアーティスト)の間ぐらいの立ち位置で運営されているインディペンデントレーベルさんなどです。そして、4つ目はDIYアーティストさんです。

1つ目と2つ目のクライアントさんとは、プロモーションプランを一緒に考えたり、アナリティクス(分析用データ)を一緒に見て分析をします。課題についての勉強会をすることもあります。
3つ目のクライアントさんは楽曲の配信登録などのお手伝いをしています。
4つ目のクライアントさんは楽曲の配信登録のほかにも、SNSの運用、リリースプランの策定を一緒に考えさせていただいております。

1つ目と2つ目のクライアントさんとは業務委託という形態で、3つ目と4つ目のクライアントさんからはスプリット(楽曲収益の分配)でご一緒させていただいている形態です。

私の会社では、アーティストのファンとの関係をどう築いていくか、SNS上で何をするか、デジタル上でできることを一緒に考えることが主になることが多いです。

KUVIZM:
デジタル分野や分析が要でありつつも、取引先とのコミュニケーションも大事なお仕事ですよね。

松島:
はい。会議の議題に「次週までにプラン出します」ということが難しいことも多く、即答力が必要とされることが多いように思いますね。そこのリアルタイム感は面白いところでもあり、やりがいを感じるところでもあります。

KUVIZM:
その上で、ご自身の強みは何だと思われますか?

松島:
(元々は苦手だったのですが)今は"コミュニケーション全体が得意になりつつある"というのはあるかもしれませんね。お話しするのが苦手な方は特にいないので。

そして、これが「得意なこと!」 と胸を張って言えるように自分で努力している面でもあるのですが、 ”応援してもらえる力” が高くなるようにしています。 「松島さん・arneさん、面白いことをやってるから応援してあげよう」と思ってもらえる人や組織になりたいと思っています。

データの見方、トレンドの感じ方、それを説明する方法、すべてにおいて定性と定量、どちらも大事な業界であるからこそ、”伝える人の人間力”は重要だと思っています。ですので、そこが少しでも高くなるよう努力しています。

KUVIZM:
松島さんのお仕事は、まだ珍しいお仕事という印象がありつつも、とてもニーズがあるように思います。

松島:
はい。ただ、私の思い描く未来としては、私のような人がいなくなるべきだと考えています。
DIYアーティストさんにとっては、AI技術含めもう少し整備が整えばかなり活動しやすくなるでしょうし、私のような業種が無くても済む未来が健全かなと思います。
レーベルさんの場合は、現場の方が積極的に数字を見てトレンドをキャッチしていくことで私のような業種が必要なくなるのが、本来正しいと常々思っています。この概念を説明するのは難しいのですけどね...。

絶対的に重要な存在は、アーティストさんと向き合って一緒に二人三脚でやっていく方たちだと思います。A&Rさん、マネージャーさんといった方たちですね。

そういった方々が、今後も絶対的に必要な方々ですので、目指す方は増えて欲しいですね。直接アーティストさんと向き合って作っていく方がアナリティクス周りも把握されながら進めていくのが一番良いと思いますので。
最近ですと、ヒット作をアーティストさんとご一緒されている若いA&Rの方がテレビなどのメディアに出ていらっしゃるのも、とても良いことだと思います。若い方が、そういったかっこいい方々を見て「この仕事をやりたい」と憧れることも大切だと思います。

KUVIZM:
話は変わりまして、今の音楽業界はどのような状況でしょうか。

松島:
良い側面もあるし、悪い面というか辛い側面もありますね。
良い側面は、良いクリエイティブ、良い楽曲が、良いタイミングに出てきた時に、うまく見つけてもらって燃料を投下できると、大きなヒットになる可能性が出てきたことでしょうか。

そして、それがメジャー・インディペンデント問わずに可能になっているというところですかね。昨年2022年にTuneCore Japanから配信された楽曲のストリーミング再生数と収益は国内レコード会社の中で3位となっています。去年、最もサブスクで聴かれた曲はTuneCore Japanからの楽曲ですからね。

辛い側面は、全体の楽曲の配信数が多くなり、他のエンタメの可処分時間も多くなり、"決まった時間"の中で、リスナーやファンが"曲を聴く理由"を、作り手側がきちんと考えないと、聴いてもらえるハードルはとても上がっているということです。
大事なのは、聴いてくれる人たち。いま”楽曲を聴いてくれる人”のことを、もっと大切に考えた方が良いと思います。考えるべきは回数ではなく、人数と表現がわかりやすいでしょうか。それが例え、5人でも10人でも。回数は人が生み出すものなので。そこをしっかり考えて活動していく必要性は以前よりさらに高まっているかと思います。

戦略的に “プレイリストにどうしたら入るか”といったことを考えることも大切ですが、あくまでプレイリストに入るのは”知ってもらうため”ですので。一喜一憂する必要はないかと思います。良い宣伝になることもあるので活用はして欲しいですが。

それを考える時間の2倍、3倍くらいの時間をかけて、”いま楽曲を聴いてくれている人がどういう人で、どういう生活を送っていて、どうして聴いているのか、みんなどういう曲が好きなのか、ファンのみんなと自分たちはどう繋がるべきなのか、ということもしっかり考えるべきだとは思います。

ファンベースを作り、ファンダムにしていく。そこが大切だと思いますので。

KUVIZM:
ファン形成という点では、日本の人口減少(特に少子化)もあって、音楽業界も海外マーケットも意識する傾向という印象があります。

松島:
TuneCoreを通じて誰でも全世界に出せますからね。YouTube、Spotify、SNSで出せば全世界ですし。既にやってるわけですからね。
海外については特段気にしすぎる必要なくて、地続きで地球は1つだという認識ぐらいが良いかと思います。”狙ってどうこう”ではなくて普通にやればそのまま届いていくと思います。もちろん細かい最適化はあると思いますが、そこは手段の話なので。

良いものを作ることや、目の前のファンの人を増やしてファンダムにしていく、そういうことを目的として考えていった延長線上にたまたま海外があるだけ、ファンダムの中に使ってる言語が違う人がたまたま混じってくるだけの話です。
それってもう普通にどのアーティストでもおきてることだと思うので。粛々とやりましょう!

過剰な海外戦略意識は高年齢層の人たちが騒いでるだけなので、若い人は普通にニュートラルに意識しないくらいに意識してると思います。それで良いと思いますよ。ちゃんと届きますので。

「デジタルデジタル」言う人と「海外海外」言う人は同じ呪いにかかっていますね。

KUVIZM:
ありがとうございます。"裏方"についてお話をお伺いさせてください。松島さんはスプリット契約でのお仕事もなさっているとのことですが、そのような仕事の仕方をする人は増えていくと思いますか?

松島:
増えていくとは思いますが、収益として安定させるのが非常に難しい業態なので、そこを耐えられるような別の柱の収入源もあると良いのではないでしょうか。

KUVIZM:
誰でも楽曲を全世界に向けて配信をできることになり、1人で楽曲の配信登録やプロモーションもこなすクリエイターも増えています。役割の分業と専業などについてはどう思われますか?

松島:
チームとして複数人でやっていく方が強いと思います。
例えば、HIP HOPカルチャーが今大きくなっているのは、クリエイターの周りに”人”がいることが大きいと思います。ラッパーの周りにトラックメーカーや、競争相手のラッパー、一緒に活動をするラッパー、MVを撮る人がいる。一緒にワイワイと、友達同士の関係からクリエイティブチームになる、といったことから学ぶべきことは多くあります。

1人でやることに全く異論はないですし、それができる方はどんどん邁進してください。一方で1人が難しい方は仲間が多いほうが強いとは思います。それがA&Rという仕事なのかマネージャーという仕事なのか、友達なのかはさておき。

最近は昔より、より顕著に複数人ということが大切だなと思っています。理由としては2つあるのですが1つ目は、YouTubeやApple Music、Spotifyのアナリティクス情報を見る時に、見方や捉え方が人によってとても違うからです。”見る人が1人いるから大丈夫”ではなく、5人いたら5人で見て5人で話す方が絶対強いと思います。

2つ目に、今のトレンドをキャッチするときに得ている情報は、人それぞれパーソナライズ化が進みすぎて、人によって見えているものも、見えているタイムラインも全く違うからです。
見えているものが違うからこそ、何人かでそれを共有したり、話し合うようなチームの方が絶対に強いと思います。1人ですと、入ってくる情報1つとっても、限定的かつパーソナライズドが進んだ情報ですので。そのため、"多様な意見が入ってくる、多様な情報をキャッチできる状態"は作っておいた方が良いかなと思います。仲間と話し、意見を交わす、色々な人から教えてもらうことも重要であると思います。それは音楽活動どうこうというより、現代を生きる我々全員にとって気にすべきことですけれどね。

KUVIZM:
ありがとうございます。本日のインタビューは以上となります。

過去のインタビューはこちら
https://note.com/kuvizm/m/mb5dcc2fd6d61

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