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X'masにビートルズを聴こう!

 【スピリチュアル・ビートルズ】ビートルズの現役時代に録音されたクリスマス・ソングはただ1曲「Christmas Time is here again」である。ただ当時は、多くの人たちが耳にしたとはいえない隠れた作品だった。
 というのも、1963年から69年まで毎年、英国のオフィシャル・ファン・クラブが会員にクリスマス・プレゼントとして送っていたレコード(ソノシート)に収録されていたからだ。
 それが広く知られるようになったのは90年代に入ってから。ビートルズが自分たちの歴史を振り返るというアンソロジー・プロジェクトでこの歌も掘り起こされ、彼らの「新曲」の第1弾「Free as a bird」のCDシングルに収録されたからである。
 解散後のビートルたちのクリスマス・ソングの中でおそらく最も有名なのは、71年12月に発表されたジョン・レノンとヨーコ・オノの「Happy X'mas (War is over)」だろう。

 


 これは、69年12月15日にローマ、パリ、ベルリン、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、アムステルダム、モントリオール、トロント、東京など世界主要12都市に「WAR IS OVER!/IF YOU WANT IT/Happy Christmas from John & Yoko」と書かれたポスターを一斉に張り出した2人の平和キャンペーンを歌にしたものだ。


 「戦争は終わる/もしあなたがそう望むなら」というメッセージは、悲しいかな、いまだに争いの絶えないこの世界において、希望を想い描くことの重要さから広く共感を得て、今やクリスマス・ソングの定番となっている。
 ハーレム・バプティスト教会聖歌隊の子供たちのコーラスも、この作品に重厚さとともに無垢(むく)な味わいを加えている。
 ジョンは80年、この歌について『ジョン・レノンPLAYBOYインタビュー』(集英社)で次のように語っていた。
 「メッセージはいつも同じだ。ぼくらにもボタンを押す人間と同じように責任があるってことさ。何者かがぼくらに力を与えたり、奪ったりするのだとか、何者かがぼくらを戦争に行かせたり、行かせなかったりするとか。天の神は別個の存在だとか、国家や宗教でぼくらはみんな区分けされているとかいう考え方、そんなのは、みんなゴミと同じさ」
 「誰かに何かをさせられているから、自分の意思が通せないと考えている限り、世の中を動かせっこないさ」。
 ジョンとともにビートルズの屋台骨を支えてきたポール・マッカートニー。長いことクリスマス・ソングを望まれてきたが、ようやく世に出たのは79年12月のこと。「Wonderful Christmastime」である。


 シンセサイザーを効果的に使い、季節感たっぷりのムードが醸し出される中で歌い上げられているハッピーな楽曲である。B面には「赤鼻のトナカイ(レゲエ・バージョン)」が収録されていた。
 ポールがすべての楽器を演奏している。全英ヒットチャートで最高位6位を記録し、米ビルボードホット100では28位まで上昇した。また、そのほかの国々のシングル・ランキングにもチャート・インした。
 ジョージ・ハリスンの「Ding Dong、Ding Dong」(74年12月リリース)もクリスマス・シーズン向けの歌である。クリスマスという言葉をあえて使っていないのはキリスト教だけのホリディでないとのジョージの自己表現の形なのだろう。「Ding Dong」とは鐘の鳴る音のこと。


 ジョージは「鐘の音とともに古きを送り出そう、新しきを迎え入れよう」と歌った。アルバム「Dark Horse」から第一弾シングルとしてカットされ、アルバムにはB面1曲目に収録。米ビルボード誌では最高位36位を記録。
 イントロの「ビッグ・ベンの鐘」はジョージがスライド・ギターで演奏。また、プロモーション・ビデオの中でジョージはアイドル時代の襟なしスーツを着てマッシュルーム・カットのカツラを着用したり、アルバム『Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band』のジャケットや「Hello Goodbye」のミュージックビデオで知られるミリタリールックを着ているシーンがある。
 そしてリンゴ・スターがやってくれた。 素晴らしいクリスマス・アルバムを発表したのだ。99年にリリースされた『I wanna be Santa Claus』は12曲すべてがクリスマス・ソングという徹底ぶり。


 アルバムの冒頭を飾る「Come On Christmas, Christmas Come On」は力強いドラムスが印象的なオリジナル曲。
 この歌を含め6曲をリンゴが仲間と書き、残る6曲は「White Christmas」、「Blue Christmas」などのスタンダード・ナンバーだ。
 「Little Drumer Boy」で聴くことの出来るリンゴのドラムの力強さといったらこのうえない。そして、リンゴはこのアルバムで、ビートルズの「Christmas Time is here again」をセルフ・カバーした。
 「Pax Um Biscum (Peace be with You)」(邦題「静かな宵に)というシタールなどを使ったインド音楽調の楽曲もあって、この作品でリンゴらしいハッピーなクリスマス・アルバムは締めくくられる。
 ジャケットはサンタに扮したリンゴ。ご機嫌なアルバムに仕上がっており、ビートルズ・ファンならばぜひ一聴をおすすめしたい。



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