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聴き語り「With the Beatles」

 【スピリチュアル・ビートルズ】面白いイベントが昨年スタートして続いている。ビートルズのオリジナル・アルバムの発表日から60周年の日に「聴き語り」イベントを開催しているのだ。つまり、そのアルバムを聴きながら語るという集いである。
 2023年11月22日(水)、「The Beatles 2nd LP ”with the beatles" 60th Anniversary 聴き語り Live」が「ジェミニ・シアター」(東京都世田谷区玉川3-20-1マノア玉川第1B1F)で開かれた。


 登壇者はブロードキャスターのピーター・バラカンさんとビートルズ研究家の藤本国彦さん。バラカンさんは昨年開催された第1回目のデビュー・アルバム『Please Please Me』のイベントでも解説を務めていた。
 『With the Beatles』は本国イギリスで1963年11月22日に発売された。メンバーの顔に陰影をつけた「ハーフ・シャドー」の白黒写真が印象的なジャケットはアートである。チャートの首位を獲得したのはもちろんだが、何と21週その座にとどまったのである。


 さて、イベントではアルバムの全14曲を順番に聴きながら、バラカンさんと藤本さんがコメントしていった。レコードは、盤に光を当てて反射してくる情報で音にするレーザー・ターン・テーブルでプレイした。
 まずは「It won't be long」。
 バラカンさんが当時を振り返る。「1962年に彼らは一応デビューしていたけど、63年に「Please Please Me」がヒットして、みんなアルバム『Please Please Me』で盛り上がって、「From me to you」、夏に「She loves you」がいきなり1位になって、ラジオでも毎日かかっていた」。
 「非常に短いスパンで新人バンドが大スターになったので、期待して待ったのが『With the Beatles』でした。前作よりうまくなった。1曲目もパンチがきいていて、コード進行も面白い。洗練されてきた」。
 2曲面は「All I've got to do」。藤本さんは「このアルバムでのジョンの声が好きなんですよ」と言った。するとバラカンさんは「リンゴのドラムもちょっと外して、リズムの取り方が当時は珍しかったと思いますよ」。
 次に「All my loving」をかけた。「シングル・カットされなかったけれど、ラジオで一番かかっていたのはこの曲じゃないかな」とバラカンさん。
 「とにかくリズム・ギターが忙しい。すごく早いテンポで刻んでいる。最初に変だと思ったのは、ギター・ソロのところで転調して変わっちゃうところに違和感がある。カントリーっぽくなるのかな」。
 続いてはジョージが初めて手掛けた「Don't bother me」。藤本さんが解説した。「ジョージが入院している時、ニール・アスピナールたちがやたらと体調のことを聞いてきたので、この曲を書いたっていいます」。
 合わせて聴いたのが「Little Child」で、バラカンさんは「すごく単純」「安易な曲」と辛口コメント。そして「今歌詞を改めて聞いたら、性虐待になる。ちょっと危ない。Little Childはないだろうって」と語った。


生懸命に構築したギターソロ
 「Till there was you」について、バラカンさんはこの曲はそもそもミュージカルで使われているが「ビートルズのほうから先に聴きました」という。藤本さんは「ペギー・リーのバージョンを聞いていたんじゃないかな。ジョンは(この曲を)嫌いだったらしいです」と話した。
 バラカンさんが「どうしてこの曲をやるのって。ビートルズじゃないよって。12歳でもそう感じたんです」と言うと、藤本さんは「「Yesterday」の前触れみたいなんでしょう。ジョージがいいギター弾いてるし」と答え、バラカンさんは「上手だよね。あのソロ、一生懸命に構築したんだろうね」。
 A面の最後はモータウンのマーベレッツのカバーで「Please Mr. Postman」。「当時のイギリスでモータウンのことを知っている人はわずかだったと思います。ステートサイド・レーベルから出ていた「Where did our love go」や「Baby Love」がヒットして、64年にタムラ・モータウンが出来たんじゃなかったかな」とバラカンさんが語った。
 聴き終えたバラカンさんは「しびれるね。初期のビートルズの醍醐味だね。マーベレッツのレコードを聴いてたんでしょうね」とお気に入りの一曲であることを隠せなかった。藤本さんは「かけあいコーラスがいい」。


 ここからB面でまずは「Roll over Beethoven」。
 「この曲もビートルズで初めて知りました。70年代に初めてチャック・ベリーのオリジナルを聴きましたが、歌詞がとても面白い。50年代のアメリカの若者文化がよくわかります」とバラカンさんはいう。
 B面2曲面の「Hold me tight」について藤本さんはビートルズの公式曲213曲のうちで「212番目に好きな曲」だといった。バラカンさんが「213曲目は?」と尋ねると藤本さんは答えて「What you're doing」。
 バラカンさんがこのアルバムの中で一番好きだという「You really got a hold on me」が次の曲。このオリジナルのスモーキー・ロビンソンとミラクルズを聞いたのは「ぼくが日本に来てから。ミラクルズの原曲もいいけど、ビートルズがオリジナルに負けていなくて素晴らしい」。
 「レノン=マッカートニーもいい曲あるけれど、スモーキー・ロビンソンのほうが一つ上だと思います」(バラカンさん)。
 次は「I wanna be your man」。ジョンとポールの作品でリンゴが歌った。ローリング・ストーンズに提供したことでも知られる。

「This boy
 その経緯について、バラカンさんが話した。「ロンドン中心でミックとキースが地下鉄の駅から出てきたところ、タクシーでジョンとポールが通りかかったので顔を合わせた。ミックが「ストーンズは次のを考えなくちゃ」というとポールが「ぴったりなのがあるよ」」。
 藤本さんも話した「スタジオでジョンとポールが、ミックとキースの目の前で、すぐ作るとびっくりしていた、という話があります。でも嘘ですね。あと「One after 909」を歌ってもらうという話もありました」。
 次の曲はこれもカバーで「Devil in her heart」。LPではジョージがメインボーカル。続いてもカバー作品「Money」。これでアルバムはとりあえず終了となる。「バレット・ストロングがスタジオでピアノを弾いているうちにこのリフが見つかったと言います」とバラカンさん。


 第2部はまずビートルズがカバーした作品のオリジナルとの聴き比べということで、先達たちのオリジナルを3曲聴いたーチャック・ベリーの「Roll over Beethovent」、スモーキー・ロビンソンとミラクルズの「You really got a hold on me」バレット・ストロングの「Money」。
 そしてバラカンさんと藤本さんとともに「レコード鑑賞の夕べ」となった。順番に「I saw her standing there」「Love me do」「Please please me」「From me to you」「Thank you girl」「I'll get you」「All my loving」「I want to hold your hand」「This Boy」。
 バラカンさんは「抱きしめたい」の歌詞について「僕は君の手を握りたいですよ。20代の男が何言ってんだってなりました」。「This Boy」については「A面よりこちらを聞いた回数のほうが多かったと思う」。
 次は「Twist and Shout」で観客も立ち上がり、大いに盛り上がった。アンコールはこれしかないとビートルズ”最後の新曲”「Now and Then」そしてカップリングされたデビュー曲の「Love me do」だった。
 次回(A Hard Day's Night)は2024年7月10日に開かれる。

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