親子編 73回目 七拾五

「国籍留保届」は、出生日から3か月以内に届出を

しなければなりません。

その期間を過ぎると、さかのぼって、
出生の時から国籍が無かったことに

なります。

本来は、権利行使とは自己の責任と権利に基づいて行いますが、

そんな中でも、「もし」

「届けを出し忘れてしまったら?」

「届出を郵送したのに届いていなかったら?」

[どうしても届出ができない理由があったら?」

など、様々な要因で、不可避的に届出ができなくてもそういった

事情を考慮せず、「だめ」と切り捨てられてしまうのでしょうか?

「国籍」という個人の人生に重大な影響を及ぼすものを

届出期間内に出さないだけで喪失してしまうのは、

あまりに酷であることから、一定の救済措置が設けられています。

戸籍法104条3

 天災その他第一項に規定する者の責めに帰することが

できない事由によつて同項の期間内に届出をすることができない

ときは、その期間は、届出をすることができるに

至つた時から十四日とする。

出生から「3か月以内」という期間内に届出ができなかった場合に

そのできなかった理由が「責めに帰することができない事由」

があるときは、届出ができるようになった状態の日から14日以内に

届出をしなさい。ということです。

「責めに帰することができない事由」

こんな日本語、日常会話で使っている人をみたことがありません。

この言葉の意味は、

帰責事由がない場合⇒届出をするものの責任ではない。届出を

する人ではどうしようもない事由によって。

という意味です。

届出ができる人が、その人の力ではどうすることもできないことが

起きたことで届出が出来なかった場合には・・・・・・

という意味での救済措置です。

では、「責めに帰することができない事由」とは一体

どんな事由なのでしょうか。

(a)出生証明書が届出期間内に発行されなかった場合

㋐ニュー・ヨーク市役所記録課で出生証明書が届出期間内に

発行されなかったため、出生後22日を経過して届け出たもの

(昭35・1・19民事甲第147号回答)

㋑出産に立ち会った医師が夏季休暇等のため、出生証明書が得られず

約3か月遅れたもの

(昭44・3・5民事甲第390号回答、昭51・8・12民二第4580号回答)

㋒現地の公衆衛生局の出生登録の誤りのため、その訂正手続きに

日を費やしたので、出生証明書の入手が遅れて届出期間を経過し、

領事館においても届出を受理できないとして帰国後手続きをするよう

指導されたため、役1年6か月遅延したもの

(昭37・4・17民事甲第1064号回答)

(西堀英夫、都竹秀雄 渉外戸籍の理論と実務176項)

(b)在外公館n所在地から遠隔地に居住していた場合

出生地である移住地が新開拓地のため、極めて交通不便なところで

あり、また、出生当時在外公館も設置されておらず、届出の方法も

ないまま出生後約2年1か月を経過して届け出たもの

(昭35・9・16民事2039号)

(c)届書の不備に起因する場合

在外公館において出生届の不備を補正させるため、届出人に届書を

返送したところ、約1か月後に再提出されたもの

(昭39・2・5民事甲第273号回答)

(d)郵便が到達しなかった場合

子の出生後に直ちに届書を領事館あてに郵送したにもかかわらず、

何らかの事情によって届書が領事館へ到達していなかったので、

約5年10か月後に再提出したもの

(昭34・7・2民事甲第1368号回答、昭56・3・9民二第1475号回答)

(西堀英夫、都竹秀雄 渉外戸籍の理論と実務176項)

などがあります。

届出人の責任以外の部分での要素によって、不可避的に届出が

できなかった場合などがあります