column#1 僕、他界したんだ。

※新たにコラムをスタートした。これはマーケティングという多数のNの最大公約数を考えるものではなく、食前舌語(もちろん本当は別の名前でオタクをしています)というN=1の等身大を深掘ることで、そのオタクの行動原理などをさらに鮮明なものにしたい、という試みである。
そのため、この企画ではマーケティングなどの一般論に帰結せず。常にN=1の個人的感性を重要視して記載していきたい。

chapter0:他界ってなんだっけ?

ありがたいことに、このnoteについては業界問わず様々な人に読んでいただいているようです。
そのため、本論にかかわるためこれについてはしっかり定義したい。

たかい【他界】
1.死を婉曲的に表現する語。
2.特定のアイドルの現場に通わなくなること(決してアイドルオタクを辞めることだけを指さない)

これ、少し調べてみると地下アイドル界隈ではなく男性アイドルなどでは『(担当を)降りる』といった表現だし、バンギャであれば『あがる』といった表現のようだ。

別に新しいグループを開拓したわけではないし、例にもれず私も別にオタクは続けているし、元通っていて頻度が減っていた現場に戻った程度である。

その中で、過去に2回大きな他界があったのだが、特に直近他界したこともあり、今年最後の食前舌語の記事として、一年のまとめとしてこちらで締めていきたい。

chapter1:1回目の他界

一回目の他界は某それなりの規模の地下アイドルだった。

そのグループ最大のワンマンライブが終了し、そのタイミングでメインボーカルが卒業した。
その後、良くも悪くも地下アイドルのトップレベルを維持していたが、ただメンバーのモチベが完全になくなっていた。
やはり「ちょっと頑張ればチヤホヤされるし、オタクもいる」みたいな態度に対していい思いはしないし、全くお金を払う理由がなくなったと感じてしまったのである。

もともとガチ恋でもないし、応援したいって気持ちよりも友達感覚でアイドルに通っていたし、その際ちょうど別現場も気になっていたこともあり、他界する時は「もっと面白い現場に通いたい、お金を払う価値のあるとこで払いたい」という思いだった。

そう考えると、本当にライトに、洗浄能力が高いコスパのいい他の洗剤に変えるくらいの簡単な気持ちで他界した。

chapter2:2回目の他界

ここの現場はかなりきちんと通っていた気がする。
もともと楽曲に定評がありそこから入ったのだが、メンバーの1人が仕事を辞めてアイドルを始めた、というアイドルへの覚悟だったり、メンバーだけでなくオタクの環境の良さもあり、本当にオタクとして過ごしやすかった。

ただ一点、ライブがつまらないことを除いて。
いや、別にセトリで良し悪しは変わるし、1回2回つまらないなんて良くあることである。
ただ、ここは致命的にライブがつまらなかった。
盛り上がる曲はもちろんあるし、単発で見るなら今でもおすすめできる自信がある。ただ、通うという観点では本当にきつかった。

というのも、どんだけ新曲の曲風が変わっても、別にセトリは5回通えば同じものになるし、何よりワクワク感がなく「定番」を追い求めるだけであった。

つまり「停滞」である。

ここで、例えばコンセプトライブのようにいろいろ変化をつけることも重要なはずだが、ワンマンライブも対バンの長尺でしかない。
極め付けは遠征で4公演あり、そのうち3公演の対バン相手は、すべて東京でいつもやってるアイドルだった。

その時に推し続けるという理由がなくなってしまった。
それまで、推しメンに対し、微力であることはもちろんの上で、「幸せにしたい」の気持ちが強かった。
しかし、やはりライブが嫌という致命的な状況の中で、応援したい気持ちは残っているものの、「幸せになって欲しい」と、完全に他人事になってしまった。

ここで少し考えてみる

1回目の他界は、簡単にいうと「生産者が消費者を馬鹿にした商品しか出さないから、消費者が離れた」ということである。
いわば「ブランドからの裏切り」という一言に尽きる。

これは完全に生産者(アイドル・運営)にも悪意があるし、明快な理由での他界だと考えている。
「オーナーが変わって味が変わったから行かない」など飲食店では良く起こりうるが、まさしくそれと同じである。

一方で、2回目の他界はアイドル本人には問題はなかったりする。いや、ないのかな。わからんけど。
実際、よくわかってない。
ただ、今の私は趣味にお金を払う中で、求めているものは「変化」であり「刺激」であると思う。
その中で、先ほどまで記載した通り、何事も「特別感」がなく、常にいつもの定番でしかない。
そこに「現状維持」以外の目的がないなら、応援したいともならなくなってしまう。
応援できないアイドルに対して、やはり通う理由にもならないわけである。

ただ、どちらの現場も別に完全に全く通ってないわけでもないし、別にそこの現場のオタクと今でも連絡をとっているし、何かの決断があったかというとそうでもない。
かなりふらっとした決断である。

他界とは「楽しいの追求」と「今までのアイドル/オタクとの関係値の破壊による損失」との天秤が前者を選んだ時になされるものである。
この時、「楽しい」にもさまざまなものがあるが、そこにどう変化をつけるかも飽きられないための必要なものなのかもしれない。

自分ゴト化させるためには、酸いも甘いも新しい刺激を作り続けて欲しいところである。

最後に

このシリーズ、どうまとめてばいいのか何もわからないですけど、他界しない理由がオタクとのコミュニティの中で快適に過ごしていることだったり、実はただアイドルが作り出す価値や楽しさだけではないのかもしれない。

ただ、一方でお金を払うからこそ、なあなあに通い続けることも一興だし、常に楽しい現場を求め続けることも一興である。

どこかでオタク辞めるってタイミングの、本当の他界も近いのかなぁ。
でも、推しメン可愛いもんなぁ。(オタクやめられない)

閑話休題

ということで、今年の食前舌語の記事は最後になります。
ちょっとTwitterでも書いたんですが、年末年始に向けてさまざまな記事を書くために考察中ですので、ぜひご期待ください。

今年はまねき・ニジマスの解散を元に取り上げた地下アイドル業界の分析は、業界内でさまざまなご反響をいただき、改めてこの一年はたくさんありがたい思いができました。

来年も皆さんに「なるほど」「たしかに」をたくさん作れるnoteであり続けていきます。
そして、このアイドル業界が、再び隆興していく上で、ほんの少しでもこのnoteが踏み台になれば。

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