ウサギさんの代筆(Pさん)

 Pさんです。
 諸事情によりウサギさんが文章を書けないので、ここに代筆します。
 ウサギノヴィッチという人の作風をマネして、なんか書こうと思ったけど、うまく行かないので止めました。これだけ長くやっているけど、いざ文体模倣しようと思うと難しいものです。
 ウサギノヴィッチさんが、なぜ今回書けなくなったのか。それを説明するには、まず印鑑からシヤチハタに進化した、ハンコの歴史について説明しなければならない。シヤチハタというのはご存知インクが後ろから出てくるスポンジ状のハンコという構造によって、朱肉要らずという荒技をやってのけたシヤチハタ社の画期的発明品である。
 会社ではよく「シヤチハタOK」の押印と「シヤチハタNG」の押印が求められる場合がある。会社内の、狭い範囲での確認印、たとえば閲覧印のごときものは、シヤチハタOKであるが、社内でも正式な書類であったり、対外的に使用するものである場合には、「シヤチハタNG」となり、実印あるいは認め印を持ってこなければならないという仕儀になる。
 八時丁度のあずさ二号と、上野発の夜行列車がホームを挟んで逆走して、駅を通過していった。蛍光緑の時計が午前3時を差していて、間もなく枯れ葉で埋め尽くされて廃駅になった。
 分量を間違えたスポンジケーキから煙が出て、消火するにはペプシコーラの手のものが必須だとするシチュエーションが、おのずから湧き上がって辺りをうさんくさいドッキリカメラ的な雰囲気を作り出していた。ばた足の練習を、授業の度に強制的に受けさせられていたが、こんなんで本当に進むのか? 推進力を得ることが出来るのか? 半信半疑ながら練習は続いて食パンのことを考えていた。
 思えば、食パンをキャラクター化してヒーローに仕立て上げるなんて、残酷なことをしたものだ。彼が、泣きわめきながら抜け出すことの出来ない「かえし」の針が飛び出ているトースターでこんがり焼かれるシーンは、映像化の際にはカットされた。同じ要領で、暗記パンの効果を最終的に確実なものにするため、最後に認め印を右端のフリースペースのどこでもいい場所に押さなければならないというルールも、ドラえもんが独断で決めた、社内でルール化することが困難な自分ルールであるというのと、映像的に地味だという声を受けて、カットされた。

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