いつになったら、この世に収穫がもたらされるのだろう/Blxst「Fake Love in LA」

アイズレー・ブラザーズ……言わずもがな、1950年代後半から現在に至るまで、色々ありつつ(笑)ずっと活躍しているファンク/ソウル・バンド。代表曲/人気曲も「Between The Sheets」「For The Love Of You」「(At Your Best)You Are Love」「Go All The Way」「Work To Do」「Don’t Say Goodnight(It’s Time For Love)」等々、枚挙に暇なしの最強グループですが、中でも私が大大大好きな曲が「Harvest For The World」という曲。76年の同名アルバムのタイトル・トラックで、アイズレーで唯一7インチを持ってるくらい大好きな曲ですが、この曲を2月24日のウクライナ侵攻以降、以前にも増してよく聴いています。

The Isley Brothers / Harvest For The World

この曲が作られた76年はベトナム戦争が終わったばかり。歌詞を書いたギターのアーニー・アイズレー(アイズレー兄弟の五男。ちなみにロナルドは三男)によると、経済状況も良くなく、貧富の格差も大きかった時代背景を歌っているとのことで、実際

<僕らの半数は満たされ/半数は満たされないでいる/愛は豊富に僕らの中にあるのに/強欲がそれを曇らせてしまう/いつになったら、この世に収穫がもたらされるのだろう>

<一人も置いてけぼりにすることなく、みんなで世界のために素晴らしい人生が訪れるように祈ろう>

と歌ってます。

ベトナム戦争に言及しているわけではないし、わかりやすい反戦歌ではないけれど、最後のヴァースの

<平和を望んでいるのに/周りが僕に武装させ、戦いに送り出す/なんの報いもなく戦いから戻ってくるだけなのに/国という国が恐ろしい獣に姿を変えてゆく/いつになったら、この世に収穫がもたらされるのだろう>

という歌詞は、明らかに反戦歌ですよね。
というわけで、歌詞を噛み締めながらこの曲を聴いて、一人泣き踊りする今日この頃です。サウンド的には心地好いメロウ・ダンサーなので。実は知る人ぞ知る(知らない人は知らないw)<ディスコ・ギャラクシー>のクロージング・ソングだったりもするんですよね、この曲。だからダンス・フロアにも栄える曲でもあるのです。けどあの頃は歌詞を知らずに踊ってたなー。無知って恐ろしい。

しかしまぁ、この曲が作られた46年前となんら世界は変わってないのかと思うと、ため息しか出ませんね……。なんだかなーですよ、マジで。

松尾潔さんのラジオ番組「松尾潔のメロウな夜」の反戦歌特集でこの曲がピックアップされていたので、嬉しくて思わず書いちゃいました。
これを機に、「Harvest For The World」及びアイズレーの色んな曲を聴いていただければ嬉しいです。

ちなみにR.ケリーが全面プロデュースし、当時18年ぶりに全米1位を獲得した2003年のアルバム『Body Kiss』↑(名義は“The Isley Brothers featuring Ronald Isley a.k.a. Mr. Biggs”)のライナーを書いているので、ご興味があればそちらもぜひ。<(ロナルドは)アンジェラ・ウィンブッシュと離婚したという噂も?!>とライナーに書いてますが、既に前年に離婚していた模様。そして2005年に結婚するキャンディ・ジョンソンが所属していた女性デュオ、JSをフィーチャーした曲もあったりと、なかなか曰く付き(?)の代物です笑。けど超いいアルバムですよ。Amazonで新品8,629円、中古400円という謎の値段ですが(泣)。


<今日の1曲>
Blxst / Fake Love In LA feat. Aron Ray

ここでアーニー・アイズレーの娘、アレックス・アイズレーの曲を取り上げるのが綺麗な流れかなと思いましたが、最近もピックアップしたばかりだし、全く別のアーティストで。LA出身のシンガー/ラッパーのブラスト(Blxst)のニュー・アルバム『Before You Go』がなかなかよかったので、こちらからアリン・レイをフィーチャーしたメロウ・ミディアムを。西海岸らしいレイドバックした雰囲気が心地良しです。タイトルもなかなか意味ありげですね…。ちなみにアリン・レイの新曲も素敵だったので、機会があればピックアップしたいなと思います。

Blxst / About You

ブラストといえば、ケイス feat. ジョー「Faded Picture」使いのこの曲ももちろん最高です!

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