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ブーツが「ごとん」と踵を鳴らす

と、十中八九どころじゃない。
九分九厘が「スマホを落とした」とでも思うのか、目線を下に降ろして何かを探す素振りをします。
私のブーツの踵がどうして音をさせたのかってのは二の次、三の次。

よろめく程度にぶつかられたから、なんですけどね。

大げさじゃなく、あたま下げられるなんてのは激レアもいいところ。
まったく詫びられることもなく、下げられるのは目線だけ。
スマホを落としたときみたいな音に聞こえる、とは自分でも思うけどね。
というのも、私の普段履きがウェスタンブーツだから。
ヒールは一枚一枚、積み革を重ねて出来ています。
かなり硬いし、ふつうに歩いていてもコツコツというよりはゴトンゴトンに近いような靴音がします。

もう1つ、私は電車で座席に座るのが好きじゃありません。
ガラガラに空いていれば座ることもありますが、たいてい窮屈だから。
だって電車の座席って、たとえばベンチ式になっている7人掛けのシートに同じサイズ感のひとが納まってることのほうが少ないじゃないですか。
この季節ともなれば、昭和基地まで乗っていくつもりなんだろうかみたいなダウンジャケットを着てるようなのだっています。
ただゴツイのもいれば、落ち着きなくカバンからアレを出して仕舞いコレを出して仕舞いする忙しないのもいたりで座ってるほうが落ち着かない。
そんな性分なもので、1つ2つ空いているくらいなら立っていることのほうが多くて、つまり車両を移動しようとする側にしてみれば私が通り道に立っている格好になるわけです。
吊り革を掴める距離には立っているので、べつに真ん中で仁王立ちしているわけでもなく、そうなるであろう位置にそうなるであろう様相で。

これは言うまでもないと思うんですが、べつに車内で歩いたとて早く駅には着いたりしませんし、そう広くもないのに漫然と歩く意味はわかりません。
どういうわけか自分の体幹を過信している類が多いので、電車が揺れるたびフラついて、座ろうとすれば座れるくらい空いているという認識もあるからなのか、意味もなく立っているとでも思うのか私のほうが邪魔もの。

フラフラとぶつかってきてるの、そっちなんですけどね。

でも、十中八九どころか九分九厘は詫びもしない。
スマホを落としたんじゃないのか..と不思議そうな顔を残して、また歩いてはどこかへといなくなります。
言っちゃ悪いけど、さながらロメロのゾンビみたい。
あの、物音で立ち止まって何もないとわかると歩き始める様そのもの。
レジデントイービルっぽい機敏さを感じさせないあたり秀逸です。

ともあれ1つ言わせてもらえば、ぶつかったら謝りましょうね。
落としてもいない落としものを探すより、まず先に。

体幹を鍛えて出直してこい! とまでは言いません。
どこまで何しに歩いてたいのかも知りませんし、興味もありません。
好きになさればよろしい。
ただフラフラしたいだけなら、せめて外でやれとは思うけどね。

ホームに降りるまでガマンできんか? とは堪えて言わないでおくとして。
電車が来てるから、が正当な理由になるとでも思ってるのか下り側の階段をずかずかと下りてくるのもそう。

公共・・交通機関ほど、社会性そのひとが見える場所もないかな。
ぶつかっておいて舌打ちするとか、足ひっかけてやろうかと思うけどね。