今日がダメでも
誰もが通り過ぎていく。こんなガラクタを気にも留めない。
1人で路上で歌っているだけじゃあ誰にも気を掛けられない。
それでも僕はこれしか出来ないから、今はここで歌うことしか出来ないから
精一杯歌い続ける。
2時間歌って足を止めてくれたのは5人いたかどうか。その中にもすぐに立ち去った人もいた。
こんなことをして何になるのか。同世代の人にはよく言われる。
以前は友達だった人も僕がサラリーマンを辞めて、アルバイトをしながら路上で歌うと言った瞬間、顔つきは変わった。
その後すぐに連絡も取れなくなって。
やっぱり辞めないほうが良かったのかな。夢なんて持たずにそのままなんとなくサラリーマンを続けている方が良かったのかな。
でもあのまま続けていても何も楽しくなかった。単調な日々に忙しさだけが自分を支配して。僕は灰色のロボットのようだった。
「あの、路上ライブで歌われていた人ですよね?」
不意に声を掛けられた。横を見れば途中から聞いてくれていた同世代らしき女性の方がいた。
「あっはいそうです。見ていてくれた方ですね。どうもありがとうございました。」
「いえ、歌声がすごく素敵で、なんだか聞いている内に時間を忘れてしまって。」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます。」
「私ずっとハンドメイドでものを作っているんですけど、なかなか知ってもらえなくて。誰にも知ってもらえないのになんでこんなことやっているんだろうって疑問を持ち続けていたんです。でもさっき歌声を聴いて、同じように頑張っている人がいるんだなと思うとどうしてか勇気が出てきて。また作ろうと思えたんです。ありがとうございました。」
「それは良かった。まあ誰にも知ってもらえてないのは僕も同じなんで(笑)ほんと人に知ってもらうって難しいですよね。」
「はい、ほんと難しい。私にはどうしたら良いのかさっぱり分からなくて。作っても誰にも買ってもらえないんだったら、やってもやらなくても同じじゃんって思うこともあったんですよね。」
「分かるー。僕も今ちょうどそう思っていたとこなんです。」
なんか思わぬところで意気投合した。
「あの、最寄り駅まで一緒に歩いても良いですか?」
「はいもちろんです。それでどんなハンドメイドを作っているんですか?」良かったら見せてもらえませんか?」
「良いんですか。じゃああそこに公園があるから、ちょっと座って見てもらえませんか?」
確かに今日もあんまり結果には繋がらなかった。でもこんな素敵な出会いもあった。1日結果が出ないことくらいなんだ。こんな良いこともあるじゃないか。
また明日頑張ろう。明日も明後日も頑張って、少しでも聞いてくれる人を増やしていこう。
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