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日本におけるMaaS

おつかれさまです。カワチです。標題につきまして。

1つ前の記事でMaaSについて書きました。今回はその続きで、日本におけるMaaS(以下、日本型MaaS)についてや、その課題と解決法について書いていきたいと思います。私の意見も含みますので、そこのところはよろしくお願いします。

↓前回の記事です↓

日本型MaaS推進の目的

前回の記事にも書きましたが、なぜMaaSに取り組んでいるのかという点についてです。
MaaSのパイオニアと言われるフィンランドのWhimは、背景にマイカー削減の狙いがあります。MaaSの導入でマイカー以外の交通機関の利便性を高めることで、マイカーがなくても何不自由なく移動できる社会を実現しようとしています。マイカーを減らすことで環境への負荷が軽減されたり、渋滞などの都市の問題の解決にもつながります。

日本型MaaS推進の流れでは、マイカー削減の意図に加えて、自動運転技術活用の糸口にしたり、得られたデータをまちづくりに活用したり、人口減少地域や観光地域における交通の利便性や効率性を高めようといった狙いがあります。

↑国交省のMaaS推進のページです。スマートシティの実現外出機会の創出と地域活性化地域や観光地における移動の利便性向上などが地域の課題解決として挙げられています。

日本型MaaS推進への障壁

MaaSは便利で社会にも良さそう!技術大国・日本だったらすぐ導入できるんじゃないの?と思ってしまいそうです。しかし現状の日本では、多くが実証実験段階で、サービスとして提供されているのは一部です

その障壁の理由はなんでしょうか?もちろん最近取り組み始めた新しい概念であるということも理由のひとつですが、私が考えるに、以下の3つの要素が大きく関連しているのではないでしょうか。

①民間事業者
②法規制の厳しさ
③地域ごとの需要特性の違い

ます、基本的に民間事業者が交通を提供しているという点です。
例えばWhimが作られたフィンランドでは、Whimというサービスを提供しているのは民間の企業なものの、その中の交通は全て国の運輸通信省が管理しています。そのため、複数の交通手段やその決済の統合をスムーズに実現することができます。国として一貫してMaaSを推し進めることができるわけです。
対して日本では、例えば関東の鉄道だとJR東、東急、京王、小田急……関西だとJR西、阪急、阪神……といったように、各地域に交通を提供する民間事業者が複数存在しています。そのため、運賃やエリア設定、決済方法の点において交通手段の統合が難しくなってしまったり、MaaSに取り組んでいても提供サービスや地域によって内容がバラバラ…という現状になっています。

また、規制の厳しさも理由の1つにあると思います。
交通機関の運賃や料金の設定には国土交通省の許可が必要だったり、MaaSの要素のひとつであるライドシェアについても、現状では一般の運転手が乗客を運ぶことが認められていない点など法規制の障壁が存在します。

加えて、地域ごとの需要特性の違いもMaaS推進の障壁として挙げられます。
フィンランドのWhimのようなMaaSは、都心部のような公共交通機関が発達した地域が利用地域です。そのような地域であればMaaSは導入しやすいですし、システムとしても利便性が高く、マイカーを手放す価値も生まれます。
その一方で、日本は前述の通り、人口減少地域のような地方交通の効率性や利便性向上のためにMaaSを推進している面があります。このような地方の地域ではそもそも公共交通機関が十分に機能していなかったり、マイカーだけが住民の足になっているという現実があり、MaaSを導入するために交通サービスのありかたの部分から考えなければならないことが障壁になっています。公共交通の運転手確保や、法規制の面からマイカー必須の地域であってもライドシェアを簡単に活用できないことも課題に挙げられます。

MaaS導入を検討する地域によって交通への需要の特性が全く違うことや民間交通事業者の存在によって、国が一貫して推し進めるということが難しく、どうしても地域それぞれの取り組み方に依存してしまうため、海外に比べてそこまでスピード感を感じられないのかもしれません。

国としての日本型MaaS推進

国交省は、それぞれの地域でそれぞれのMaaSを作っていくという方針のようで、MaaS先行事業の認定などを通して日本型MaaS推進に取り組んでいます。
また、昨年の資料によると、「大都市近郊型・地方都市型」「地方郊外・過疎地型」「観光地型」という需要特性による分類も行っていました。(令和2年の資料では表記が無くなってしまいました。それぞれの地域に合わせたMaaSを構築するのにこの分類は必要ないとされたのかもしれません。)

私は、多少スローペースになったり、地域さが発生してしまうかもしれませんが、上述のような障壁を考慮すると現状その取り組みかたで間違いはないのではと考えています。

統合レベルを求める必要はない

MaaSについて議論していると、統合レベルを向上させていくべき(統合レベルについて詳しくは前の記事を参照してください)という話が必ず出ます。
確かに、MaaSのサービスとして高機能化は重要です。しかし、統合レベルを向上させた先には、統合されたサービスが国家の政策として推進されているという段階がありますが、これは前述の障壁の通り日本では実現しづらいものです。

つまり、日本においてはMaaSのレベル向上はそこまで重要ではないと考えられますし、スマートシティの創造、観光地の交通の利便性向上、地域のお年寄りの足づくりといった、地域ごとの需要特性や課題をはっきりとさせて、その解決にあわせた質の高いMaaSを作り上げていくことこそが日本型MaaSのありかただと思います。

新たに生まれる課題と疑問

ここまでを踏まえて、日本型MaaS推進における新たな課題や疑問として私が考えるものを挙げたいと思います。

・民間事業者と地域政策とのすり合わせ
地域ごとの需要特性や課題解決に向けた質の高いMaaSをつくり上げることが日本型MaaSのありかただと書きました。その中で、実際に交通を提供する多くはやはり民間事業者であり、MaaS推進において存在が強くなると考えられます。さすがにきちんと地域に目を向けるでしょうが、あくまで民間事業者の目的は利益の追求です。そこが地域の方針や政策とどこまですり合わせられるかという点が課題だと思います。特にスマートシティや観光地のMaaSでは課題になるのではないでしょうか。

・どこからがMaaS?
これは私も強く感じていることです。MaaS推進と言っていますが、各地域で取り組み内容や参画事業者は様々ですし、1つの民間事業者が交通やその他サービスを提供するという取り組みかたをしている地域もあります。(特に大手鉄道会社の地域など)
また、先ほども言いましたが統合レベルの追求は必ずしも必要ではない、となると、じゃあ既存のサービスと何が違うのか?どこからをMaaSと呼ぶのか?という疑問が生まれがちです。
だんだん「MaaSの導入を頑張る」という手段の目的化のような状況になってきて、やはり北欧をはじめとした海外のMaaSの定義に引っ張られていると感じる部分もあり、個人的には日本型MaaSに関してはもはやMaaSという概念を取り除いたほうが良いのではないか?と思います。

まとめ

長くなってしまいましたが前回と今回でMaaSについて書いてきました。(今回は私の意見の比重も大きくなってしまいましたが)

私自身も勉強中の身であるので、細かいニュアンス等間違っている部分もあるでしょうし、MaaS自体が「概念」なので言葉の選び方も難しい部分があります。考えれば考えるほどこんがらがりますが、今後も精進していきたいと思います。

ものすごくMaaSの根本に特化した話をしてしまいましたが、所有から利用へ、というようなサブスクとか共有型経済に繋がっている部分もありますので、皆さんも一度考えてみてください。ネット記事などではそこにフューチャーしているものもあると思います!

今日はこれで終わります。最後まで読んでくださってありがとうございました。
カワチ


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