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仏教福祉 各論 4.現代社会と仏教

我が国には約1億2千万の人びとが生活している。それらの人びとはそれぞれに困難に直面し、それと真摯に向かい合っていきている。それらの問題は個人レベルから国レベルまで様々である。それらの問題とは⑴誕生から死亡までの成長から加齢に従って生じる諸問題や、⑵衣食住に渡って日々の生活のさまざまな場面で直面する諸問題があり、内容的には決して福祉的課題に限定するものではない。

今、『生→老→病→死』の流れに沿って現代社会における諸問題の一端を示してみると次の通りである。

『生(しょう)』
誕生については少子化問題がある。女性の社会進出や、男性の性的能力の低下、子育てが難しい社会などさまざまな原因が言われている。また、出産に関しては出生時異常の問題がある。また、成長段階では教育。進学。いじめや非行犯罪の低年齢化がありその後は就職や結婚、育児などの場面でさまざまな問題が発生している。

『老(ろう)』
我が国が非常に早い段階で高齢化社会に突入したことはよく知られている。2000年には17.3%が65歳以上の高齢者で、最も高い都道府県では24.8%に達している。高齢化社会の問題は本人の心身の状態の問題だけでなく、介護問題が大きな割合を示しており、少子化問題と並んで我が国の重要課題となっている。

『病(びょう)』
病気の最も深刻なものは「死にいたる病」である。「がん」などの病がその代表例であり、難病や原因不明の病も近年多く認識されいる。また、現状の医療水準では移植しか対策の取りようのない病気もあり、臓器移植問題やそれに関する脳死問題が発生している。さらに不治の病に至った際の末期医療は近年の新たな課題になっている。

『死(し)』
死は本来それをどう迎えるかという問題であるが、近年では不治の病に至った際の死の自己決定の問題として尊厳死が注目され、また、各年齢層における自死など死の問題の内容が変化している。また、散骨などにみられる死後の埋葬、葬送、少子化や独身者の増加に伴う供養者問題などが現存している。


さて、仏教は原始仏教以来基本的に人のありかたを説いているものである。初期大乗仏教経典『維摩経』に「もし、菩薩が浄土を得ようと思うなら、その心を浄めなければならぬ。心が浄まれば仏土も浄まるのである」と説いてるように個人の心のありかた、そしてそれに基づく行動が社会を規定すると言う考え方が大乗仏教における認識の代表だろう。

では、衆生のありかたはいかにあるべきか。それは生きる姿勢が問われることである。仏教では初期より『四諦八正道』を説いている。
そもそもブッダは現実を苦と感じその苦の解消を目標とし、次のようにまとめている。それが『四諦八正道』である。

苦諦「この世は苦である」

集諦「苦の原因は執着、煩悩」貪瞋癡

滅諦「苦を解消した理想状態」涅槃寂静

道諦「苦の解消方法」八正道

種々の原因が集まることによって現在の自己の状況が出現する。それゆえ現在の自分の生き方が重要になる。さらに、他者に対する関係は『慈悲的』でなければならない。

総じて、現代社会の問題を考えるとき、個々の正しく認識することは無論大切であるが「ひとのあるべき生き方」という視点から問い直すのは基本である。「あるべき生き方」を規定するのは個々の哲学、心情、信仰である。現代社会では仏教を代表とする東洋的思考から社会を問い直す必要があるのではないか。これは人をどのように捉え、問題を理解し、どのようにそれを解決するかという点において、福祉事業と同様なのではないか。

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