現在は高級マンション、前はフォーラス、もとはジャスコ。

母に連れられての買い物。
入ったところが、バーゲンか何かで人がごった返していた。
バッグや財布からネックレスや指輪まで、ひとつの大きな台の上に盛られて、それに人が集っていた。母もそのひとり。

人波に揉まれて最前列に来た僕は、頭の上を行き交う荷物を掴んだクレーンのような大人たちの腕に怯えながら、迷子にならないようその位置をキープしていた。

顔の位置が台より少し出たくらいだったので、目の前で商品が混ぜ繰り返されているのがよく見えた。
その中に赤く光を反射している小さなものが転がっていて、綺麗だったので思わず手にしてしまった。

宝石だ！
いや、偽物の宝石だ。
こんな売り方をしているから、幼心にもそれは分かっていた。
ひんやり重たいガラス製で、おそらくブローチやペンダントから外れたんだろう。

でも、き、れ、い。
そのまま手はグー✊になり、人混みから離れた。

帰り道のジャンパーのポケットの中でも、その手はパー✋にならなかった。

２～３日は景色を透過したり、蛍光灯にかざして眺めていたけど、すぐに興味がなくなった。
何日かオモチャの缶に入れていたけど、いつの間にか存在すらわからくなった。