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怪人たちの挽歌

俺の名はきゃらを年齢は40歳半ば
「悪の組織」で働いている。

ランクはただの構成員だ
仮面ライダーを意識してくれれば解る
ショッカーの立ち位置が俺だ

同僚もいるが俺たちは
出世することもない年配の構成員である
若い子達には覇気があるけど
できればこの構成員のまま定年を迎えたい。

同じような初老の仲間達と
窓際でわいわいやるそれだけで幸せだった

だがある日、仲間に突如
出世の話が舞い込んできた

「どうするんだ?」
「なるしかないかな・・・」

出世とはすなわち怪人になることだ。
「だけどお前・・怪人になったら」
「解ってる」

それ以上は言葉につまった

怪人になると構成員よりは
給料が良いことは言うまでもない

だが、目立つ
それはすなわち正義のヒーローに
目をつけられることになる

途中まではいい線いけるかもしれないが
最後はヒーローたちによって
情け容赦ないほど木端微塵にされる

俺達の同期で怪人に出世した者は
既にこの世にいない

「なるのか?」
一応、拒否権はある

「娘が医学部にいきたいらしい」

「そうか・・」

医学部の学費を出してやれるほど
構成員の給与は高くない。

20代の頃は怪人になろう!と
熱く酒を酌み交わした
30代になると怪人になるかーと
酒を酌み交わした
そしてお互い40を過ぎると
定年後を楽しみに酒を飲んでいた

俺達にもはや覇気はない
というか構成員に甘んじるタイプで
覇気などもともとなかった

怪人には出世せず
定年したら登山にいこう
そんなことを話していたばかりだ

「無理はするなよ。逃げ回ればいい
 悪さでもしているふりをすれば
 本部もなかなか気づかないだろう」

「そうだよな」
少しだけ彼は明るくなった

3日後に彼と再会した

変わり果てた姿になっていた
モチーフは「ちくわ」だった

「ちくわ怪人になってしまった」
「特徴とか武器とかは?」
彼は手に持つちくわをみせた

「食べたら爆発する」

「食わさないといけないのか?」
「ああ、食わさないといけない」

ハードルが高い!

みるからに怪人だ
どうやってちくわを食べさせるのだ?
もう少しマシな武器にしてやれよ!!
気の毒すぎる

「どうするんだ?」
「ヒーローが他の怪人を倒した後
 祝杯をあげそうな居酒屋に
 潜伏するしかないな」

「そこでちくわを出すわけだな頭良いな!」
「まーね。考えもなく怪人にはならないよ」

彼は綿密な計画を立て
数か月前からヒーローが通いつけの
居酒屋にアルバイトとして潜伏はしたが

いざヒーローが来た時
そのままの姿でちくわを持って行ったらしい

「お前怪人じゃないか!!」
すぐさま戦闘状態に陥り
木端微塵にされてしまった

ヒーローたちは情け容赦がない
空の棺桶で葬儀が行われる
そこには彼の魂はあるのかな?

奥さんも娘さんも
それほど悲しそうではなかった
というか遺影が怪人時なのだな

怪人には怪人保険が降りる。
家族は老後の生活は心配ない

それであまり悲しそうではなかったのかな。

仲間を失った寂しさも癒えぬある日
俺にも怪人の話が持ち上がった

背負うものがないので断れたのだが
彼の敵を討ちたいという想い
そんなものがこみあげていた

少し自棄になっていたのもある

退職金を減らしてもいいから
予算をつけてくれないか?と
条件をつけてみたら、総統は飲んでくれた

怪人になることを決意した

怪人化の手術が終わり
俺は目をさました

今俺は、本部に行くため電車に乗っている

総統につめよった

「どういうことですか!!」
「ごめん・・間違えた」
「間違えたって何!?」
「手違いでダブってしまった」
「手違いでダブらせるな!」

一度怪人化されてしまえば
もう二度と元に戻れない

もし俺が倒れたら倍額
保証をしてくれるらしいが
それを受け取る相手がいない

せめて、世界平和のために
寄付してもらおう。
もはや後の祭りだ

仕方ないので作戦を考える
武器はちくわで、相手が食べる事で爆発する

板前になればいいのかもしれない
カウンターに立たなければ
バレることはないだろう

丁度、彼が死んでシフトが空いたので
俺を雇ってくれた

だが板前にはなれない
どうするか考えるうちに
ヒーローたちが来てしまった

「あれ?この間倒したぞ?」

「手違いがあってな
 同じ種類の怪人だが、中身が違う」

「パワーアップしたってことか?」
「いや、別人になっただけで
 強さは変わってない」

俺は誰に何の説明をしているんだ?

「まーお前レベルなら
 いつでも倒せるし
 木端微塵にするとまたレストランに
 迷惑かかるからどっか行け」

どっか行けってなんだー????
そんな扱いされるの?

「はい。わかりました」

しかし助かった
とっとと退散することにした。
だって勝てるわけがない

だけど屈辱感は残る
このまま帰っても気が張れないので
帰り道にあった屋台のおでん屋に寄り
一杯ひっかけた

いつもより酔いが回ったのは
怪人化の影響か
それともそれほどどこか奥底で
悔しかったのかな

間違って持っていたちくわを
齧ってしまった

ドゴーーーーーーーーーーーーン

自爆だった

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