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骨太

音楽を聴きながら恰好つけて書いたので
流しながらお読み頂ければ幸いです。

それは前日の夜に決まっていた仕事
朝は行きたくない

そんな横柄な態度は取ることがある
というか夜中が多いのだから
朝一はきついと思う、だらけ癖がある

時刻は14時に現場に向かう
管理会社の事前情報では
既に先行した会社があり
そのトラブルを解決できなかったらしい

大きい施設の防災センターは
探すのが大変でいつも最初は
アウェイ感から始まる

勝手に停めれば怒られる
今回はいい守衛さんたちだった
詰まっている状況を確認する

「75㎜だな」

そんな言葉で
使用する機材を共通認識する

事前情報では30m以上
ワイヤーをいれたけど
詰まりが解消しなかった

こういう現場は案外
あっさり片付くことはある

例えば、なんでも直そうとするから
車に積めるものが限界で
本気のトラブルには勝つことができない

1ロール25m×2=50m
ワイヤーの太さも機種に応じて異なる

75㎜とはグリストラップの流出口のサイズ
やたら太いワイヤーを入れれば
排水管の曲がりで進まない

75㎜から入れる30m以上は
危険だが同時に
細いしょぼい機材で30mいれれば

排水管に埋まる油に勝てるわけもない
案外20m程度でいけるかな?
安く見積もっていたが・・・

10m、20m、30m、40mと
ワイヤーが入り動きが鈍くなる

このあたりだろうなと思うけど
中々抜けないし
先にいくほどワイヤーから
伝わる感度は鈍くなる

そうこうするうちに

水を流していないが
水位上昇がはじまってきた

「マズイ」

「上の階ってなんかありますか?」
「美容室がはいっています
 それだけしかありません」

それが問題だ

「製氷機とか冷蔵庫の排水では?」

そういうレベルではない

縦管からみだ。
ここは2Fの飲食店
3Fでシャンプー台でも動かせば
溢れてくるのだろう

もともと流れが悪い状態だったけど
ワイヤーを入れる事で
状況を悪化させてしまった


左の状態を右の状態にしてしまった
恐らく髪の毛と油が合流して
縦管手前でつまっているのだろう

既に50m入っている

「美容室は止められないですか?」
「美容室だと確証はありますか?」

目の前に広がる水位上昇をみても
ビル管理の1スタッフに
営業中の店舗を止める決断は下せない

そんなことはわかる。
俺たちは既成事実をつくっているだけだ
あくまで厨房内だから
溢れても防水は効いているが

万が一にも膨大な量のときは
階下漏水になるから

だからいいましたよね。という
言い訳がたつようには抜かりない

だが、

言い訳できないことはある

管理会社は困った時の最後の綱
としてうちに仕事をくれる。

俺らも偉そうに14時にしてくれとか
時間を指定させてしまっている

抜けないでは様にならない

「どうする?」

仲間が言わんとすることは
50m先でワイヤーが縦管に落ちた時
気づかずに押し続けたら
重力で抜けなくなる

「やるしかないだろう」

ワイヤーを入れる機材は
右にも左にもまわる
数秒単位で繰り返して慎重に
1mずついれていく

ここから1時間くらいかかっただろうか
たった2mワイヤーを進ませるのに
だが

その時はくる。

ワイヤーを抜いてみれば

経験に勝る能力はない
髪の毛もビンゴだった

店のオーナーは安堵して
差し入れをくれる

こういう心遣いはお代以上にうれしい
そしてこういわれた
「救世主です」

そうでしょう。
言われ慣れています(笑)

明日がどうなるかわからない現場で
他社が匙を投げだす現場を
解決するときは結構言われるんだ

片付けるのが大変だ

管理会社に報告を入れる
「どうでしたか?」
「解決しました」
「流石ですね」
「ワイヤーを長く持っていただけです
 また、よろしくお願いします」

独り大規模施設で
数十メートル先までいれなかった
ワイヤーが抜けなくなって
朝まで死ぬ思いをしたことがある

現場に飛び出し
トラブルに遭遇すると
物凄くテンパって死にたい
大袈裟ではなくお思うことはある

だけどそんなときって
物凄く経験値があがる

なんてことはない
ただのグリストラップつまり
距離が長いだけだ

ただ、ことにあたるとき
俺達に負けはない
それは終わるまで
逃げたことがないからな

さぁ勝鬨だ。

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