見出し画像

【KY7】社長が自伝を出版した企業の株は買い?


出版業界のウラ話

私は本の出版実績があります

私はコンサルタントとして活動しているので、単著の出版実績があります。
いわゆる商業出版で、大きな本屋でしたら今でも置いてあるかもしれませんし、全国の図書館でも蔵書されています。
残念ながら重版できなかったので、それほど売れませんでした。
またお付き合いさせていただいている上場企業のなかには、社長が自伝を出版されているところもあります。

商業出版と自費出版の違い

さて出版とは本を出すことですが、大きく分けて商業出版と自費出版があります。違いは誰が出版費用を負担するかですが、出版社が負担する場合は商業出版で、著者が負担する場合は自費出版と言います。
商業出版の場合は売れる見込みがあるから、出版社が費用を負担します。人気作家となると原稿料まで負担もします。
それに対し、なぜ費用を負担してまで著者が自費出版をするのかというと、本を出したいという著者の願望があるからです。
つまり誰が本の顧客ターゲットかというと、商業出版の場合は本の読者になります。それに対し、自費出版の場合は著者が顧客となります。
なお商業出版であろうが、自費出版であろうが、出版した本は本屋の棚に並びます。本屋は委託販売なので、本屋の損になることはありませんし、出版社は本屋にお金を払って棚を確保していることが多いからです。

ゴーストライターの存在

本を書くのは一つの能力と言って過言ではありません。私は3つの要素があると思っています。

  1. とにかくたくさんの文章を書けること

  2. 人が読みやすい文章を書けること

  3. おもしろい内容の文章を書けること

①で大抵の人はできません。文章をたくさん書く訓練をしていないからです。執筆業を生業としているならともかく、普通に働いていると文章を書く機会は少ないですからね。
大学で論文をたくさん書いた経験のある人とか、2次試験(論述式)のある難しい資格などの勉強をしてきた人とか、それほど多くないです。

②はさらにハードルが高いです。読み手を意識した文章は意外と難しいです。短文にするとか、漢字の量を減らし常用漢字を主体にするとか、冗長な表現をしないとか、それなりに訓練が必要です。文章をたくさん書いた経験があっても、他人の論文を写したり、記事を引用したり、自分のオリジナルの文章をたくさん書いたりする経験がないと、身につかない気がします。

③は、雑誌にコラムを持っていたりとか、寄稿したりとか、少なからずお金をもらえるレベルの人でも、それほどいないです。語彙力が豊富とかも大事ですが、読書家であり見聞を積極的に広めていないと、到達できないのではと思います。

このように考えると、世の中のビジネス書はほぼゴーストライターが書いていると思った方が無難です。
ちなみに私はというと、かろうじて③には到達していると、勝手に思っています。

ゴーストライターはどのように本を書くのか

著者は文章をほとんど書きません。どうするかというと、ゴーストライターが著者にインタビューを複数回行い、過去に著者が取り上げられた資料などを集めて、それをもとに作文をします。
なので著者は、本が書き上がってから内容が分かります。要するに、他人が書いたものを自分が書いたと言っているだけです。
詳しくは、下記の本がお勧めです。私の出版経験からしても、本の内容は体感的に正しいと思います。

吉田典史「ビジネス書の9割はゴーストライター」(青弓社)

〇〇書店で今週1番売れた本の真実

新聞紙面などで、「〇〇書店№1」とか見ないでしょうか?アマゾンセール1位とかも同じです。
これ実は、著者が自分で本屋に大量発注したり、たくさんの仲間に買ってもらえるようお願いして、自作自演しています。
そこまでするの?と思うかもしれませんが、注目させることで釣られて本を買う人も増えますし、著者のブランディングにも役立つからです。

なぜ社長は自伝を出版したいのか?

誰が読むのか、ほとんど考えていない

以上をまとめると、社長の自伝はほぼ本人は書いていません。それでも出版したいのは、それまでの経験や苦労を語りたいという自己顕示欲です。
本を一冊書こうと思うと、2-3週間は缶詰めになりますし、そもそも上場企業の社長にそのような時間はありません。
しかも、ほぼ自費出版になります。ユニクロの柳井さんやソフトバンクの孫さんみたいな有名な人を除くと、世間の人は3,000社以上ある上場企業の社長に関心はありません。
知らない成功者の体験談など、ある意味自慢話ですから、それをわざわざ読みたい人など少数派です。

本の出版は会社の宣伝ではない

社長が自伝を出版しても、それは社長のブランディングにすぎません。自社商品を宣伝したり、企業をアピールしたことにはなりません。
「なぜ〇〇会社の××には行列が並ぶのか?」みたいなキャッチーな本ならともかく、ほとんど社業には影響しないのです。

現在の成功に満足している

著名な機関投資家の方に、社長が自伝を出版したら、その会社の株は売却するというのがありました。理由は、社長が現在の成功に満足しており、そこからの成長が見込めないからだとのことです。
私もこれは一理あると思っています。付き合いのある企業様には、言いにくいことですが。
また本を出版するにしても、自社の社員や取引先に配るぐらいにして、本屋の店頭に並ばせる必要はないのです。

今回はここまで。次回もよろしくお願いいたします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?