養和二年新田信行理事長に学ぶ1 CAPに何が必要なのか。

 いよいよ令和ではなく養和二年化してきた疫病禍の下「コロナごときで一社たりとも倒産させてはならない」と奔走している人物がいる。第一勧業信用組合新田信行理事長である。久々に気骨ある金融人に出合った気がする。今回は二回に分けて新田氏の考えと昨年開催された0→1Booster Conference 2020での私の発表と共鳴するところがあったので先達の教えに従い今回は流通経路と資金回転の話で大企業とベンチャー企業におけるアクセラレーションプログラムへの示唆を述べたいと思います。

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第一勧業信用組合新田理事長の奔走に学ぶ

 疫病禍で倒産と廃業が多発する中、そうはさせじと奔走する本来の金融人のあるべき姿を実践している人がいる。第一勧業信用組合の新田信行理事長である。氏の奔走はかつて興銀のある支店長が「この融資が焦げ付いても私の首が飛ぶだけだが今融資しないと日本の産業の未来がない」といい融資を実行した覚悟を思い出させる。

 新田理事長のお考えの内スタートアップ界隈にも活かせる点は2つある。
一つは、組合組織の意義である。これは地域共同体と広域共同体の意義である。
もう一つは、流通経路は現金化と回転率を握るということである。

 前者を次回に、後者を今回述べたいと思う。

 新田理事長は組合であることに注視し組合員の相互扶助を実践する。第一勧業信用組合だけで4万人の組合員。全国の信用組合組合員加入者合わせると100万人いるので相互扶助の精神で販売経路として活用する。これらの意味を今回は考えたい。運命共同体としての意味は次回に触れたい。

0→1Booster Conference 2020にて

 2019年12月4日(水)有楽町国際フォーラムに1000名を超える人々が集いかつ国際的に有名な企業内起業家の集まりInnov8rs Tokyoも併設された大きな大会でした。その会合で私は、01ブースター代表の鈴木規文氏と対談を行いました。お題は、Corporate Acceleration について。
 何点かの要点の内の一つが、
・流通経路は販売経路だけではなく現金化の速度を決めている。
・流通経路への参入には信用が必要であるが起業家には信用がない。
・大企業が販売経路の大半をおさえている。そして大企業には信用がある。
・我が国の環境は貸金業(VC等)が金融にのみ特化していて販売協力をしていないのが問題。
・よって、大企業が起業を加速させるには流通経路提供である。

 流通経路は現金回収の速度を加速させる。このことにいち早く気づいたのは本田技研でした。そしてそれを真似て瀕死の会社を建て直したのは松下幸之助翁です。かの有名な熱海会談ですね。

 「会談においてまず訴えられたのが、手形の乱発をやめ、現金取引にすることでした。ホンダの例を挙げ、『経営悪化に陥ったホンダは、決死の覚悟で過去の手形も現金に換え、当月からすべての代理店が現金取引に転換したことによりよみがえった』と、何ごともなせば成ることを話されました。幸之助会長は、資金の回転も非常に重要であると考えておられました。」(『PHP松下幸之助塾』2015年3・4月号Vol.22)

 販路と金融の組み合わせが起業家を加速させる。例えばある革新的な食品製造会社の黎明期、その会社に設備資金を貸し付け、その上製品全品を買い取り販路を開拓したのは商社でした。いわゆる商社金融。私の記憶が確かならば今日でもその会社の商品は全数某商社のみに伝票が回っているはずです。いわゆる寝耳口銭ですね。このようにして販路を加速器として金融と組み合わさり我が国では起業家の加速装置として起業家育成を行ってきました。

 ところが、今の起業家環境はVCなど融資側面の議論は盛んに行われていても、現金回収の速度に関する協力の議論はされていません。
 わずかにうまく起業家を育てたアクセラレーションプログラムでは大企業が営業協力を惜しまなかった例のみです。極端な例では技術面には無頓着で大企業である自社の信用を基にしたプラットフォーム化に徹している所すらあります。

 この疫病禍で奔走する新田理事長様から学んだことの一つは以上です。 大変厳しい禍渦中ですがこのような環境下でこそ新田理事長のような大人物が多く出てきて活躍することを。


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