まだ新米だった私は


覚えたての知識と
数少ない経験から得た信念とを
使えるようになって


ちょっと得意に感じながら
ありったけの言葉を尽くして


患者さんに
無我夢中で
自分のできる精一杯を提供した



熱量は高いけれど
少し押しつけがましい
そんなアドバイスを


自分の両親よりも
歳上だった患者さんは
はいはいと
そのまま従ってくださった


自分の祖父母くらいの歳か
もっと歳上の患者さんは
いつもニコニコと
優しく聞いてくださった



今の私が
その光景を見たら
危なっかしさに
ヒヤヒヤしながら


恥ずかしさと
後悔で
いっぱいになるだろう


でも同時に


熱量の高さと
誠実さが合わさった
一途さに
感動するかもしれない



そして
10年、20年と時を経て



小生意気さと
厚かましさを
寛容さで優しく
包んでくださった
患者さんの気持ちも
少しだけ
理解できるようになり


実は
患者さんに見守られて
育てていただいていたことに
初めて気づく。