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山鳩のうた


去年の冬から、山鳩の餌付けをしている。
急に冷え込んだ十二月の半ばの朝、何処かで山鳩が鳴いていた。デデッポーポーという鳴き声に誘われるように窓の外を見回したが、その姿は見えなかった。
それからしばらくして、私は、山鳩の餌付けを始めた。
朝、裏庭のすみに並べた五枚のブロックの上に撒き餌をして、傍らに水をいっぱいにはった水盤を置いておいた。
山鳩は、すぐ姿を現した。
庭先に、黒目勝ちの細面の、褐色の縞柄の丸い体が歩いていた。そのすぐ後から、一回り小振りな山鳩がついていき、二羽揃って撒き餌を盛んに啄んでいた。周りには、たくさんの雀が跳び跳ね、一緒になって撒き餌を啄んでいた。

山鳩は、毎朝やって来た。
私が起きる頃には、我が家の前の電線に二、三羽止まっていることもあった。
私が餌袋を下げて庭に出ると、たまたまそこにいた山鳩と鉢合わせすることもあった。
山鳩は、慌てふためいて飛び立ち、楓の枝先を掠めて空へ姿を消した。
ちょっと見には、おっとりした山鳩だが、驚くほど警戒心は強かった。
山鳩の様子が見たくて、カーテンを細めに開けてソッと外を覗いた。山鳩ば5、6メートル先のブロックの上にのり、首をふりふり餌を啄んでいる。私が見ていることに気がつかないだろうと思ったのだが、山鳩は目ざとくカーテンの向こうにいる私に気がついて、素早く翼を広げると、あっという間に何処かへ飛び去ってしまった。周りにいた雀たちも、弾かれるように風を巻き起こして飛び立った。
私の足元には、愛犬のゴン太がいて、しきりに鼻を鳴らしてドックフードをせがんでいた。



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