見出し画像

【47エディターズ】2月公開の47リポーターズはコレ! 自民党裏金から中小鉄道の人材難、能登半島地震、甲子園の「土守」、コロナ後遺症、アフターピル、京アニ事件まで

共同通信では、注目ニュースの背景や、知られていなかった秘話、身の回りの素朴な疑問などを深掘りしたインターネット向けの記事「47リポーターズ」を随時配信しています。

当コーナー【47エディターズ】では、現場の記者が書いた記事の最初の読者であり、その狙いや内容を精査し、時に議論を交わして編集を重ねたデスクが、2月に出した47リポーターズを紹介します。


■ 政界を揺るがした捜査のきっかけは、1人の「教授」の執念だった 自民党の派閥裏金事件 「政治とカネ」告発し続ける原点に特攻隊員の悲劇

自民党派閥の裏金問題は、議員らが立件されただけで終わらず、派閥解散や政治倫理審査会の開催など、その後も政界を揺るがしています。事件の引き金になったのが、神戸学院大教授の上脇博之教授による刑事告発でした。

上脇さんはオンブズマンの代表を長く務め、記者をしていれば名前を聞いたことがあり、「政治とカネ」に関する取材などで話を聞いた人も多いと思います。でも、なぜここまで執念を燃やし、ボランティアで煩雑な作業をやり続けているのかは知りませんでした。

「彼の『人となり』に迫りたい」と神戸支局の力丸将之記者から相談を受けたのは昨年末。この時点で既にインタビューを繰り返しており、事実関係を詰めている段階だったと思います。届いた原稿には特攻隊員だった叔父の話という「原点」も入っており、じっくり取材したことがうかがえました。

記事を配信すると、予想どおり大きな反響を呼びました。地味な作業をコツコツと続けた上脇さんの姿勢に対する賛辞と、それを紹介した記事に対する感謝の声もヤフーやXのコメントに多くありました。いい取材に関わることができ、デスクとしてうれしかったです。(斉藤)

■ 「技術者を採用できない。誰か手段を教えて」頭を抱える中小鉄道 トラブル続出の背景に深刻な人材難

 地方の生活の足である中小鉄道で技術系の社員が確保できず、安全運行に支障が出ています。記事では青森県と高松市の会社を取り上げましたが、コメント欄では全国の鉄道関係者から「待遇が最悪。どんどん人がやめていく」といった切実な声が寄せられました。一方で、社員の待遇を良くするための運賃値上げや、廃線、減便に沿線住民は反対します。皆さんはいったいどうすればいいと思いますか?(楠本)

 筆者の1人、大阪社会部の小林知史記者は鉄道に関する問題をコツコツと追っています。過去にはこんな記事も書いています。

■ 京アニ放火殺人、青葉被告の再犯防止支援は「やれることはやっていた」のに、なぜ防げなかった? 犯罪学の研究者が語る「刑務所の実情」 

大きな事件が起きると、メディアには「どうしたら事件は起きなかったか」について問いを立て、分析することが求められます。

その際、有識者の見識や視点は、わたしたちの作業に大変重要な示唆を与えてくれます。

京都アニメーション放火殺人事件でもそうでした。どうしても犯行直前の生活状況や動機に注目が行きがちですが、

前回、インタビューした作家・政治活動家の雨宮処凛さんは、「世代」を切り口に彼(ら)が置かれていた苦境について解説してくれました。

今回お話を聞いた犯罪学者の森久智江さんは、以前服役していた刑務所での「処遇」の問題点を指摘しました。

刑務所では依然として刑務作業に力点が置かれています。これでは、社会復帰のために重要なコミュニケーションの力が身につかない、というわけです。

公判を傍聴してきた大阪社会部の武田惇志記者、京都支局の石井達也記者、遠藤加寿記者が、このあたりの事情を森久さんから引き出していきます。

刑務所改革は少しずつ進んでおり、処遇で教育や社会復帰支援の側面に力点が置かれつつあり、所内に社会福祉士が置かれるなどしています。

最近では、4月から受刑者らを「さん」付けで呼ぶことが決まりました。これまで番号で呼ばれてきましたから、大きな変化となります。

今回の記事が、私たちの社会に遠くて近い刑務所の実情に関心を持つきっかけになれば、うれしいです。(真下) 

「二度と、こうした悲惨な事件・事故を繰り返さないため」。これが、事件や事故の発生直後、メディアが被害者や被害者遺族に取材する際に掲げる代表的な理由である。
しかしながら、私たちはどこまで本気で、再発防止を考えて仕事をしているのだろうか。感情論や抽象的な議論に終始するのでなく、具体的に何が問題か指摘し、どう改善すべきかを提示できているだろうか。胸を張れる記者は、どれぐらいいるのだろう。
 関西では、京アニ事件の2年後、北新地ビル放火殺人事件が発生し、「こうした悲惨な事件」が実際に繰り返されるのを許してしまった。あろうことか、死亡した谷本盛雄容疑者の自宅からは京アニ事件の新聞記事が見つかり、一種の模倣犯ということも判明した。
 谷本容疑者も青葉被告も、刑務所からの出所者だった。そうなると当然、刑務所内の「矯正」の意義や、出所後の社会復帰などの再犯防止策の妥当性が問われてくる。
そうした疑問を、専門家にストレートにぶつけ、対話した末に生まれたのが今回の記事である。今後も長く、参照していただければ。(武田)

■ コロナ後遺症は「最大500万人」リスクを訴え続けてきた医師「新たな国民病」と危機感 理解不足で孤立する患者も多く、支援態勢の整備が急務

 新型コロナウイルスの後遺症に苦しむ人は最大500万人―

マスクを着用する人がすっかり減って収束した感のあるコロナ禍ですが、実は今も大勢の人がつらい境遇にあります。大阪経済部の小嶋捷平記者が専門医による衝撃的な推計を基に支援態勢を整える必要を訴えました。取材に応じた医師は「新型コロナ後遺症はもはや、がんやうつ病と並ぶ『新たな国民病』だ」と強調しています。職場の理解や行政の早期対応を促すためにぜひ多くの人に読んでいただきたい啓発記事です。(浜谷)

■ 甲子園の「神整備」は土守が100年引き継いできた技術と思いの結晶だった 「グラウンドが分かるまでに10年」傾斜や土の配合にも職人のこだわり

 2023年9月14日夜、甲子園球場。阪神タイガースが18年ぶりのセ・リーグ優勝を果たしました。あの時の感動、一生忘れません。

今回担当した大阪社会部の西村曜記者と私は大の虎党。一緒に甲子園に足を運んだこともあり、阪神園芸の流れるようなグラウンド整備にいつも魅了されていました。その舞台裏は、非常に興味深く、デスクとしての仕事を忘れて読み進めてしまいました。阪神園芸さん、連覇に向けて、今年も一緒に頑張りましょう!(清田)

■ 能登半島地震、初動対応に問題も 防災研究の第一人者は「発災からこれまで」と「これから」をどう見るか

  神戸大名誉教授で石川県の災害危機管理アドバイザーも務める室崎益輝さんが能登半島地震の現場へ赴き、阪神大震災や東日本大震災などの過去の大災害を踏まえ、これまでの教訓が生かされず初動対応に課題が残ったと指摘する内容のインタビュー記事。筆者の神戸支局・清水航己記者は神戸市役所担当として今年の1月17日の阪神大震災29年に向け準備を進める最中で能登半島地震が発生し、改めて教訓がどう生かされるべきだったかを意識しながらの取材で、大変タイムリーな内容だったと思います。(川上) 

■ 医師が明かす衝撃の実態「アフターピルを処方した女性の1割強は性被害者」 加害者に父親も…望まない妊娠、リミット72時間なのに日本だけ入手に「壁」

きっかけは、岡山市の「ウィメンズクリニック・かみむら」の上村茂仁院長が、昨年12月に「X」で公表した聞き取り結果でした。アフターピルを求めて薬局を訪れた10代女性の相手は「父親、母親の彼氏、部活の先輩」だったという衝撃的な結果でした。

クリスマス前に急いで、望まない妊娠や性被害を防ぐ情報発信をしなければと、岡山支局の我妻美侑記者に取材をお願いしました。

それで出したのがこの記事です。(共同通信の新聞配信用記事は、ネットには短くしか載りません)

短い記事では全容が伝わらないので、年が明けて、改めて47リポーターズに仕立てました。

原稿を見た私は男性ですが、望まない妊娠は100%男性側の責任だと思います。女性の負担を少なくするためにも、必要な人が必要な時にアフターピルを入手できる仕組みが必要だと言えます。(角南)

この記事が参加している募集

仕事について話そう

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

最後まで読んでいただきありがとうございました。 noteは毎週ほぼ木曜更新(時々サプライズあり)。 Instagramでも「今この瞬間」を伝える写真をほぼ毎日投稿していますので、ぜひフォローをお願いします。