見出し画像

J2、休みます。

3年前の話だけど…

ワールドカップロシア大会、グループリーグ第2戦日本vsセネガル(エカテリンブルク)のことを覚えているだろうか?乾貴士のゴールで追いついて、本田圭佑のゴールで再び追い付き、2-2だったあのゲームのことを。相手にはサディオ・マネがいた。3年前の6月24日の話である。

その前日の23日土曜日には、同じ2-2のスコアでこんなゲームがあった。

画像1

岐阜メモリアルセンター長良川競技場でFC岐阜とレノファ山口FCが対戦。得点者は岐阜が古橋亨梧の2得点、山口がオナイウ阿道の2得点。このカードで観客数8,317人。プロサッカー界の3年という年月で起こりうる変化や成長(あるいは苦悩)を見せつけられるようなスコアシートだ。

ワールドカップのA代表と同じスコアを演じたJ2の2-2は、3年後の世界から見ると現A代表選手の4得点というものすごく価値のある2-2だったというエモい話……というのは、今回の主題ではない。J2は世界最高峰のワールドカップと重なっても中断しないよ、というアブソリュートさを示すエピソードとして引用したかったのである。

ワールドカップでも中断しなかったJ2が今年…

しかし!、ところが!。そんなJ2に今年は中断期間が設定されている。7月17・18日の第23節までやって中断期間に入り、第24節は8月9日の再開となる。この丸々3週間は、おわかりとは思うけれど東京オリンピックのための中断である。表向きは自国開催の五輪を応援するためという理由だが、実際にはメディアが駆り出されて中継の人員・機材等の確保が難しいから、とJリーグTVあたりで言っていた。ともかくも、ワールドカップがあろうと休みなくサッカーを続けてきた真のフットボールリーグ・J2に、最初から中断期間が設定されている。J2、休みます。という異例のシーズンなのである。まぁ、パンデミックで中断した昨年の方が異例だったが。

画像4

この休みはシーズン戦略を左右する

例年にはないJ2の中断期間は7月19日~8月8日ということになっている。「夏をどう過ごすかで大学受験は決まる」みたいなフレーズではないが、この中断期間は大変重要な期間となる。なぜかといえば、7月16日~8月13日で「夏の移籍ウインドー(=第2登録期間)」が設定されているのである。

Screenshot_2021-06-15 2021シーズン追加登録期限について 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

夏の移籍といえばどうしてもフィットするまでの時間的問題がつきまとうが、この中断期間を活かせば、中断明けすぐに戦術的カスタマイズされた状態で新戦力を出すことも可能となる。例年ならどうしても応急処置的な補強が中心になっていたが、チームの根幹となる主軸を取り替えたり、戦術をガラリと変えてしまうことも不可能ではない(可能とは言っていない)。しかも昇格枠は2つしかない狭き門、降格枠は4つもある広き穴というシーズン。シーズン戦略としてこの中断期間の使い方を考えているクラブと行き当たりばったりのクラブでは大きな差も生まれそうだ。

命運を握るJ1→J2の移籍

山本義道(横浜M→磐田)、福田晃斗(湘南→新潟)、鄭大世(清水→新潟)、中島元彦(C大阪→新潟)、松本泰志(広島→福岡)、イバ(横浜F→大宮)、遠藤保仁(G大阪→磐田)、仙頭啓矢(横浜M→京都)、エジガルジュニオ(横浜M→長崎)

これらは昨年、夏のウインドー+追加で10月に設けられた第3ウインドーで動いた主なJ1→J2の移籍だ。ついでに、

山岸祐也(山形→福岡)

J2の主力をJ2が引き抜く…という仁義なき例もあったが。

ともかくも、J1ではさまざまな理由で出場機会が限られていたものの、新天地のJ2ではチームの原動力になったような主軸が多い。昨年は降格なしだったため、下位チームの補強は少なかったものの、今季は何せ降格枠が4もある。普通に考えれば、動く。中断期間に戦術の練り直しまで視野に入れれば、むしろ下位側の方が活発になるかもしれない。下の方に資金力を持つクラブもいるし。そもそも4つも降格枠があるのでどの順位まで残留争いしているのかも判然としないのだ。

J1からの夏の移籍パターンは?

昇格を目指すチームと残留を目指すチーム、お金を使えるチームとそうでないチーム…いろいろあるだろうけど、いずれにしろ夏の補強は7月上旬までにまとめて、3週間を上手く使って8月9日の再開時にはチームの戦術に順応させておきたいところ。

今季特有の事情として、J1側には「新外国人が遅れて合流→チームの戦力バランスが変化した」みたいなチームがあって、そこで編成を見直す過程でJ2への移籍を模索するパターンというのは、ありうる話。あとは海外組がJ1に復帰した時に起こる玉突き、とか。

J1で出番が減ったベテラン選手のJ1→J2(上記の一覧なら鄭大世や遠藤)はある意味王道パターンだが、近年目立ってきているのが「J2での活躍が認められてJ1へ移籍したものの、出番がなくて再びJ2へ」というパターン(上記の一覧なら山本や仙頭)。このパターンはJ2へ適応面でアドバンテージを持っているため、計算できるやつだ。去年J2で活躍してJ1へ個人昇格したものの、現状あまり結果を残せてない選手…サテ誰ガイルカナ?

カップ戦が終わってしまって出場機会を求める若手選手のJ2へ期限付き移籍も王道。オリンピックを目指したものの、選外になったレベルの若手が動いてもおかしくない。逆にJ2→J1というパターンもあるかもしれないが。

■夏の個人昇格もあるかも…

冒頭で紹介した岐阜vs山口で2得点した古橋は、およそ1ヶ月後、神戸へと移籍。古橋(と大﨑玲央)の成功後、J1クラブがJ2の主力を夏に引き抜く移籍がちょいちょい出てくるようになった。昨年は降格なしシーズンということもあり派手な移籍はなかったが、今季は“古橋パターン”のシンデレラ移籍があるかもしれない。

J2コレクターのマリノスはそもそも監督選び優先なので置いておくとして、J1も降格枠4のため残留を目指すチームは必死なシーズン。4つも降格枠があるため、同カテゴリーから戦力を貸してもらいにくくなるかもしれない。そこでJ2の主力に白羽の矢が立つパターン、、、アリかと。財政的にどこも厳しい中、未知の才能に大金を払うようなことはないとは思うが…。

現状順調なチーム、どこかを修正したいチーム、根本から建て直したいチームいろいろあるだろうが7月16日に開く夏のウインドーと19日からの中断期間が今季J2の命運を握っているのは間違いない。

3年前の7月16日は…

ワールドカップロシア大会の決勝・フランスvsクロアチアは3年前の7月15日(日本時間16日0時~)に行われたが、数時間前のナイトゲームではJ2は8試合を行い、フクダ電子アリーナではジェフユナイテッド千葉が3-1でツエーゲン金沢をリードしながら終盤15分+アディショナルタイムで3失点を喫し、抗議したフアンエスナイデル監督が試合終了後にレッドカードが提示されるという熱い?試合があった(エスナイデル監督は4試合のベンチ入り停止)

画像3

フランスが4-2でクロアチアを降して優勝を決めた翌16日のJ2ナイトゲームは3試合。京都サンガF.C.は京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場で長谷部茂利監督率いる水戸ホーリーホックに0-1で敗戦。入場者数は3,302人。試合内容は何ひとつ覚えがない。気温35.1℃という暑い試合だった…らしい。3年という年月で起こりうる変化や成長を、今、感じている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?