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カビ菌 v/s オオクワガタ共生酵母菌

 今回の産卵材は、昨年の秋にツーリングがてら能勢まで景色を見に行ったときに、ついでにその地では有名な某老舗クワガタ・ショップで購入置きしておいた廃シイタケ榾木産卵材。お店の外のワゴンに常に野晒しで積み上げられている物の割にはお値段は結構お高いという、コナラかクヌギなのですが、これはたぶんクヌギでしょうか。まあ、どっちでも良いのですが、Lサイズの太めのやつです。
 さて、ご多聞に漏れず、大半のブリーダーのみなさんは、これを例によってYouTuberなどが推奨し捲りの方法——水没させて水を吸収後、陰干しの後にケース内にセット、マットを塗して埋めて、産卵セット完了——という段取りなのだと思いますが、だいたい、ワイルドのオオクワガタは自然下ではそんな状態の材には決して産卵しないのです。そもそも、それだとマット中からの糸状菌のコンタミによって材が分解されるんですよね、干しシイタケじゃあるまいし、水でシイタケ菌が復活再生するわけではないですし。同時に空気中からバクテリアも入ってくる。そしたらば、共生酵母菌、どうなるんだ? 白色腐朽菌居ないぞ? あの甘い香りは漂っては来ないぞ? という根本的な疑問。要するに、♀オオクワガタからすれば、産卵したい。けれども、材はこれしかないから仕方がない。ということで産卵しているのに過ぎないのです。それなのに、やれ、産みが悪いだの、反応しないだの、材が硬過ぎる・柔過ぎる、などとみなみなさまは宣われる。
 なので、わたしは菌糸瓶に使用している、いつものウスヒラタケの種菌を植菌しておきました。こちらは自然の腐朽材に近い状態になるので、明らかに♀の反応が良いですし、孵化した場合の初令幼虫の餌材的にも良です。植菌から約一ヶ月経過したので、様子をチェックしてみますと、ウスヒラタケ菌は材に入ってくれてはいるようなのですが、おそらく、樹皮に潜んでいたカビ菌が活性して材の表面を侵食していました。

 まあ、これは想定内です。樹皮を剥いでいなかったので、榾木に付着していた材由来の休眠中だったカビが水分を得て増殖したのだと思われます。このカビ、見た目は汚らしいのですが、実は好気性のため、材の中までは侵入しては来られないのと、親♀は分解酵素を保持しており、産卵自体には特に問題はないのです。
 がしかし、常に実験に挑む姿勢、精神がポリシーのわたしです。今回は新たな実験で少しの間、この材の進捗状態を観察することにしました。

 こちらの木口にはカビの侵食がありませんが……。

 反対側のこっちには来てますね。

 仕込み時は、ウスヒラタケを植菌して後、榾木の全体をサランラップで包んで、更に菌床ブロック用のPP袋に封入して保管していました。
 そのサランラップを取り外し、今度は材全体をテッシュで包みます。そして、その表面全体に或る液体をぶっ掛けました……はい、それは、オオクワガタ共生酵母培養液です。これは、培養した酵母菌のコロニーを抽出した残りの培養液なのですが、これには酵母による酵素が沢山溶け込んでおり、尚且つ、酵母菌もまだ無数に存在しています。これを有効活用しない手はないのです。
 わたしの予想では、カビ菌は酵素で分解されて死滅するんじゃないのかな? と考えての実験です。要するに、親♀がマイカンギヤに保持している酵母菌と酵素と同じ物なわけですね。まあ、もしも、カビが消えなくても大勢にはまったく影響はないので構わないのですが、ものは試しの試験的実験です。他人が試したことのないことを自分で試して得られた結果はプライスレス。

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