遠い呼び声
ある日を境に白兎は嫌われてしまった
傲慢さと気狂いのせいで
仕方なかった
とはいえそれを理解する人は少ない
人参を投げ合ってふざけた日はもう遠く
他人と自分はかけ離れた存在だと
気付くことが出来たならお互いに傷付くこともなかったのに
白兎と黒兎は仲が良かった
たくさんお喋りをして
転げ回って笑い合った
それはもう随分と昔のこと
今は昔とは違う
だけど話がしたい
白兎は黒兎にそう言ったけど
黒兎はそれに対して何も答えないのだった
戻らない遠い日々を追いかけても
それはただ幽霊船に住む亡霊を追いかけているようなもの
温かい手に触れることは出来ない
白兎は悴んだ手を丸めて人気のない道を歩いていた
夜桜の蕾が少しずつ膨らんでいた
顔を上げ願う先には春満月
全てを照らす道筋となる
月には兎が住んでるんだって
本当か嘘かそれは誰にも分からない
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