きょこち(久遠恭子)

こんにちは。絵と詩と音楽、日記、エッセイを書きます。ココア共和国、詩と思想。短歌は新ア…

きょこち(久遠恭子)

こんにちは。絵と詩と音楽、日記、エッセイを書きます。ココア共和国、詩と思想。短歌は新アララギ入選。 X( 旧Twitter)→https://mobile.twitter.com/kyokopoyo カクヨム→https://kakuyomu.jp/users/kyokopoyo

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    • ネモフィラの咲く丘

      ネモフィラの咲くあの丘で貴方に会いたかった 石ころを空に投げたら飛行機に当たるかしら 悪戯ばかり考えてしまう たまにはスカートでも履いて 青い花に顔を近づけてみようかしら 乙女チックな空想 きっといつかなんて 夢みたいなことを思ったりして

      • 遠い呼び声

        ある日を境に白兎は嫌われてしまった 傲慢さと気狂いのせいで 仕方なかった とはいえそれを理解する人は少ない 人参を投げ合ってふざけた日はもう遠く 他人と自分はかけ離れた存在だと 気付くことが出来たならお互いに傷付くこともなかったのに 白兎と黒兎は仲が良かった たくさんお喋りをして 転げ回って笑い合った それはもう随分と昔のこと 今は昔とは違う だけど話がしたい 白兎は黒兎にそう言ったけど 黒兎はそれに対して何も答えないのだった 戻らない遠い日々を追いかけても それは

        • 雨降りの憂鬱

          傘が重なる ぶつかって飛ばされて 涙が雨になって降っている 混雑した街中で 雨粒の一つ一つを 指先ですくったら 角砂糖みたいに 甘くとろけて コロコロと笑ってくれる だろうか 時として気分は変わるから たまに訪れる憂鬱だって 気にしないで吹き飛ばしたい 飛んでいけ 飛んでいってしまえばいい 明け方の夢のように うろ覚えになってくれたら 巻き貝が螺旋を描く その変遷を辿っていきたい そんな風に思うのって 可笑しなことだろうか 硬質な白い色 ザラザラした感触 海を思い起

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          旅路

          コーラのプルトップを開ける瞬間 いつもと違う何かを感じていた 逆さまの世界で僕らずっとそっと 見つめ続けているものがあるって 駄目だよって言われてばかりだった でもそれが嘘だと分かったんだ ドアを開けるには何が必要かな ただ昔の傷を見つめたいだけ 水玉の服からストライプの服へと いつもと違う秘密を感じていた 願いごとは必ず叶うっていうのは 誰の言った言葉なんだろうって 駄目だよって言われてばかりだった でもそれが嘘だと分かったんだ ドアを開けるには何が必要かな

          エイリアン

          バランスを崩しそう 滑り台うまくできない 偏頭痛なのズキズキ 交わらない答え探して エイリアンだって私のコト 分かってないのは君たち 当たり前じゃないのを 分かってないのね君たち 屋根の上で空を見上げて 私は浮いてる今日もまたふわふわと 授業なんて聞いてない 眠気を誘うだけだから テスト用紙をやぶいて 花吹雪にしてしまえ エイリアンだって私のコト 分かってないのは君たち 当たり前じゃないのを 分かってないのね君たち

          三日月の残像

          三日月が水面に映って 私に刺さるナイフになる 肌をなぞる刃物の切っ先 ナイフは氷で冷やされたように冷たい 湖の側には建物が建っている 白亜の城その壁に フェルメールの絵が映写機を通して チラチラと光を受けている 嘘と本当の間で人々はもはや何も分からなくなって 感情が全てを支配しているから 答えなんて人それぞれ それが分かるから私は沈黙する 三日月よ 教えておくれ 漆黒に濡れたまつ毛さえ 罪なのだということを はじめましての挨拶 さようならの涙 こんにちはと言っても 答

          冬が来たから

          木枯らしが吹き木々が葉を落とす 終わりの季節には冷たい記憶だけが 万華鏡のようにフラッシュバックする 枯葉の一枚一枚が涙を拭うハンカチ 黄昏ているトタン屋根の家に置いてある箒みたい 寒々と外で待ちぼうけ 風が吹いている路上で 間違えて着てきた薄手のコートの襟を立てる 仕方なく一人街を彷徨った 枯葉が舞って地面に敷き詰められ 踏み潰して歩いた 罪悪感のある過去を それから ショッピングセンターで 赤いマフラーを買った ぐるぐると首に巻いて また雑踏の中に入っていく 紛

          夢幻

          殺伐とした世界で あなたは幸せかしら 私は 色濃く揺らぐ幻 桃源郷の夢 色とりどりの花に囲まれて 極彩色の鳥が舞い飛ぶ 南国の風が頬を撫でて その傍らで気高い黒い犬が欠伸をしている もしあなたが不幸せなら この場所があるから安心して そして永遠に夢を見たまま 息絶えるその時まで この世界で暮らしましょう 夢はただの夢 けれど一生夢を見続けられたなら それはもしかしたら現実かもしれない 今いる世界が怖いのなら 逃げたいなら逃げたらいい 全て許されるのだから だから此

          黒猫

          眠らない街でぽつんと黒猫 夜の電灯は少し儚げで ピカリピカリと光る緑の瞳 静寂は混沌を生む 闇夜に溶けてく 足音さえ忘れられているけれど あなたの側にいつの間にか座り込んで ゴロゴロ喉を鳴らして頬ずりしている 魔女の使いだから ボクのこと嫌いなの? 黒猫は夜を眠らず 走り抜ける 遠くまで 突き抜けるように 屋根の上 登って見えるのは 街の夜景 キラキラと瞬いて 三日月が刺さるから 耐えなければならない 途切れることなく みんなの視線が痛い 今日も闇の中を走る 黒猫

          思考する脳髄

          頭の中で思い描く景色は もしかしたら誰かの見た昨日の街並み 果てしない物語を垣間見ながら また夜が明ける 頑なだった思考は解けていく それはなだらかな丘の上 建てられたひとつの墓標 夢の中での出来事を全て覚えていないように 私達はこの世界を生きている 百年経ったら忘れるでしょう 大樹はそう言って その葉を揺らしている 頑丈に造られたビルディングの寿命もいつか来るから 何もかもが徒労に終わる気がして 人々さえも色褪せて見える そんな時 想像する バサリと黒いカラスが

          ラーメン短歌

          茹だる時ツルツル滑る箸の先 口を寄せては味見楽しむ 塩ラーメン磯の香りに誘われて 湯気に隠れて貝になりたい 遠出して並ぶ名店草臥れて 涙を流す麺の美味しさ

          別離

          便箋に戻りたいと書いてみる 文字は滲んでよく読めなくなる ぽたぽたと水滴が紙の上に落ちる 堕ちていくのは 私のこころ 瞼を手で覆って 見えないふりをする さようならが近づいて もう終わりという刹那 人は何を思う あの人に会えなくなる 最後に手紙を書こうとしたけど無理みたい 連絡もないんだから 何もしようがない 30代半ばでまた独り身になる BARに通ってみたけれど 私はもう若くなく 誰も相手をしてくれない アパートに帰って出来合いのおにぎりを食べて 枕に顔を埋

          アヒルのルノー

          九月の鼓動は少し優しい 庭に植えられた金木犀が微笑み 傍らでアヒルが一匹佇んでいる アヒルの名前はルノー 老夫婦の家で暮らしている 二人はとても優しい 毎日庭をぐるぐるしている おなじ暮らし ルノーは時折ぼんやりしてしまう それでも季節は巡る 夏の日差しが遠ざかって 風が爽やかに頬擦りしてくる ルノーは空を仰ぎ 雲よりもっと遠くを見つめている と  お   く もっと と  お   く 白く 翼は小さくてそんなに飛べないけれど そのつぶらな瞳に空色を映している

          短歌『面影』

          泣く度に思い起こすは面影かノートの隅に描く似顔絵 逆さまに世界が映る逆上がり懐かしい人今は遠くに 鰯雲数えきれないその中に私を探す瞳見つけた

          海の泡

          海の泡になって朦朧と夜を渡りたい 明け方を待っていたあの頃のようにうたた寝をしながら 海岸に打ち寄せられた残留物は思念波を発している 思い出を手繰り寄せてはみるものの 何もかも元には戻らなくて さようならという言葉だけが水面に浮かんでいる 魚の死骸が骨となっても意識を伝えてくる 海月は毒と電気を抱えて月夜に抱かれている 夜風に吹かれて人魚の群れが海岸線の向こうの方で泳いでいる 真珠の粒を吐くアコヤガイが殺さないでと泣いている こんな夜こんな時間に 私は海の泡になりたい