見出し画像

ハイスペックピアニストたちの時代

 ようやく初めてブルース・リウを聴きました。プログラム前半の最初に演奏されたラモーが素晴らしく良かったです。聴きながら、クラヴサンを弾いた時の鍵盤の反応や感触(←どこか居心地悪い)を指先が思い出すほど、ファツィオリのピアノで弦を弾く音まで見事に再現していて、フレンチバロックの様式や色香を楽しみました。もちろんショパンやリストも良かったですが、ロマン派の曲もどこかバロック的な表現に感じました。新世代のハイスペックピアニストであることは間違いないですね。
 コンクール全盛期…と言っても、いつとは正確に断定できないのですが、あえて言うならどんなコンクールにも同じ顔ぶれの審査員がいて、コンクール賞金で生活費を稼ぐロシア人がわんさかいた時代、コンクールを審査をする教授であり教育家達によって、ピアノ演奏がスタンダード化(規格化)されていたように少なくとも私は感じていました。それは悪いことではなく、読譜やペダリング、またはレガートなど技術面で必ずマスターしておくべきポイントがあり、私のような普通の能力の学生にとっては勉強する上での指針となり、他人の演奏を聴く基準となっていました。ところが、最近登場した新世代のハイスペック・ピアニスト達はそれらを凌駕し様々な個性を舞台や録音で発揮しています。前世紀の価値観を引きずっている間に取り残された…なんて事にならないように、コンサートを聴きに通うにも勉強に必死です。アレクサンドル・カントロフや藤田真央くんのリサイタルも、聴くたびに新しい驚きと発見に満ちています。コンクールの先に、本当の音楽の追求や演奏の楽しみがあることを体現して聴かせてくれているようで、時代が変わったな…とここ最近感じています。

 それにしてもミューザ川崎の響きは、本当に心地良いですね。
これまでは別の分野のように思っていたフレンチ・バロックをもっと勉強したいと思いながら帰途につきました。
私のピアノ、ファツィオリの方にオーバーホールして頂いたのですが、2年経ったら急に素晴らしい音になってきたのです(嬉)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?