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【Clubhouse連動】4年ぶりのエアライン運行停止⁉️LCCゴーファーストはどうなるのか✈️

はじめに

こんばんナマステ💙Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ⭐️

今日は22時からのClubhouse『インドの衝撃(インド大学)』で喋るLCCゴーファーストについてやっていくよ‼️

これまでも『インドの衝撃』ではインドのエアラインを個別に紹介してきていて、

タタグループ(エアインディア、ヴィスタラ、エアアジアインディア)

インディゴ

アカサ

これらに次いで今日は先日倒産・運航停止が発表されたゴーファーストについて見ていきたい。

比較的最近までゴーエアを名乗っていたので、そちらの方がピンと来る人も少なくはないと思う。

逆に言えばリブランディングをしようとした矢先の失墜ということになる。

そんじゃあ始めていくよ❣

隠れた超名門、ワディア家の翼

ゴーファーストはインドの財閥のひとつであるワディアグループの航空会社なのだけど、エアインディアを持つタタグループをはじめ、ビルラー、リライアンス、今揺れているアダニなどと較べると知名度は低い。

でも実はインドの財閥のなかで最も名門といってもいい。

なぜなら、ワディアグループは1736年に設立されたインド最古の企業で、イギリスからボンベイ(現ムンバイ)における造船事業を受注、これが今日におけるムンバイの発展の礎になったから。

ワディア家はパールシー、つまりペルシャに起源を持つゾロアスター教徒の家系で、同じムンバイ拠点のパールシーであるタタ家が事業を興したのは130年も後のこと。

タタ家に限らず、インドの財閥の多くがムンバイに拠点を置くのはワディア家が築いたボンベイの土台の上だからこそ。

植民地において支配されている側のインド人から多くの財閥が誕生すること自体非常に不思議な話だし、独立後1991年まで社会主義体制にあったのにもかかわらず財閥は解体されるどころかむしろ租税を免れて事実上保護されたのも不思議。しかし、それがインドが一貫して国際社会の中で一定の地位を保ってこれた原動力のひとつでもある。

タタ航空が独立後、国営化されるにあたって大反対したJ.R.D.タタが、国に請われて会長職を無償で長年勤め上げたというのが、社会主義国インドにおける国家と財閥の関係を象徴しているといえる。

ワディア家はボンベイ~ムンバイの父というだけでなく、現代インドの父といえるかもしれない。

ワディア家とタタ家は同族ということもあり、J.R.D.タタの時代には非常に親しい関係で、現ワディア家当主ヌスリ=ワディアの息子でゴーエアを設立したジェ=ワディアの名はJ.R.D.タタに由来する。

ワディア家はタタグループの株を多く持ち、役員を務めていたが、タタ家の現当主ラタン=タタの時代に入り、役員解任騒動が起きるなど対立関係になっている。

なおヌスリ=ワディアの母方の祖父はパキスタン建国者ムハンマド=アリー=ジンナー。したがって分離独立時にパキスタンについていく選択肢もあったけれど、インドで事業を続ける道を選択した。

シェアを追わない経営とその限界

社会主義時代のインドは国際線にエアインディア、国内線にインディアン航空が飛ぶ状況だったけれど、1991年の経済自由化で様々な航空会社が設立されるようになった。

1990年代は国営エアラインの体たらくに対抗するジェットエアウェイズが支持を伸ばしたが、2000年代に入るとより高級路線をいくキングフィッシャー航空が台頭しつつ、マレーシアのエアアジアやオーストラリアのジェットスターの成功に影響を受ける形かたちでインドにもLCCの波が押し寄せた。

ゴーエアは2005年にワディアグループが設立したLCCで、ワディアグループの本拠地であるムンバイに本社を置く。機材はエアバス320で統一され、現在はその多くを燃費に優れたエアバス320neoシリーズに置き換えている。

ワディアグループ会長の御曹司でゴーエアのファウンダーのジェ=ワディアは、当初は同じ年に飛び始めたスパイスジェットなどのLCCに出資をするか、自らエアラインをつくるかを迷ったが後者を選ぶ。

スパイスジェット、翌年に飛び始めたインディゴとの競争を余儀なくされ、リーマンショックや原油価格の高騰を受けたこともあって勢いに乗れなかった。

そこで2010年代に入ると、スパイスジェットやインディゴとのシェア争いに与しない方針を取り始める。シェアを追うよりもニッチなところを攻めて収益性にこだわるようになる。

CEOがコロコロ替わるので一貫性は微妙な部分もあるんだけど。ちなみにアカサ創業者のヴィネイ=デュベ氏も元ゴーエアのCEOだった。

したがって、スパイスジェットやインディゴほど機材を急ピッチで増やしてもいかないし、例えばケーララ州のカンヌール空港を拠点に定めているのはゴーエアだけだし、初めての国際線に選んだ目的地はインドの航空会社で初めての就航地になるタイのプーケット。

燃費を抑えるため体重が軽い女性の積極採用を謳ったのも話題になった。

消極的かつ目先の利益を追う方策は2010年代においてはうまくいきシェア拡大に走る他社と違い黒字を確保してきたけど、やはり限界もある。

というのは、2010年代後半には国内シェア4割を超える圧倒的なリーダー企業になったインディゴが、ゴーエアで成功した路線にコバンザメみたいについてきちゃうんだよね。プーケットもそうだし。

ブルーオーシャンはあっという間に赤く染まってしまう。

そしてコロナ禍に入ると、シェアの低さが祟ってキャッシュフローが回らなくなってしまった。

傷だらけの再出発

苦境を乗り越えるべく、2021年5月にゴーファーストに名称を変更し、これまでの消極的・ニッチ戦略から、ウルトラLCC戦略に変更する。そして新規の株式公開を行い4.9億ドルを調達した。それにより積極的な機材導入に舵を切ることになる。

しかし、結局今月3日に運航を停止し、破産保護を受けることになった。

インドの航空会社が運航停止になるのは2019年のジェットエアウェイズ以来。

ゴーファースト側はエアバス320neoに使われている米国プラット&ホイットニー社のエンジンに不具合が起き、代替エンジンの納入も遅滞しており多数の飛行機が飛ばせない状況で売り上げの見込みが立たなくなったと説明しているけれど、これは恐らく誇張で、原因をなすりつけてるだけ。

エアバス320neoはLCC御用達の小型機エアバス320の改良版で、neoはもちろん新しさを指すとともにnew engine optionの意味を持つ。

その新しいエンジンは2社のものから航空会社がチョイスすることができ、プラット&ホイットニー社のPW1100G-JMまたは米仏合弁CFMインターナショナル社のLEAP-1Aが使われる。

つまりPW1100G-JMを使っている航空会社は多数あり、エアバス320neo以外にもいくつかの航空機に使われているけれど、それが世界中で不具合を起こしているなんて話はない。

そのうちのひとつまたは数個のエンジンは不具合が起きたのは、ゴーファーストとプラット&ホイットニー社の間で係争と仲裁が起きていることからして事実だし、それがゴーファーストにとってハチの一刺しになった可能性はあるけれども、それがメインではなく、キャッシュフローが焦げ付いたんだよね、結局は。

というのも多くの機材が運航できないのは、リース料の未払いでリース会社に機材を差し押さえられているから。

なお、同社のPW4000というエンジンを積んだボーイング777は2010年代後半以降にJALをはじめ、大韓航空やユナイテッド航空で不具合が起きており、JALは結局それを積んだボーイング777を全便退役させた。

日本でゴーファースト側の言い分をそのまま書いた報道が多く出たのは、このイメージがあるからじゃないかな。

破産保護を受けたゴーファーストは事業自体は当面継続する予定で、今日現在ホームページも閉鎖されていない。

しかしながら、5月23日までは運航が再開されない予定のためライバルのインディゴやエアインディアが増便して穴埋めしている。

インディゴとエアインディアはゴーファーストがこのまま終わるとみて、同社の人材や機材の獲得競争に動いているものとみられる。

5月24日より23機体制で運航を再開する予定だけど、元々が53機体制だったため半減以上の規模縮小になる。エンジントラブル➕差し押さえ分を除いた機材しか稼働できないということ。

ワディアグループとしては事業の継続のためにゴーファーストの破産を選んだのであり、撤退する意志はないという。

もしかするとこれはワディア家のタタ家に対する意地なんじゃないかと。タタ家と今でも仲が良ければ、エアアジアインディアと一緒にエアインディアエクスプレスにすんなり統合されたかもね。

少し前まで群雄割拠だったインドの航空業界は、インディゴによるシェアの寡占と、タタグループによる再編という状況に様変わりしてしまった。

こうした勢力図のなかで専ら経営危機が叫ばれていたのはゴーファーストよりもスパイスジェットの方だっただけに、ゴーファーストが先に転落したのは青天の霹靂だった。

スパイスジェットの行く末も気になるところだけども、新生ゴーファースト、昨年運航を開始したアカサ、復活を模索し続けるジェットエアウェイズなどなどインディゴとタタグループの狭間で蠢くエアラインのなかから輝く第三極は出てくるのかどうかも目が離せない。

まずは運航再開後のゴーファースト、ワディアグループの戦略を注視していきたい。

おわりに

2021年7月にヴィスタラがデリー羽田線に就航したのを受けて、『インドの衝撃』で話させてもらってから2年が経とうとしていて、

その間にエアインディアはタタグループに売却され、タタグループ内でヴィスタラとエアアジアインディアがエアインディアに統合されることになり、

インディゴはシェアの過半数を抑え、アカサが運航を開始、そしてゴーファーストが倒産とあまりにも目まぐるしい。

このダイナミズムこそインドなんだなぁとつくづく思うよ。

またそう遠くないうちに新しいニュースと出逢う気しかしないよね。

それじゃあバイバイナマステ💙暑寒煮切でしたっ✨



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