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廃止内定のローカル線をDMO化できるか

なんというかDMV(デュアル=モード=ヴィークル)と空目されそうなタイトルになってしまった。確かに文脈的におかしくないよね。

DMVについては少し前に書いた記事あるからよかったら読んでね💚

んで今回議題にしたいのはDMVではなく、   #DMO 。デスティネーション=マネジメント=オーガニゼーション、観光庁が #観光地域づくり法人 という和訳を拡めているやつについて。

昨日の記事で最後の方にチラッと書いた #秋田内陸縦貫鉄道#輸送密度 300人割れでしかも除雪が大変な路線なのにもかかわらず年間赤字額が2億円程度で済んでいるのが気になって、

秋田内陸縦貫鉄道について調べてみたらここがやってることってDMOだなぁって感じたから取り上げてみることにした。

そもそも人里離れたところに住むマタギのいた地域だけに地域住民の利用促進なんてたかが知れてる、だから観光客を呼ぶしかない。

ということで、秋田内陸縦貫鉄道には官民たくさんのステークホルダーが入り、税金で補填できるラインとして年間2億以内という赤字額を達成するために毎年苦心している様子。

国鉄から分離された #第3セクター鉄道 なんてみんなそーなんじゃないの❓って思うかもしれないけど、他はほんのもう少しは沿線住民がいて、観光は付加価値として考えている。

秋田内陸縦貫鉄道より輸送密度の低い鉄道会社は #紀州鉄道 とDMVを導入した #阿佐海岸鉄道 だけ。

紀州鉄道は鉄道名乗ってるけど不動産屋。ホテルたくさん持っててそちらでは自分も仕事でお世話になることもある。鉄道路線はその名の通り和歌山県にあるけど、2.7kmに過ぎず数千万円の赤字しかない。鉄道会社を名乗るブランディングのために路線を維持し続けていて、そもそも和歌山県の会社ですらない。(本社は東京都中央区) 

というか、この記事も杉山氏なのか💦

阿佐海岸鉄道はまた次元の違う輸送密度の低さだけれども、秋田内陸縦貫鉄道は紀州鉄道のようにパトロンもいなければ雪も積もる。それでももう40年近く存続できている。

それがどうしてだろうと考えてみると、赤字額を徹底して抑える努力もさることながら、秋田内陸縦貫鉄道が観光の核となっていることを地域が理解してくれてるってことなんだよね。だから赤字が2億までなら観光客を呼び込む投資として見てくれる。秋田内陸縦貫鉄道が無くなればこの地に観光に来る人などいなくなってしまう、と考えられているわけだ。

ここでDMOの定義を確認してみる。

世界的な定義は、「観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人」で、UNWTO(国連世界観光機関)が定めているもの。

事の起こりは米ラス=ベガスにおけるコンヴェンション誘致だと自分は聞いている。カジノが賭博の闇イメージから、コンヴェンションの嗜みに変わっていったきっかけであり、日本で議論されているIR(総合型リゾート)もこの流れの延長線上にある。IRとDMOが何となく同じ時期に日本で騒がれ出したのは偶然なのか必然なのかは知らない。

何にせよ欧米では官民(+非営利組織)の協働で観光地というか外から人がやってくる地域をマネジメントしていこうという動きが活発になっていき、UNWTOがそう定義するに至る。

そしてそれに観光庁が目を付けて、何故か色を付けて輸入することになる。

「地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」

勝手な定義入れ過ぎでしょ。欧米のいくつかの「先進例」のなかからそういう要素を見つけて掻い摘んできたんだろうけど、UNWTOの定義の範囲なら日本でもちゃんとやってるとこ結構あったと思うよ。

以前とある大学の観光講座を受講した時にそこの教授が仰ってた「欧米の優れた先進例はどんどん模倣してそして発展させていけばいいけど、日本の観光政策はずっと【住んで良し、訪れて良し】でやってきたことを忘れてはいけない。」という言葉が未だに心に響いている。その当時はオーヴァー=ツーリズムが叫ばれていたなんてのが今から考えると隔世の感。

ひとまずUNWTO定義に基けば秋田内陸縦貫鉄道は立派なDMOだと思うし、観光庁定義だってかなりいい線いってるんちゃいますの❓

今回はDMOそのものについて掘り下げることは避けるんだけど、DMOとして定義したら生き残れるローカル線があるんじゃないかと思うってことでひとまず触れてみた。

昨日の記事の続きだから、今回対象にする路線というのは一昨日廃止が内定したJR北海道の函館本線のうち #山線 と呼ばれる長万部から余市の間についてだ。

昨日の記事を少し振り返っておくと、北海道新幹線が開業して、長万部・倶知安・新小樽の各駅ができると長万部ー小樽間は並行在来線扱いになり輸送密度(1kmあたりの1日平均輸送人員)は北海道新幹線開業時の2030年には400人台になってしまう。乗客の新幹線へのシフトと人口減少を加味した試算。

普通に考えたら鉄道路線として存続できるのは、まだ1,500人近くいる推計になる余市ー小樽間だけで他はバスにするしかない。全線を第3セクター鉄道にした場合毎年23億円の赤字が見込まれるという。

だけど、それでもまず長万部ー余市で見ても恐らく今の秋田内陸縦貫鉄道よりは輸送密度が高く、そして同じように除雪が大変。それでいて秋田内陸縦貫鉄道は年間2億円程度の赤字で収めて今日まで続けてきている。ならば長万部ー余市だってやればできるんじゃないのかと。

そこで秋田内陸縦貫鉄道の秘訣は何かを探ってみたらDMO的だった、ということになる。それなら山線もDMOとしてやってみたらどーなのかと。地域の足に主軸を置き補助金ベースで動くのが第3セクター鉄道だとしたら、DMO鉄道は観光に主軸を置くということになる。

公営、私鉄、第3セクター、英国保存鉄道のような非営利・ヴォランタリィのいずれにも属さない第5の鉄道運営と呼びたい。

DMOは道庁とニセコ周辺の観光施設など、この地域のバス路線網を担うニセコバスを筆頭にした北海道中央バスグループ、それに既に動いているDMOのニセコ=プロモーション=ボードが入るかたちにする。沿線自治体も入ってもらうけれど、赤字を負担できないために山線の廃止を選択した経緯もあり赤字の穴埋めはさせられない。多少の赤字は出てもそれは道庁で処理してもらうしかない。

まずDMOが受け持つ区間は長万部ー余市間120.3kmとし、余市ー小樽間は受け持たない。輸送量だけ見ればこの区間を入れた方がいいけれど、混雑が激しく余計な投資が必要になる。長万部ー余市間のみなら1両編成を基本に需要に合わせて2両、3両に増やしていける車両に統一できるので観光のシーズナリティ(季節需要)に対しても無駄がない。余市ー小樽間は架線を小樽から引っ張った上でJRが受け持ち新千歳空港などから直通電車を走らせた方が効率的。昨日は仁木ー小樽間の電化と書いたけど、それは長万部ー仁木間は線路を剥がす前提での話。線路が1本しかない仁木で電車とディーゼル車を乗り換えさせるのは難しい。

ダイヤに関しては過大を承知で全線で1時間に1本としたい。恐らく長万部にも倶知安にもその本数は新幹線が停車すると思われるからだ。新幹線や余市発の快速エアポートとの連絡を密にして眠っている需要を喚起することが必要。

また、冬季のスノーリゾート直行を除いて札幌からの高速バスは余市止まりか積丹行きとしてもらい、岩内やニセコへの高速バスの代わりに山線を使ってもらうようにすることも必要。DMOは山線とニセコバスと一体経営にして、バスの運行管理は中央バスに任せる方式を取ることでカニバリズムを打ち破ってほしい。もちろん各駅でのフィーダーバスとの連絡は絶対だ。

九州の第3セクター松浦鉄道はバス会社の西肥自動車やラッキー自動車が経営に参画して鉄道とバスの連携を密にしているし、近年では新高速乗合バスの雄WILLERグループが京都丹後鉄道を運営して地元の丹海バスと密な連携をしている。WILLERと丹海に資本関係はないけどWILLERが地域の発展のために丹海を説得した成果。昨年は丹後半島を旅行したけど、本当に乗り換えが楽で効率的に旅ができた。この話はまた別の機会に書くね。

昨日も書いたけど、ローカル線と路線バスがカニバリズムを起こしているのは地元民にとって何にもならない。それぞれの得意分野を発揮し合った方がどう考えたってみんなが幸せになれる。競争が必要なのは競争ができるだけの需要があってこそ。北海道には需要がないのに鉄道とバスが並走しているところが目立つんだよね。

その上で年間の赤字額だけれども、94.2kmで除雪の必要がある秋田内陸縦貫鉄道が年間2億円以内を掲げているんだから、120.3kmの山線は単純比較なら2.5億円以内を目指さなきゃいけないことになる。恐らく雪に閉ざされる日数が秋田と北海道では違うので3〜4億円は許容することになると思うんだけど、でもそこまでだ。今の予測である23億円は正直話にならない。

道庁は函館ー長万部間でも同じような赤字予測を出して、地元自治体が手放しムードになっている。でもこれも既に第3セクター化している道南いさりび鉄道と比較すると疑問符がつく。

ちなみにJR貨物からお金をもらえるこの区間と山線は同一には語れないので、今回はより似た条件の秋田内陸縦貫鉄道との比較とさせてもらった。

今後は余市ー小樽間と函館ー長万部間の存廃に焦点が集まるけど、後者は森以北の旅客列車は無理だろね。函館ー新函館北斗間でJRとの一体感を残すか、それとも函館から木古内及び森で道南いさりび鉄道の一体運営にするかという話になると思う。

なお、廃止が内定している根室本線富良野ー新得間についてはDMOも救えない。

まず台風で不通になっている区間の復旧費用をどこも負担したがらないし、台風の前から輸送密度は152人で使命は終わっていたと言わざるを得ない。

富良野の観光ブランドは高いけど、落合ー新得間ではトマムのすぐ近くを掠めるのにスルーしてしまうという哀しさ。南富良野町の中心駅幾寅は高倉健の映画のロケ地だというけどそれだけでは厳しい💦

1日4.5往復の列車運行だけど、うち3往復は旭川と帯広を結ぶ都市間バスノースライナーを富良野ー新得間に限り乗降可能(オープンド=ドア)とした上で旧鉄道駅代替バス停に停めればいい。

新得駅前に停車したのがつい最近で、着々とライバルの死を待っている感じだね。

ノースライナーと調整のつかない便はJRが責任持って代替バスを走らせることになるけど、落合からは新得駅ではなくトマム駅に行った方が近い。

実証実験で富良野からトマムまでのバスを走らせたりもしているけれど、きちんと走らせたらそれはそれで人気出ると思う。下手したら1〜2時間に1本くらい出るんじゃないのか。

JRはなかなか乗り気にならないだろうから、トマムと旭川に施設を持つ星野リゾートがやっちゃってもいいんじゃないかな。新しい気概を持ったプレイヤーに引き継がれるならその方が地域の人にとっては幸せだと思う。






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