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冬でも十分美しい雲場池の魅力

冬の軽井沢はシーズンオフとはいえ、あまりの閑散ぶりに驚いた。賑わいがないのは寂しいが、賑わっているから魅力があるわけではない。人がいようがいなかろうがその土地の魅力は必ずある。実際に、旧銀座通りは人が少なくても建物の違いをじっくり見られ、街並みを十分に楽しめた。

旅行最終日、どうしても行きたい所へ行った。雲場池だ。地元民からはお水端、外国人からはスワンレイクと呼ばれ親しまれている。春夏は緑が美しく、特に初夏は新緑と空の青が織りなす景色が格別で、軽井沢らしさを感じるとのこと。晴れた日はきっとハレルヤ!と言いたくなるような景色に違いない。秋は紅葉の名所としてその魅力をいかんなく発揮し、紅葉が水面に映り込み姿は趣があるという。

では、冬はどうなのか。私が調べたときは冬の魅力について語っているものがWEBで見つからず、あまり期待できないのかと不安になった。しかし、行ってみないとわからない。どんな状況でも楽しみを見つけられる私なら楽しめるだろう。皇族の方々も軽井沢に訪れた際には散策を楽しむ場所というし、期待値が低いとはいえ行かないわけにはいかなかった。

宿泊先のホテルから雲場池は徒歩20分で行けるので旅のトリとして行こうと決めた。歩くのは好きだから20分歩くのは苦ではないが、やはり雪道は少々億劫。こういうときに車が運転できないと不便だ。しかし、旅行中だからと思えばいくらでも歩けるから不思議だ。

とはいえ、冬の軽井沢は油断できない。私が訪れる前日に雪が降り、そこまで雪は積もっていなかったもののアイスバーンがひどかった。向かう道中はあえて雪道を歩いた。ふかふかな雪道は安心感があるし、何よりも雪を踏んだときのザクッとした音と感覚がたまらない。地元で雪が降ったら面倒でしかないのに旅先ならワクワクする。旅先では雪道もおもちゃに。些細なことでも楽しめるのが旅行の醍醐味だ。

途中、Googleマップが示す最短ルートから外れてしまったものの、無事に到着。思ったよりも小さかった。

行ったときは二人しかいなかった。シーンと静まり返った池。雪景色はきれいだけど、これといった花が咲いているわけでもなく少し物足りない。まぁこんなものだよなと思いながら回り始めた。

雪解けで足元はぬかるみグニャグニャとする。池をぐるりと囲む道の幅は広くない。慎重になって進んでいく。冬の空気は凛として呼吸をしているだけで体内が澄むような感覚になり、木々の下を歩くほどに自分にまとわりついた邪気が取れて癒されていくようだ。そうか、これがここの冬の魅力だ。

歩き進むとカモが泳いでいた。この寒い中泳ぐなんて寒くないのかしら? 普段何とも思わないことも感慨深くなるのが旅マジックだ。

一周しようかと思ったがやめた。新幹線の時間もあるし、これ以上進んでも変わり映えしないと思ったからだ。来た道を引き返すとまた違う景色が広がっていた。きれいだ。物足りないと思ったけど、真っ白な雪道は惚れ惚れする。

至る所に積もった雪は風物詩。暖かくなれば何事もなかったように溶けて消えてしまう。晴れた日の雪に少し刹那を感じた。

水面に今にもつきそうな大きく立派な枝。もし雪の重みに耐えられずに折れてしまったら、私は一巻の終わりだ。折れないでねぇと願いながら進む。きれいと思ったり、命の危機を感じたり、頭の中が忙しい。

入り口に戻り、最後にもう一度見渡した。冬でも空は青く、水面が鏡になって空の青さが実際よりも濃く映り込む。花は咲いていなくても雪がアクセントになっていて、十分きれいではないか。来て良かったと思い、その場を後にした。

帰り道の、おそらくカラマツだろう木の下を歩く時間も心地良かった。冷たくて澄んだ空気、優しい木漏れ日。静かな自然の中にいると自分の存在だけを存分に感じられる。この気持ちになれただけでも軽井沢に来た価値はあると感じた。

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