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第8回ちば映画祭上映作品 遠くの水

《「遠くの水」、3回みました。僕は「ひとつの歌」しか知らないけど、これが杉田トーンなのだなと再認識しました。音楽が必要最小限ですばらしい。

j・ルノアールの「ピクニック」を思い出すところもありました。とにかく杉田さんは詩人なんですね。僕は劇作してるけど、まったく詩心がないので単純に敬服します。

このURLは内緒なんですか。ツイッターなどで、この作品、youtubeで見れますって言えないのですか?》

とメールをくれたのは、山内ケンジさん。

山内さんは昨年『トロワグロ』で岸田國士戯曲賞を受賞した方で、城山羊の会の主宰であり、現在公開中の映画『友だちのパパが好き』の監督でもある。

城山羊の会 公式サイト

『友だちのパパが好き』 公式サイト

『ひとつの歌』主演の金子岳憲が、城山羊の会の舞台に出演していることがきっかけで、まだそのころ映画祭も配給もなにも決まっていなかった『ひとつの歌』の試写に来てくれたのが出会い。終映後のロビーで、たくさん言葉をもらった。上記の感想メールは、ご本人の了解を得て載せました。

ちば映画祭のスタッフの方も、私の売り文句として映像の詩人と書いていて、初めて目にしたとき、狼狽えた。

今年のちば映画祭で、私の作品の特集を組むことは、たぶん最初は決まっていなかった。スタッフの方が、『遠くの水』の上映に来てくれていたみたいで、その上映権についての連絡があったのがはじまりだった。その後、千葉在住なのに仕事の帰りに東京まで会いに来てくれて、たくさん話した。過去作品もできれば見てみたいと言ってくれたので、渡せるDVDやブルーレイを全部渡したら、その後連絡があって、特集を組みたいと言ってくれた。どの作品を上映するかの提案があって、『ひとつの歌』が入っていなかった。私自身の知名度がないので、比べればまだ知っている人が多い『ひとつの歌』は一番集客できるかもしれないから、入れた方がいいのではと提案したら、見てる人が多い『ひとつの歌』よりも、出会いの少ない他の作品を見せていきたいと言ってくれた。『ひとつの歌』も見てる人少ないですと口にしかけてやめた。

『遠くの水』の脚本は、ファミリーレストランのサイゼリヤで30分くらいで書いた。そのころは演劇と映画の学校であるENBUゼミナールで俳優クラスを受け持っていて、ENBUゼミナールから一番近い、考えごとのできる場所がサイゼリヤだった。この学校は太っ腹で、俳優クラスの実習作品として、短編制作に30万円を出してくれた。どんな映画にしてもいいと言ってくれた。確認はするけれど、脚本は自由にしていいとのことだった。出演する受講生のみなさんが、学校への申し込みのときに提出した履歴書を手掛かりにした。特技の欄に、水泳とかダンスとか書いてある。以前、モデルで俳優のMeriiさん出演で、ポケットデジタルカメラ「ポケデジ」のサンプル動画(ページの下部に掲載)を撮ったときに同じやり方をした。

私は映画を作るときに、台詞やト書きを、現場が始まらないと本当のところは思いつけない。助監督をやっていたころも、脚本を読んだだけで想像することが苦手だった。目の前で実際に人や場所を見ないとわからない。だから、自由にしていいと言われて、お金も無条件でもらえるなら、脚本をちゃんと書かなくてもよくて、それはうれしい。そのうれしい気持ちが『遠くの水』。いまから羽田に行きたいとか、突然言い出しても、誰も怒らなかった。出演の受講生のみなさんも、本当は戸惑ってたのかもしれないけれど、たのしんでくれてるみたいだった。劇中で、カレーをみんなで食べる場面があるのだけれど、早めに現場に入って作った。作り始めてしばらくしてから、隣で作業をずっと見ていた青年が、おれ、アレルギーでトマト食べられないんですと口にした。トマトを入れたカレーと、トマトを入れてないカレーを作った。大鍋がふたつ。みんなおかわりしてくれた。


第8回ちば映画祭 杉田協士監督特集① “出会いと別れと再会の可能性をめぐる歌“

上映作品 『カモメ』、『河の恋人』、『遠くの水』


3月20日(日)13時50分から 当日料金1000円


千葉市生涯学習センター
にて(千葉市中央区弁天3丁目7−7 JR千葉駅から徒歩8分)

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