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第8回ちば映画祭上映作品 反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった 始発待つ光のなかでピーナツは未来の車みたいなかたち その2

長いタイトル。長いのは短歌だから。音数で31文字。そこにぜんぶ書いてある。『ひとつの歌』の公開を準備しているとき、配給を引き受けてくれたboidの樋口泰人さんと話していたこと。映画にネタバレはない。短歌にネタバレがないのと同じように。

『ひとつの歌』のストーリーは、チラシに数行で書いてある。それを読んで、つづきがすごい気になると伝えてくれる人がいた。つづきはなかったから申し訳ない気持ちになった。ストーリーを書き出すと、数行で終わってしまうくらいの内容だった。

反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった

という加賀田優子さんが詠んだ短歌を、歌人の枡野浩一さん、lysリュースのメンバーと一緒にコンテストで優秀作品のひとつに選んだ。優秀作品は映画化するというのが賞の特典だった。コンテスト開催を発表してから毎日のように応募があって、上の短歌が届いたときに、この企画がうまくいくような気がした。どうしてかは言葉にしづらい。きっと誰かはできる。私は映画化してそれをようやく伝えられるかもしれない。なんらかのライトが付いている道具なりオモチャなり機械なりがあって、電池のプラスマイナスを反対にして入れたから、光らない。でも、まさか電池が反対だったから光らないだなんて思わなかったし、知った今もどこかで信じられない。ということを詠んだ短歌。ネタはぜんぶ書いてある。

ネタがぜんぶ書いてある短歌をタイトルにした映画は、だから、やっぱりネタバレしている。この短歌をタイトルにしたら、反対になった電池のせいで光らないなにかについて、描くことになる。

ある人から聞いた話。以前、病気で余命が短い友人から、死ぬ前にもう一度だけ『牯嶺街少年殺人事件』をスクリーンで見たいと言われて、フィルムを方々で探したけれど、見つからなかった。

私も考えたことがある。死ぬ前に一本だけスクリーンで見るならどの映画にするか。『キャスト・アウェイ』が頭に浮かんだ。トム・ハンクスの最後のあの顔をスクリーンで見ている時間を思った。


第8回ちば映画祭 杉田協士監督特集② “lysリュース(光)の芽吹き”


上映作品 『反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった』
     『始発待つ光のなかでピーナツは未来の車みたいなかたち』


予告編


3月21日(月・祝)13時45分から 当日料金1000円
千葉市生涯学習センター
にて(千葉市中央区弁天3丁目7−7 JR千葉駅から徒歩8分)

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