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ベトナムめぐり

2012年から活動がはじまったアジア女性舞台芸術会議(以下、亜女会)メンバーによるベトナムめぐりの記録映像を撮ってる。今回のメンバーは指輪ホテルの羊屋白玉さん、おやつテーブルの前田愛美さん、マレーシアの劇作家のプェイ・ティンさん。南のホーチミンから入って、フエ、ダナン、ハノイと移動してきた。ベトナムのアーティストと出会い、交流をはじめるための旅。事前に情報やつながりを見つけるのがむずかしく、わずかなツテでも現地に行ってみる、そこで出会う人たちからつながりを広げてみる、という長い目で見たプロジェクトの最初。

公共の交通機関がほとんどないからバイクが多い。デートも、学校の送り迎えも、通勤も買い物もみんなバイク移動。車もバイクも、向こうが避けるが基本みたい。徒歩で横断歩道を渡るときも、向こうが避けるを信じて渡る。クラクションは、いるよの合図。うしろにいるよ、左に曲がるよ、発進するよ。タクシーの助手席からバイクに乗った人たちの写真を撮りつづけてる。毎回、撮りはじめると運転手はわらう。なにをしてるか理解して、スピードを調整してくれたりする。一度ボッタクリタクシーに乗った。助手席だけドアロックされて、出られなかった。負けなかった。

街によってスピードも、雰囲気も、食べ物も、建物もちがう。考えたら日本も一緒。4つの街。博多、奈良、横浜、札幌みたいなちがい。どの街の人も、他のことをほんのりわるく言ったりする。フエの人はプライドが高いとか、ホーチミンの人は一見フレンドリーだけど内心はちがうとか。日本と一緒。

ホーチミン。できたばかりのアートギャラリー。現代アート作家の作品が並んでるけど、模造紙でカバーされてて中が見られない。ギャラリースタッフが、政府から展示を禁じられたのだと説明してくれた。バイクに乗った人を描いた版画。

フエ。カフェ経営と見せかけて、現代アート作品のギャラリーをやってる人に会った。コーヒーを飲みながら取材。政府の人に怪しまれないようにと、取材じゃないように見せかける小芝居をうつ。笑いながらだったけれど、本当はきっと冗談じゃない。戦争で我々はアメリカに勝ったのだと誇らしく言う人もいるけれど、ばからしい、あれはする必要のない戦争だった、誰も勝ってないし、負けてない、ただ私たちの血が流れて大地に染み込んだだけだと言った。子どものころから、彼の祖父やおじさん、周りの大人の男性たちはどうしてみんな指がないんだろうと不思議に思ってた、兵士として戦わないように、握ったままの手榴弾を爆発させたのだと後で知ったと言う。彼の作品は、どれも、切断された指の形のソファ。写真を見せてくれた。人の髪の毛を大量に縫い込んだものや、牛の骨で作ったもの。座り心地いいよと言った。

出かける時間。

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