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新メディアPORTLAの立ち上げと編集長交代のお知らせ

みなさんにとって今年はどんな一年になったでしょうか。僕は2月以降で予定していた海外行きが4本ほどキャンセルに。定期的に違う国の空気を吸うことで気持ちのリセットをしていたんですが、その時間がなくなったことによって「身の回りの人やもの」にも目が向いたは自然のことだったように思います。また「やらなきゃなあ」と言いつつ後回しにしていたことを一挙に片付ける時間ができたことをポジティブにとらえています。

と、年末のあいさつを書きつつも今日は新メディアPORTLAを1月の中旬頃にローンチするよ、というお知らせがひとつ(5月になりました!)。またそれに伴い現・編集長の堤がPORTLAの編集長へ、ANTENNAはこれまで副編集長を務めてきた岡安が今後編集長を務めることになるよ、というお知らせができればと思います。

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PORTLAは文化を通じて旅をするためのメディア

フランスの作家マルセル・プルーストの「本当の発見の旅とは、新しい風景を探すことではない。新たな視点を持つことなのだ」という言葉が好きです。これは精神的なものや知的な体験にこそ「旅の本質らしきもの」が詰まっていて、身体性を伴った物理的な移動は感受性を開くひとつの方法でしかないことを意味しています。

そう考えると今まで僕たちがANTENNAというメディアを通じて行ってきたことは「旅」だったとらえることができます。ローカルに根ざしたまなざしを追いかけ、またインディペンデントな取り組みを楽しむとは、新しい視点を得て日常や隣近所にたくさん転がっている「旅への扉」を見つけることにほかならない。

でもそう簡単に見つけられるなら苦労はしないんですよね。だからPORTLAでは誰もがすぐにたどり着く「80点」の答えではなく、すぐには飲み込むことが難しいような取り組みにも飛び込んでいくことで、編集部メンバーが「新しい視点を得る文化的な体験」をし、私たち自身がまだ発見したことのない「旅の扉」との出会い方を模索したいと思っています。

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どうしてわざわざ新しいメディアを立ち上げるのか?

PORTLAはWebマガジンANTENNAから独立し新規に立ち上げ、今後は2つを同時に運営していくことになります(ただでさえリソースかつかつなのに!)。これまで7年に渡って運営してきたANTENNAでは「文化の九龍城」を目指し様々なジャンルを横断して発信を続けてきたんですが、小さなコンテキストを伝えることに特化したWebという媒体の特徴、また活動を続ける中で見えてきた「整理し、区切ったほうがよいライン」がなんとなく見えてきたことが今回の選択につながりました。

少しラディカルな言い方にはなりますが双方のメディアでは「文化」という言葉を分解し、ANTENNAでは「音楽や映画、アートなどのポップカルチャーをというジャンル」をベースに、そしてPORTLAではもう少し広義な「ライフスタイルや考え方、ひいては道徳や価値観を含む生き方そのもの」を文化と定義して取り扱うことができればと考えています。

この辺り、正直言葉を重ねても説明が難しい部分があるというか、きれいに分けきることはどうやっても難しいんです。そしてきれいに分けることだけが正解でないこともよくわかります。ただこの2つをある程度整理しておくことで、読者も、作り手である我々も文脈をとらえやすくなるのではないかと感じています。また2つのメディアは横断できるような仕様にしていく予定なので、より重層的な文脈の見せ方ができればと考えている次第です。それにあわせて新年明けにANTENNA本体もリニューアルを行う予定です。

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振り返ればANTENNAが自分にもたらしてきたものは非常に大きくて、そもそも今自分が仕事をしている会社との縁もこのメディアがあってこそだし、この活動をしていなかったら知り合えなかった人がごまんといるはず。SXSWへの取材など随分と遠くに連れて行ってもくれましたしね。

なにより一番の収穫はこのメディアを通じて多くの人と「一緒になにかを生み出す共犯者となった」ことと、「そういうことができる遊び場を維持できてきた」ことでしょうか。最近、「人は一緒にいても消費するだけでは仲を深められないらしい」ととある市町村の事例から知りました。

今後もそういった場を維持しつつも少しずつ拡張し、より多くの人が遊べる場を作りたいと思っています。その一手が先にお知らせしていた法人化たWANDERLUST BOOK STOREや今回のPORTLAの立ち上げです。PORTLAのローンチは少し先になるとは思いますが、楽しみにしていただければと思います。

ずっと伴走してきた岡安にANTENNA編集長の座は譲りますが、編集部としては「ANTENNA・PORTLA合同」になります。今後は切り分ける可能性もありますが、今いるメンバーに関してはどちらにも所属した状態です。なので僕もひとりの編集者として在籍しますし、特に内部の動きとしては変わらないと思っていただいて結構です。

僕は結局、ゲームをしていても好きなのははじまり前後なんですよ。レベルも低く技も道具も足りない中で、ちょっとずつ工夫して進めるのが好きなのです。というわけでまた新しい扉を開く機会を得たことを嬉しく思っています。

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前編集長・堤(左)と新編集長・岡安(右) (photo:桑原雷太)

新編集長・岡安からのあいさつ

ANTENNAをはじめて7年。私がメディアの仕事に関わるようになってからは10年ほど経ちました。ライターを始めた頃に「ライターを10年続ける」という約束を、アメリカ在住の先輩バンドマンとしてから、それを実行することの困難さに何度もぶち当たってきました。並行して進めていたフォトグラファーの仕事が目に見えて評価されていく中で、自分の文章の非力さを日々痛感していたし、ライターをやめるという選択肢がいつも頭の中をちらついていたのも事実。それでも書くことを手放さずに10年もやってこれたのは、大好きな先輩バンドマンとの約束を破りたくないという気持ちと、その先にある本当にあるかわからない自分が書いて伝えることの喜びを実感できる未来を夢見ていたからです。10年、諦めずに続けてメディアの編集長になったことで、ひとつの夢を今叶えたような気分に浸っています。

というわけで、2021年より私、岡安いつ美がANTENNAの編集長に就任します。ここまで7年で積み上げてきた約2,000記事を目の前にすると、改めてことの重大さが身に沁みますが、私たちがやっていくことはこれまでと変わりありません。ですが、私たちは次のフェーズへ進んでいかなければいけないことも事実。この前、前編集長・堤と副編集長と峯と話した記事の中で「これから僕らは「好きだから取材をする」の先を目指さないといけない」という話をしました。東京ではない土地で、メディアを立ち上げることは好きの気持ちがあれば多くの人が叶えられることです。しかし、それがステークホルダーやその周縁の人たちを中心に「必要とされる」存在になることは簡単なことではありません。私たちのメディアが、どう社会に貢献できて、コミットできるのか。これからより社会との接続をイメージして、メディアを運営していこうという気持ちでいます。

つい先日、編集長になったことを「ライターを続ける」と約束した先輩に報告したら「10年、よくやったな!次は何しようか?」と連絡が。「私のやることはこっから本番なのか」と自覚的になったのは、この先の10年に目を向けることができたからかもしれません。2021年、スタートラインに立ったばかりのまだまだ未熟な私が、このメディアを束ねることでご迷惑をおかけすることもあるかとは思いますが、ANTENNAのこれから先の10年を、どうか温かい目で見守ってください。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

ANTENNA編集長 岡安いつ美


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