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数字で振り返る2020年の京都観光

2020年が観光業界にとって厳しい年であったことは言わずもがなですが、今回はあらためて京都におけるデータをもとに振り返ってみたいと思います。京都市観光協会が市内主要ホテルのデータをもとに毎月発表する統計によると、外国人宿泊客は2月から、日本人宿泊客は3月から激減が始まり、4月には客室稼働率が10%を下回るまでに落ち込みました。

その後、日本人客は少しずつ回復し、GoToトラベルキャンペーンが東京発の旅行にも適用になった10月にはコロナ以降初めて前年同月越えを記録。11月には、外国人観光客がいないあいだに京都の紅葉を楽しもうという人が増えたためか、前年同月から42.8%増といまだかつてない盛り上がりを見せました。

しかしながら12月にGoToトラベルキャンペーンの見直しが決まったことで、大半の宿泊予約がキャンセルされ、再び前年同月比はマイナスに転じました。調査対象施設における3カ月先までの予約状況のデータをもとにした客室稼働率の予測結果によると、感染状況が落ち着きGoToトラベルキャンペーンが再開されない状況が続くと、客室稼働率はさらに下落していくことが予想されています。

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毎年の入洛客数(京都への観光入込客数)は、京都市による翌年夏頃の発表が公式なデータとなりますが、さきほどの宿泊客数のデータをもとに先んじて概算してみると、2020年の入洛客数は前年から42%減の約3,000万人ということになりました。当然、外国人観光客は激減しましたが、日本人は1年を通すと3割減程度に留まっており、京都はまだまだ日本人のシェアが大きい市場なので、全体の人数は半減とまではいきませんでした。

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思っていたよりも減っていないように感じるかもしれませんが、阪神大震災のときの減少幅をはるかに超えていることは間違いなく、業界への影響は甚大です。状況が改善した時期もあったものの、祇園祭などの伝統行事や、花灯路などの市内大型イベントは軒並み中止となり、観光客が京都に関心を持つきっかけは確実に減ったことで、失われた需要は図り知れません。

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京都商工会議所の「経営経済動向調査」によると、サービス産業4業界の景況感は2020年4-6月期にほぼすべての事業者が悲観的な回答となりました。料理・飲食業界は7-9月期に、料理・ホテル業界は10-12月期に指標がやや改善しました。しかしながら、年明け1-3月期は緊急事態宣言が再開されたことで再び業界全体で悲観的な意見が上回っていることから、必要な支援が打ち切られてしまうと、倒産や廃業が相次ぐことが心配されます。

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一方で、京都への訪問意向を指数化した「行こう指数」は、コロナ以降実需要を上回っている状態が続いていることから、京都観光の潜在ニーズは確実に高まっています。4月以降、一般へのワクチン接種が始まり経済活動が正常に戻れば、これらの需要が戻ってくることになると期待している事業者も多いようで、旅館・ホテル業における2021年4-6月期の景況見通しは大きく改善しています。

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宿泊業界は、他の業界と比べて利益を回収するまでにかかる期間が長いことから、観光産業が長期的には成長することを見越している事業者が多いと考えられます。その証拠として、2020年に京都市内に新たに518軒の宿泊施設が参入しました。中には、年内予定していた開業を延期したままになってしまっている施設もありますが、将来的な需要を見込んで開業に踏み切った施設は少なくありませんでした。

一方で、統計上は同期間中に580軒の廃業(営業許可取り消し)が確認されており、トータルではいよいよ宿泊施設数の減少が始まりました。より質のいい施設が生き残り、いい意味での新陳代謝となるように、業界を支援していくことが必要です。

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今回はここまで。次回は、これまでは分析が難しかった日帰り客の動向を、昨年から利用できるようになり始めたスマホの位置情報ビッグデータを使って、確認していきたいと思います。

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