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コロナ禍においてDMOが成すべきこと

とうとう緊急事態宣言が発せられてしまいました。いまのところ京都は対象外となっていますが、府市は国に対して宣言を要請しており、予断を許さない状況です。

美術館などの公共施設を皮切りに、先月末から集客施設が相次いで閉鎖し、今週に入って飲食店の営業や寺院の拝観までもが中止となっています。そして、明日からは観光案内所までも閉鎖となり、観光産業はもはや手足をもがれてしまったといっても過言ではありません。

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先週末、利用者がいない京都駅の観光案内所の様子

この難局を乗り切るために、助成金の交付やオンライン研修の配信といった対策が、自治体・民間を問わず各所で講じられています。とくに、京都市の助成金は、1件あたりの上限が30万円と少額であるにも関わらず、応募が殺到して募集開始1日で締め切られたことから、業界が藁にもすがる思いの方々で溢れていることは想像に難くありません。

DMOは観光事業者と一蓮托生

そういった観光事業者の儲けの一部を、会費などのカタチで財源とすることで存立しているのがDMOという組織です(例外もありますが)。もちろん、自治体からの補助金で支えられている部分もあるので、今すぐに経営破綻ということになる法人は稀だと思います。それは、自治体と同じで年度ごとの会計処理を行っていて、まだ新型コロナウィルスの影響が出る前に考えられた枠組みで今のところ動いているからというおかげでもあるのですが、それはつまり、翌年度になると一気にツケが回ってくる可能性が高いということでもあります。

もし、自粛要請が正しく機能し、突然変異や再感染などの想定外が怒らなければ、1,2ヶ月後には状況が改善し、誘客活動も再開できることになります(まさに、ロックダウンが解かれた武漢が良い例でしょう)。こうした段階において、DMOとして何ができるか、DMOの手で潮目を変える方法を先回りして考えて置くことで、やはりDMOは地域にとって必要な存在であることを再認識してもらう必要があります。

ありがちな取り組みの是非

過去の災害復興における自治体の政策事例では、旅行クーポンの発行(要するに値引き)が挙げられます。おそらく大半の自治体はこれらの政策を踏襲することになるでしょう。しかし、これがコロナ禍において、あまり有効とは言えないことについて、某氏のブログで以下のとおり解説が成されています。これは、クーポンに限らず、割引を伴うほとんどの施策に該当することです。そうでなくとも、安売りは観光地のブランド価値の毀損につながり、一度崩れたブランドを復活させるには長い年月を要するので、なるべく避けなければなりません。

コロナ禍の終息/収束時期がいつになるのか設定できないこと
利用者が限定されること
関連消費が広がらないこと
コロナ禍による大規模な経済クラッシュへの対応力が弱いこと
付加価値向上への取り組みが阻害されること

また、地域への集客を期待されるがために、キャンペーンイベントを開催するということもありがちです。これも、前述の記事に従うと、不確実性が高いなかで、いつどんなイベントをするのか決めることは極めて困難なので、民間の個別の判断でできるところから再開していくべきではないかということになります。たしかに、民間ではイニシャルコストやリスクを許容できないような大型のイベント(まさにそれが東京五輪であったわけですが)であれば、公的機関が主体となって実施するということにも多少の意義を見いだせるかもしれません。しかしながら、風評被害などで事業者や観光客が誤った情報を信じ込んでしまっているような状態でも無い限り、行政やDMOが税金を使ってイベントを開催したところでそれは市場原理を歪めている(ドーピングしているような)ことにしかなりません。短期的には成功とみなされるケースもあるかもしれませんが、いずれ誰かがその代償を知らず識らずのうちに背負わされることになるので、全体的、長期的にはゼロかマイナスになると考えられます。たとえ実施することになったとしても、そのリスクに対する責任を負うのは、一業界団体であるDMOよりも、影響を受ける可能性がある人全てを網羅できる自治体のほうがふさわしいのではないかと思います。

さて、ありがちな取り組みに対するもっともらしい批判を並べてみましたが、これらの取り組みは、大衆から不安を取り除く効果など様々な副作用も持っているはずなので、全否定されるものでも無いかと思います。ただ、それらの効果までをも見込んで損得判断することは極めて難しいです。いずれにしても、目新しさが無く面白くないことは考えたくないという性分なもので、否定的に捉えているというのが本音です笑

ただ、批判だけでは無責任ですので、DMOとして今後取り組むべきことが何なのかについて、ここでちゃんと自分なりの解を探してみたいと思います。事業戦略に迷ったときのヒントは、常に「その組織の強み」に隠されています。そこでここからは、DMOという組織の強みを踏まえて、これからやるべきことを考えてみたいと思います。

DMOの強みは「会員事業者間の情報共有支援による仮想的なスケールメリットの創出」に尽きます。とくに中小企業の多い京都のような街においては、1社1社ができること、知っていることはたかが知れていますが、アライアンスを組んでDMOに情報を集めることで効率化を図れば、大型商業施設やテーマパークなどの集客力に戦略的に対抗できます。したがって、「会員事業者とのネットワーク」を使ってコロナ禍からの回復期に社会の役に立つことを考えれば、それは自ずとDMOならではの取り組みになるはずです。

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