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消費生活相談員資格試験にチャレンジ(4)

2021年度 消費生活相談員資格試験(国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第四弾です。


4. 問題①から⑤のそれぞれについてア~オの文章の中から、誤っている文章を2つ選んで、その記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

① 以下のア~オは、消費者安全法に関する問題である。
ア 国及び地方公共団体は、消費者安全の確保に関する施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。
イ 都道府県知事は、当該都道府県の区域内における消費者被害の発生又は拡大の防止を図るため必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、消費者安全の確保に関し必要な措置の実施を要請することができる。
ウ 内閣総理大臣は、消費者事故等の発生に関する情報を得た場合において、消費者被害の発生又は拡大の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置があり、かつ、当該措置が速やかに実施されることが必要であると認めるときは、当該措置の実施に関する事務を所掌する大臣に対し、当該措置の速やかな実施を求めることができる。
エ 内閣総理大臣は、商品等が消費安全性を欠くことにより重大事故等が発生したときは、期限を定めずに当該商品等の譲渡、引渡しを禁止できる。
オ 内閣総理大臣は、消費者事故等に関する情報を踏まえて必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、消費者被害の発生又は拡大の防止に関し必要な勧告をすることができる。

正解:エ、オ

〔コメント〕
エ:「期限を定めずに」→ 「六月以内の期間を定めて」
※ 六月(ろくつき)=6か月のこと
オ:「都道府県知事に対し」→ 「事業者に対し」

〔参照条文〕消費者安全法
第四十条 内閣総理大臣は、商品等又は役務が消費安全性を欠くことにより重大事故等が発生した場合(当該重大事故等による被害の拡大又は当該重大事故等とその原因を同じくする重大事故等の発生(以下「重大生命身体被害の発生又は拡大」という。)の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置がある場合を除く。)において、重大生命身体被害の発生又は拡大の防止を図るため必要があると認めるときは、当該商品等(当該商品等が消費安全性を欠く原因となった部品、製造方法その他の事項を共通にする商品等を含む。以下この項において同じ。)又は役務を供給し、提供し、又は利用に供する事業者に対し、当該商品等又は役務につき、必要な点検、修理、改造、安全な使用方法の表示、役務の提供の方法の改善その他の必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。

(譲渡等の禁止又は制限)
第四十一条 内閣総理大臣は、商品等が消費安全性を欠くことにより重大事故等が発生し、かつ、当該重大事故等による被害が拡大し、又は当該重大事故等とその原因を同じくする重大事故等が発生する急迫した危険がある場合(重大生命身体被害の発生又は拡大の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置がある場合を除く。)において、重大生命身体被害の発生又は拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、必要な限度において、六月以内の期間を定めて、当該商品等(当該商品等が消費安全性を欠く原因となった部品、製造方法その他の事項を共通にする商品等を含む。)を事業として又は事業のために譲渡し、引き渡し、又は役務に使用することを禁止し、又は制限することができる。


② 以下のア~オは、民法等に関する問題である。
ア 一般法とは、ある分野について一般的に適用される法律をいい、特別法とは、その分野の中でも特定の部分についてのみ適用される法律をいう。
イ 民法は私法の一般法であり、その特別法として消費者契約法、食品表示法がある。
ウ 消費者契約法は、消費者契約に関する一般法であり、特定商取引法は、この領域に関する特別法となるが、特定商取引法上の不実告知の規定が適用される場合、消費者契約法の不実告知の規定は適用されない。
エ  契約自由の原則」は近代私法の基本原則であり民法にも規定されているが、この原則を強調しすぎると弱者の権利が害されることになるため、民法の特別法が制限をする場合がある。
オ 民法の特別法として製造物責任法があるが、製造物責任法に規定のない過失相殺や損害賠償の方法については、民法が適用される。

正解:イ、ウ

〔コメント〕
イ: 消費者契約法は特別法であるが、食品表示法は民事的な効力はなく、特別法ではない。
ウ: 特定商取引法が適用となった場合でも消費者契約法が適用除外される規定はない。


③ 以下のア~オは、特定商取引法に関する問題である。
ア 訪問販売において、主務大臣は、商品の種類について、不実告知をしたか否かを判断するために必要があるときは、事業者に対し、告げた事項の裏付けとなる「合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることができる。
イ 通信販売の広告表示に係る合理的な根拠を示す資料の提出についての規定において、「合理的な根拠を示す資料」とは、提出された資料が客観的に実証されたものであること、及び、広告における表示内容と実証された内容が適切に対応していること、の双方が必要である。
ウ 特定継続的役務提供においては、主務大臣は、事業者が役務の内容や効果等について不実告知をしたか否かを判断するため、事業者に対し、告げた事項の裏付けとなる「合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることはできない。
エ 特定商取引法で規定されている「合理的な根拠を示す資料」の提出期限は、期限延長がなされない限り、いずれの規定についても、運用指針において、主務大臣が当該資料の提出を求めた日から15日後とされている。
オ 「合理的な根拠を示す資料の提出」に関するいずれの規定においても、「合理的な根拠を示す資料」の提出を求められた事業者が、当該資料を提出しないときは、不実告知又は虚偽・誇大な表示があったものとみなされて、罰則が適用される。

正解:ウ、オ

〔コメント〕
ウ:「合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることはできる。
オ:罰則が適用されるのではなく、指示、業務停止命令の対象となる。

〔参照条文〕 特定商取引法
(合理的な根拠を示す資料の提出)
第四十四条の二 主務大臣は、前条第一項第一号又は第二号に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたか否かを判断するため必要が あると認めるときは、当該役務提供事業者又は当該販売業者に対し、期間を定めて、当該告げた事項の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該役務提供事業者又は当該販売業者が当該資料を提出しないときは、第四十六条第一項及び第四十七条第一項の規定の適用については、当該役務提供事業者又は当該販売業者は、前条第一項第一号又は第二号に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたものとみなす。

(合理的な根拠を示す資料の提出)
第六条の二 主務大臣は、前条第一項第一号に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該販売業者又は当該役務提供事業者に対し、期間を定めて、当該告げた事項の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該販売業者又は当該役務提供事業者が当該資料を提出しないときは、次条第一項及び第八条第一項の規定の適用については、当該販売業者又は当該役務提供事業者は、同号に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたものとみなす

(指示等)
第七条 主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項若しくは第四条から第六条までの規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる

(販売業者等に対する業務の停止等)
第八条 主務大臣は、販売業者若しくは役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項若しくは第四条から第六条までの規定に違反し若しくは前条第一項各号に掲げる行為をした場合において訪問販売に係る取引の公正及び購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同項の規定による指示に従わないときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、二年以内の期間を限り、訪問販売に関する業務の全部又は一部を停止すべきことを命ずることができる
〔以下省略〕


④ 以下のア~オは、社会福祉分野の法律、制度に関する問題である。
ア 生活保護法によれば、すべて国民は、法に定める要件を満たす限り、生活保護を、無差別平等に受けることができる。
イ 成年後見制度利用促進法の成立に伴い、生活保護の種類に、成年後見制度を利用するための「後見扶助」が追加された。
ウ 民生委員は、児童委員を兼ねる。
エ 生活困窮者自立支援法の「生活困窮者就労準備支援事業」とは、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、厚生労働省令で定める期間にわたり、準備金を供与する事業である。
オ 社会福祉法では、都道府県及び市(特別区を含む)は、条例で、福祉に関する事務所を設置しなければならない、としている。

正解:イ、エ

〔コメント〕
イ:生活保護の種類に「後見扶助」はない。
エ:「生活困窮者就労準備支援事業」とは、一般就労を行う前段階としての準備(日常生活に関する支援、社会自立に関する支援、就労自立に関する支援)を行う事業

〔参照URL〕
生活保護制度|厚生労働省


⑤ 以下のア~オは、全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された 2020(令和2)年の消費生活相談情報に関する問題である(「令和3年版消費者白書」による)。
ア 契約当事者が 65 歳未満である相談件数は、65 歳以上の高齢者が契約当事者である相談件数よりも多い。
イ 販売購入形態別相談件数をみると、契約当事者が 80 歳以上の場合、訪問販売の相談が、インターネット通販の相談よりも多い。
ウ 架空請求に関する相談件数は、前年より大きく減少した。
エ 身に覚えのない商品の送り付け等の「ネガティブ・オプション」に関する相談件数は、2016(平成 28)年に比べ半分以下に減少した。
オ 通信販売における「定期購入」に関する相談件数は、近年増加傾向にあったが、2020(令和2)年には減少に転じた。

正解:エ、オ

〔コメント〕
エ:「ネガティブ・オプション」の相談件数は2016年 2,899件、2020年 6,550件と増加
オ:定期購入に関する相談は増

〔参照URL〕
令和3年版消費者白書 第1部 第1章 第3節 (1)2020年の消費生活相談の概況 | 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2021/white_paper_108.html#m09

令和3年版消費者白書 第1部 第1章 第3節・第4節 最近注目される消費者問題|概要 | 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2021/white_paper_summary_03.html