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消費生活相談員資格試験にチャレンジ(12)

2021年度 消費生活相談員資格試験(国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ、12問目です。今回は消費者契約法に関する出題です。
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12. 次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
※以下は、消費者契約法に関する問題である。

① 消費者契約法第4条は、事業者からの不当な勧誘により締結された契約のうち、消費者が取り消すことができる場合について規定している。そのうち、消費者の不安をあおる告知により、消費者が困惑して意思表示をした場合について規定した同条第3項第3号においては、社会生活上の経験が乏しいことが要件とされており、若年者ではない(ア)中高年には適用されない。 また、同号は、消費者が過大な不安を抱いていることを事業者が知らなかった場合、(イ)適用されない。

正解:ア

〔コメント〕ア:中高年にも適用される

〔参照条文〕消費者契約法
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
2 〔省略〕
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
 一 ~ 二 〔省略〕
 三 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。
  イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
  ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

〔参照URL〕逐条解説|消費者庁 P56参照(第4条)


② いわゆる過量契約の取消しについて規定する消費者契約法第4条第4項は、消費者を勧誘する際に、事業者が過量な内容の消費者契約であることを認識していることを(ア)要件としていない。 消費者契約が取り消された場合、消費者が、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、(イ)現存利益の返還義務を負う。

正解:ア

〔コメント〕ア:事業者が過量な内容の消費者契約であることを知っていることが要件

〔参照条文〕消費者契約法
第四条第4項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。

(取消権を行使した消費者の返還義務)
第六条の二 民法第百二十一条の二第一項の規定にかかわらず、消費者契約に基づ く債務の履行として給付を受けた消費者は、第四条第一項から第四項までの規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う


③ 消費者契約法第4条第1項第1号は不実告知について規定するが、「事実と異なること」とは、告知の内容が(ア)客観的に真実又は真正でないこと を意味する。消費者が、同条同項に基づき契約を取り消した場合、その取消しは(イ)善意・無過失 の第三者に対抗することができない。

正解:○

〔参照URL〕逐条解説|消費者庁 P33,P93参照(第4条)


④ 消費者契約法による取消権は、追認をすることができる時から(ア)1年間 行使しないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から(イ)3年 を経過したときも同様である。

正解:イ

〔コメント〕イ:5年を経過したとき

〔参照条文〕消費者契約法
(取消権の行使期間等)
第七条 第四条第一項から第四項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。


⑤ 消費者契約法第4条第3項第7号は、消費者が契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、事業者が、契約を締結したならば負うこととなる義務の内容を実施し、消費者が契約の締結を断り切れない状況を作り出した場合における取消権について規定する。義務の内容を一部のみ実施した場合で実施前の状態に戻すことが著しく困難と評価できる場合、契約を取り消すことが(ア)できない。「実施前の状態に戻すことが著しく困難」とは、消費者にとって事実上不可能にすることも含まれ、当該消費者契約において、(イ)一般的・平均的な消費者 を基準として社会通念を基に判断される。

正解:ア

〔コメント〕ア:契約を取り消すことができる。

〔参照条文〕消費者契約法 
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条 〔第1、2項省略〕
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
 一 ~ 六 〔省略〕
 七 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること

〔参照URL〕逐条解説|消費者庁 P70参照(第4条)


⑥ 消費者が、不動産業者から日照を遮るビルの建築計画の存在を告げられず、「日照良好」との説明を受け、これを信じて戸建住宅を購入した場合において、不動産業者が当該計画を告げなかったことに(ア)故意又は重大な過失があれば、 消費者は契約を取り消すことができる。不動産業者が当該計画を告げようとしたが、消費者がこれを拒んだ場合、消費者は契約を取り消すことが(イ)できる

正解:イ

〔コメント〕イ:消費者が拒んだ場合、契約を取り消すことができない。

〔参照条文〕消費者契約法
第4条第2項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない


⑦ 消費者Ⅹは、中古自動車販売店に出向き、中古の普通乗用自動車Aを購入した。申込みの際に見せられたプライスボード(値札)には、走行距離が3万キロと記載されていたが、Aの実際の走行距離は 15万キロであった。中古自動車の走行距離は、消費者契約法第4条第1項第1号の(ア)「重要事項」に当たる。 プライスボードに3万キロと記載されていたことは、同号の(イ)「告げる」に当たる。

正解:○

〔参照URL〕逐条解説|消費者庁 P36参照(第4条)


⑧ 売買契約において、「商品が契約の内容に適合しないものであった場合においても、事業者は交換、修理の責任を負うにとどまり、一切の損害賠償責任は負わないものとする」旨の消費者契約の条項は、(ア)消費者契約法第8条により無効となる。「商品が契約の内容に適合しないものであった場合においても、消費者は解除権を行使することができない」旨の条項は、(イ)消費者契約法第8条の2により無効となる。

正解:ア

〔コメント〕ア:消費者契約法第8条第2項に該当し、無効とならない。
消費者には救済の手段が残されており、消費者の正当な利益が侵害されているとはいえないため、損害賠償責任の全部を免除する条項であっても無効とはしないとされているため。

〔参照条文〕消費者契約法
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 一~四 〔省略〕
2 前項第一号又は第二号に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合には、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき。)。以下この項において同じ。)に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除し、又は当該事業者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
 一 当該消費者契約において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該事業者が履行の追完をする責任又は不適合の程度に応じた代金若しくは報酬の減額をする責任を負うこととされている場合
 二 〔省略〕

〔参照URL〕逐条解説|消費者庁 P132参照(第8条)


⑨ 消費者契約法第10条は、「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」について規定しているが、これは、同条に規定する(ア)「法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」 を例示したものである。当該要件に該当し、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、(イ)取り消すことができる。

正解:イ

〔コメント〕イ:無効となる。

〔参照条文〕消費者契約法
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。


⑩ 消費者契約法において、適格消費者団体は、差止請求権の行使として、事業者の一定の不当行為の停止若しくは予防、又は(ア)当該行為に供した物の廃棄若しくは除去 等を請求することができる。また、(イ)国民生活センター及び地方公共団体 は、適格消費者団体の求めに応じ、差止請求権を適切に行使するために必要な限度において、消費生活相談に関する一定の情報を提供することができるとされている。

正解:○

〔参照条文〕消費者契約法 第12条、第40条