たぶん世界一大変な日本のサービス業

久々に日本の金融機関に電話したら、ただ解約書類を送ってもらうだけなのに、20分くらいかかってしまいました。

担当者に繋がるまでにたくさんの関門があります。繋がってからも、応対が異常に丁寧なんですよ。

「お客様、この度はご連絡ありがとうございます。この度はご解約の受付をご希望でしょうか。承知致しました。解約の受付書類をお送りさせていただく前に、いくつか確認したいことがございます。それでは、大変恐縮ではございますが、まずはじめにお客様の個人情報を確認させていただいてもよろしいでしょうか」

 という感じで、まあとても丁寧なんだけれど、時間がかかる。当方は国際電話なので、さっさと済ませたいわけです。途中でつい「すいません、国際電話なんで、短めにしてもらえますか」って言ってしまいました。メールは使えないし、海外への書類送付はNGだしで、海外から電話せざるを得ないのですよ….。

普段マレーシアではとてもラフに簡略にコトを進めています。
「書類送って欲しいのですが?」
「OKラー。アドレスプリーズ」
「サンキュー。オッケー、バーイ」
と言った具合。さらに、メールやチャットなど、電話以外の方法がある。これに慣れていると、久々の日本風にカルチャーショックを受けるんですよね。丁寧すぎるというか、まどろっこしい。

けれど、きっとこれくらい丁寧な言い方しないと、怒りだすお客さんがいるんでしょうね……。「誠意がない」とか「立場をわきまえてない」とか。日本のサービス業で働く人は、世界一大変な気がします。

最近、何かにつけて、労働環境が過酷すぎる、人手が足りない、余裕がない、という話が出てくるけれど、つまるところは一人一人の要求水準が高すぎて、全員に合わせているうちにサービスが肥大化しちゃうんじゃないでしょうかね。

日本のお客さんは、細かいことを心配してなんども電話して来たり、小さな瑕疵も許さなかったりします。すると、用意する資料もどんどん分厚くなります。つまりそのぶんコストが高くなってしまう。細かいところに気がついてしまう人が多すぎるってコトです。

さらに度を越したクレーマーがいて、この人たちに対応するために、余計な仕事が増えてたりしますよね。

私も雑誌の編集部にいた頃、クレーマーからの電話で1日潰れたりしました。特集が気に入らないからと「社長を出せ」とか言われたこともあります。本当迷惑でした。今思えば、単にマウントしやすい相手を探していたか、ストレスのはけ口を求めていただけかもしれませんね。

「常識」もね、一人一人違うから、これまた厄介なものです。



多分ね、小学校からずーっとみんなで我慢の練習をしてきて、職場でも嫌なことを我慢して頑張っていると、誰かが楽しているのが許せなくなるんですよ。「そんなの私は許されてない! ズルい!」ってわけです。だから、サービス業経験者が同じサービス業に厳しくなる。そして、全員がどんどん厳しい方に平等に追いやられていく。

マレーシアで営業の仕事していたとき、電話営業してたにも関わらず、お客さんから怒られることがまったくと言っていいほどありませんでした。クレーマーが少ないのです。マレーシアって、実は日本よりずっと平等じゃない社会なのに、です。

ここにはケータイいじってる店員さんに対して説教するおじさんはいません。それどころか、従業員に威張る人は軽蔑されます。

日本からきた企業と話してても、よく言われます。「日本人のお客さんはうるさいわりに手間がかかって大変なんですよ。マレーシア人は金払いも良いしクレームが少ない。本音を言えば、ウチはもうローカルのお客さんだけでやって行きたいんです」と。これは、東南アジアに進出した多くの日系企業から聞く感想です。

そういえば、大昔取材した大手電機メーカーの社長も同じようなことを言ってました。「日本の細かく厳しいお客さんに合わせていると、海外ではとても戦えない。だから韓国メーカーには勝てない」と。

この現状を変えていくには、私たち一人一人が、サービスや品質に対して寛容に、テキトーになっていくしかないんですよね……。そして他人に対しての「ズルい!」と思う気持ちをコントロールするコト。人は一人一人違うんですよ。平等なんて幻想なんです。

もちろん、古き良き日本のサービスもどっかに残せばいいと思います。けれど、全員がそこにこだわる必要も、もうないんじゃないかな。もっと気楽に行きたいと言う人のためのオプションはあっていい。

テキトーになるためには、一度東南アジアにきてみると良いですよ。信号機が壊れてたり、コンビニの店員さんがケータイいじってたり、楽しそうにおしゃべりしてたりします。スーパーで牛乳買うと腐ってたりします。

こういうのにイライラしなくなる人が増えると、きっと何か変わっていくと思います。


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