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マルドゥックシリーズの用語集 ~作中の具体例を添えて~

自分もふくめて雰囲気で読んでる人の為の用語集を作った。最初はちょっとした裁判くらいだったのにアノニマスでは選挙戦まで始まり、用語の意味が分かってないと十全に楽しめそうもないので色々と読み直したり調べたりしてみました。

基本的にアメリカの法案ベースで展開していると思われる。自分なりに噛み砕いてまとめているので厳密には正しくない記載もあります。あくまで作品を読むための補助的なメモの位置付けのつもりで書いたものです。

作中でもわざとボカしているのか明確な描写がなかったりするので、一部の項目は予想をふくみます

気分次第で追記します

登場人物の紹介はこちら↓

※致命的なネタバレはしないようにしていますが、2024年2月号までの内容に触れています。


証人保護プログラム

 実際にあるアメリカの制度。法廷に立つ証言者を告発された者達から守るための制度。証言者が犯罪者でも適用可能で裁判期間中は身柄の安全確保の為にほぼ24時間体制で警護及び監視がつく。ちなみにアメリカでは原告も証人として扱うこともある。証人本人が承諾しないと実施できない。連邦や地方検事主導で行われる。

 作中では当プログラムで対応できない状況に対応するため生命保全プログラムが発案された。


生命保全プログラム

 事件の証人足り得る人物について、本人又はその関係者からの申請等で適用される一連の手順形式。あくまでプログラムの実施が決定してから事件が成立となる。つまり司法に何らかの告発等をしてそれに事件性が認められ、なおかつその人物に生命の危険がある場合に実施される。事件の解決により連邦から報酬が支払われる。また特定の人物の持つ証言や証拠を元に事件の立件が見込める場合には、仮適用として対処できる。

 証人保護プラグラムとの違いは外部機関の関与が可能、そして仮適用の状態でも対象人物の保護拘束や武力による防衛が可能なこと。作中でも証人保護はこちらを指す。

ヴェロシティでの記念すべき1回目の発令も仮適用。スクランブルでは仮適用によりバロットを禁じられた科学技術で治療した。


マルドゥック・スクランブル-09

 人命保護を目的とした緊急法令で法的に禁止されている科学技術の使用が許可されている。通称「09(オーナイン)法案」、生命保全プログラムの一つ。プログラムが終了すると技術使用は違法に戻るため原則は終了にともない技術は取り上げられる。ヴェロシティ及びアノニマスのオフィスメンバーは有用性(人命保護)を証明し続けることで常時この法令の適用を受けている。

 人命保護には対象となる人物の治療や蘇生の他に護衛活動も含む。スクランブルではバロットが治療兼自衛力の確保という形で適用を受けている。戦力となるオフィスメンバーが増えたアノニマスではもっぱら護衛を目的として適用されている模様。


委任事件担当官(事件屋)

 現実では裏家業のような存在で、弁護士資格を持たずに諍いや紛争に介入しその解決で報酬を得る者。

 作中では正式な職業若しくは身分の模様。事件やトラブルの当事者から依頼を受けて、その解決を請け負う。身辺警護や各種手続きの代行、裁判の補助まで行っている。事件の円滑な解決を図るために担当官同士で事前に交渉等することが法律で保証されている。

依頼者が死亡すると契約終了。

 スクランブルでは畜産業者を利用して足がつかないように依頼人を「跡形もなく」消していた。短編"104"ではセーフハウス代わりのホテルを買取り、私有地にしてそこで軍事演習を行い演習中の事故死を狙った。


原告の死亡

 現実では裁判で訴えた側が死亡した場合は相続人がその地位を引き継いで裁判が続くことになる(例外あり)。

 しかしマルドゥックシティにおいては、明らかに警告と取れる形で若しくはその訴訟相手によって法に触れず「不慮の事故で亡くなった」ことが察することが出きるため、原告の承継が少ないと考えられます。

委任事件同様に合法的に違法行為を処理できる力がある勢力にとっては一番「穏便な」結末。


連邦捜査局


 現実のアメリカではご存じFBIです。複数の州にまたがる事件や、対テロなど治安維持に勤める機関。司法省の管轄組織。通常は市警察の方が権限が強く優先されるが、上記事件の際には切り替わる。

 作中では連邦捜査局の介入を良く思っていないが、管轄が市から国へ変わることも関係している可能性もある。生命保全プログラム中は外部機関が関与可能だが通常捜査になると弾かれるからかもしれない。事件の内容が09法案や楽園が存在するマルドゥック市限定の法律に関係する場合は、市の責任追求に発展するかもしれないからという可能性もある。

ヴェロシティの際に捜査官を派遣して惨殺されている。アノニマスでも派遣されているが、現状では傍観している。

 明確な理由が作中でなかった気がするので想像です。現状はシザースが連邦捜査局に入り込んでいるため、わざと連邦を呼び込むことも考えられる


集団訴訟

原告又は被告が複数いる場合の訴訟。
メリットは

・原告が複数の場合は一人当たりの負担が少なくなる
・原告側で証拠等を共有できて同じ根拠が複数あればその確実性も補強できる。
・その性質上マスメディアに露出しやすい

デメリットは

・通常の訴訟より時間がかかる
・関係者の増加による証拠漏洩の恐れ
・意思統一失敗時の瓦解の可能性

アノニマスでは「トリプルエックス・コキシブ」に関連して起こした。なお当初はフラワー法律事務所によって数十万件もの事案が別の訴訟として処理されていた。



共同訴訟

 集団訴訟の形態の一つ。請求の内容が複数人に関係する場合と複数の訴訟人に対して矛盾や食い違いなく判決を下さなければならない場合がある。

前者については共同でやることが「認められる」ものなので、平行して個々で訴訟することも可能。証拠は流用可能。後者は共同で行うことが強制される


クラスアクション

 アメリカにある集団訴訟の形態。多数の被害者が共通する権利の地位(クラス)を持っている場合に行われる。そのクラスに属する一部が、その全体の代表として訴えを起こす訴訟。代表とはあるがそのクラスに属する者に事前の同意は必要ない。尚その判決の結果はクラス全員に発生する。クラスから除外の申請をすることでこれは回避できる。

具体的な「クラス」は消費者や従業員など。訴訟の対象は日用品や保険、薬品など。

メリットは全員の同意が無くても良い為に迅速に訴訟に移れること。勝訴の場合は参加問わずにクラス全員に賠償が成されること。デメリットは除外の申請をしない限り、裁判に拘束されること。また全体に対する賠償なので個々の損害が反映されない判決がでる場合があること。

被告側の社会的ダメージが大きいので和解金で迅速に終結をさせる場合が多い。

 アノニマスでの集団訴訟はこちら


証言録取(デポジション)

 アメリカの裁判で認められるプロセス。法廷以外で証人に対して、弁護士(双方)が資料や証言内容の事実確認をする。記録者と公証人が同席し会話は録音され、後日確認して修正もできる。また要求する側が場所を指定できる。

半日以上掛かるのが普通らしく、場所指定と合わせて相手にプレッシャーを与えて訴訟取下げを狙うのも常套手段らしい。

 作中ではフラワーがエアリスに対して行った。多数の弁護士を引き連れ威圧したり、準備された証言や証拠に関して、トリプルエックス以外の要因や関係性を引き出そうとした。



スラップ訴訟

A→Bの不正を調査又は訴訟

B→Aの調査を中止又は訴訟を取り下げさせたい

この状況でBがAに対してとにかく民事訴訟をしまくること。裁判は基本的に資金、時間、精神を消耗するものである。民事訴訟は起こすだけなら簡単なため、Aに対する嫌がらせとしBが行う。

裁判は起こされたら被告は訴訟内容の妥当性に関わらず対応をしなければならない。資金力をもって相手のリソースを削ることが出きる。

 作中では発生していないが、何となく出てきそうなので。

ロビー活動

 個人や団体が議員等の政府関係者に対して、特定の影響を与えようとして行う活動。活動するのはあくまで政治に直接関与しない個人や団体の為、制約等に縛られず調査や情報発信ができる。

活動する人物、団体はロビイストと呼ばれる。支持する政党や議員への献金も大体セット。政治家サイドからすると「専門家」からの「アドバイス」、「民衆」の意見を聞いて政策に反映させるので「民主主義」の範疇という扱い。

 ヴェロシティでクリストファーが立候補や企業に接触して、状況を操作していたのもロビー活動にあたる

 アノニマスにおいてはジェイクを利用して足掛かりを作った。具体的には「<楽園>の協力が無くても、エンハンサーの封じ込めが可能だった」という前例を作り、既に解決策が出たのだから<楽園>の協力は不要であるとして、政府に訴えられる状況にした。



草の根ロビー活動(アウトサイドロビー活動)

 通常のロビー活動とは違い直接的に政治家や政党に接触しないで、世論を操作することで政策の方向性に影響を与えようとする活動。特定の団体や思想を叩く情報を増やして、結果的にそれらを規制する法案を通したりがこれ。逆に特定の業界に不利となる法案阻止の為に行われる場合もある。

 たぶんこれはシザースが常時行っている可能性がある。ヴェロシティで言及が在ったようにタイミングを狙いシザースに犯罪又は自白をさせて、捜査のきっかけを作ったりしている


法廷外戦術

直接法廷内で行われな行動でありながら、裁判や裁判官の心証に影響を与えるもの。代表的なのは不買運動。

巨大企業が相手の場合は市や国の利益に直結している場合があり、その恩恵を受ける政治家が意見表明やメディア露出をして世論に影響を与えたりする。

 作中でハンターは5種の福祉事業(本編読んでね)を支配しようとしている。これにより人命保護が十分にされないために行使されていた09法案に対し、「社会的に人命が保護される環境」が出来れば不要ではないかと世間に問い掛けた。裁判以外の要素によって原告の補佐、護衛に付くオフィスメンバーを排除し原告団にダメージを与えようとした。

ここからは予想だが、「事業の汚職によりケアされなかった結果の混乱」として手駒のエンハンサーを登場させ、「彼らは私の事業の結果、更正した」というモデルケースにして発表したりするかもしれない。実際に複数のメンバーは施設利用者として登録されている。



カジノ関連の法案、規則

 アメリカには関連法案が沢山有りすぎるので、ざっくりと全体的に

・カジノ運営に関わる法人•個人のライセンス取得
・反社排除のための関係者及びその家族の身辺調査
・ギャンブル依存への対策
・マネーロンダリング対策の徹底
・違法性疑われる客や取引の報告義務
・様々な規制や基準の調査や検査の受け入れ又は実施
・一定の金額を越える現金移動の規制
・開設する州や市毎に設けられる規制の遵守

 あんまり物語に関わって来ないと思ったが、作中で成立したのはヴェロシティの頃。もともと、犯罪行為の温床だった仕組みを洗浄(ロンダリング)するために可決。当時のカジノの主体は実質オクトーバー社でこの直後に市長がメーソン(シザース)に代わっている


エンハンサー(禁じられた科学技術を受けた者)

 後天的に様々な能力を手に入れた者達。戦争特需で著しく発達した兵器へ転用可能な技術郡で後付けの生体器官のようなものを移植されている。ホスピタルが死亡したメンバーから能力だけを保存しているため臓器若しくは部品の様な形で存在していると思われる。


09法案で特例的に使用が認められており、生命保全プログラム終了後は取り上げられるとあるとおり、本来は除去可能であるらしい。ボイルド他ヴェロシティのメンバーは戦時中に手術され長期仕様していた為か、体内組織と一体化していて除去=死亡らしい。バロットは皮膚そのものが能力器官であった為に除去は現実的ではないとされ、能力を封じる装置の着用を代替案として社会へ復帰した。

 正規のエンハンサーはワンオフに近く、それぞれの状態に合わせた能力が移植されている。対して違法エンハンサーは大量生産よろしく、大元が同じ能力を移植されその後成長することで用途に違いで出ている。ワイヤー・ワーム、特殊皮膚、温度操作が違法エンハンス能力の大半。

 通常は福祉法の適用により重篤者に技術が使用される。よって09法案も福祉法の制限を受ける。

シザース

 エンハンサーの1種で人格共有をする集団の総称。内部には複数の序列がある。「ゆらぎ」を司る存在がなければ他社との境界が曖昧になり自己を見失う模様。シザースであることの自覚のオンオフを操作でき、上位の序列は下位の精神に干渉できる。何らかの方法でシザースの輪から逃れることも出来る。

 市長からホームレス、連邦捜査官とありとあらゆる場所に在籍しヴェロシティの頃より勢力を伸ばしている。あらゆる項目の利得が常にゼロになる状態「総和の無ゼロサム」を目指し、理想的な秩序を成すことが目的。つまるところ貧困や不幸の否定はせず、その対となる裕福さや幸運を享受する存在がいれば良い。何故なら彼らはそれらを全員が共有することが可能だから。

個人的なイメージはテーブルの上にある水が張ったコップに色んな形の水ゼリーが入ってる感じ。テーブルがシザースの輪、コップが人格共有範囲、水が「ゆらぎ」でゼリーがシザース達です。

ゼリーは明確な形があるけど水の中にあるかぎり見えない。水が隙間を埋めて同一に見えるがゼリー溶けて一体化したわけではない。状況に応じてゼリーをテーブルに出して形を明確にしたり、逆にぐずぐずに崩してゆらぎの一部にしたりしている。テーブルの外に行くとシザースの輪から外れた状態。

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