ブログをやめた人①

今でもはっきりと覚えている。ブログを始めた日のことを。

私がブログを始めたのはお金のためだった。
当時は時代でいうと、FIREという経済的自立と早期退職を意味する生き方が、世のサラリーマンを中心に大きな注目を集め始めた頃だった。
FIREに特に強く関心を示していたのは、現在の働き方に不満や不安を持つ者たちで、私もそのうちの一人だったのだ。

私はとにかく、仕事がつまらなかった。
こんなことを言うと嫌みっぽく聞こえるが、何をしても上手くできてしまい退屈だったのだ。
子供のころから器用貧乏な素質があり、運動神経も良いほうだったし勉強も苦労はしなかった。上位数パーセントを目指さなければ、それなりに満足のいく成績を収めてきたのが私の人生だ。

スポーツや勉強は良い。練習すればするほど上達するし、どれだけ学んでもやるべきことが尽きないし、年齢や経歴に関係なく順位が入れ替わる。

ところが仕事は違った。与えられたタスクはすぐに終わってしまうし、タスク以外のことをすれば陰口をたたかれる。そのうえどんなに優秀でも不出来でも、順位は常に年齢や勤続年数、抗えない"時"が決めるのだ。

「わたしはもしかすると、会社勤めに向いていないのかもしれない。」

そう思っていた時に見つけたFIREという生き方、副業という選択、そして、ブログという手段だった。

数ある副業の中でブログを選んだ理由はシンプルだった。

「副業 おすすめ」の検索結果のうち、その時自宅にあったものだけで始められるのがブログだったのだ。
動画編集も候補の一つだったが、当時使っていた6万円のLenovoでは、文字を打つので精一杯だった。

ブログをはじめようと決めてからは、とにかく行動が早かった。
決心したのが5月28日で、そのわずか4日後の6月1日にはサーバーを3年契約し、Wordpressを開いていた。

Twitterアカウントもすぐに作った。最初はブログのターゲット層を観察するためだったが、ターゲットとブログ仲間がごちゃごちゃになってきたので、7日1日にはブログ用アカウントを作って、気が付けばそっちがメインになっていった。

自分と同じように、ブログで目標達成を目指す仲間と交流するのは楽しかった。情報交換したり、お互いのブログを覗きあったり、会ったこともないのに近況を気にしたり。
退屈だった日々に刺激をもたらしてくれる仲間がいることがなによりも嬉しかった。

最初のアカウント開設時から仲良くしてくれた”あずきさん(仮称)”という方がいた。
私の一月前にブログを始めた方で、アカウントを移行したときには一番にフォローしにきてくれた。

私はさんあずきさんが大好きだった。
ココナラで依頼したというアイコンはあずきさんそのものだったし、日々のツイートにも、リプにも人柄の良さが出ていた。
自身の職業を生かしたあずきさんのブログも大好きで、よく参考にしていた。私の実生活にはあまり関わりのないジャンルだったが、いつも更新を楽しみにしていた。

収益だってきちんと発生していたと思う。たまに報告してくれるブログ成果は、センスがある人のソレだったし、フォロワーもみるみる増えていった。
私はそんなあずきさんを尊敬していたし、あずきさんみたいになるぞ!といつも意気込んでいた。

だけど年が明けてしばらく、あずきさんは、あずきさんのブログは、ぴたりと更新が止まってしまったのだ。

半年以上、更新が止まるどころか1日に何記事も投稿していたあずきさんのブログは、何の前触れもなく更新を止め、1周年を迎えることなく、インターネットの世界から静かに姿を消したのだった。

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