もう決まってます。

今日は絶対にタイ料理が食べたかったので、お昼はなにがなんでもタイ料理を食べに行こうと言った。
私はガパオライスセットを頼んで、夫はトムヤムクンヌードルを頼んでいた。
頼んだ後でハッと思い出し、伝票を確認しながらキッチンへ戻ってゆく女性店員さんの背中に「あの!すみません!!パクチー抜きでお願いします!!」と少々大声で叫んだ。
タイ料理を注文するときはこれを言わないととても危険。
私は食べ物の中でパクチーだけが唯一食べられない。
食べ物の中で、と言ったけど本当はパクチーのことを食べ物だと思っていない。
私はパクチーが嫌いなあまり存在そのものを深く疑うようになっているので、
パクチーを食べられる人はなんかの強い組織によってそういうふうに開発されてしまった人で、私のように食べられない人はその強い組織でも開発不可能な選ばれた力の持ち主だと思っている。
そういうふうに思うことで、あのパクチーを好んでモリモリ食べられる人がこの世にいるという事実を受け入れることができる。
私の少々大声を聞いた店員さんは振り返り「ガパオにはサイショカラノッテナイデース!!」と笑顔で言った。
それを聞いた私はホッと胸を撫で下ろし「良かった・・・」と言った。
ガパオセットには、サラダとスープとドリンク、そしてデザートまでつく。(デザートはもちろんココナッツミルクに沈めた白い玉)
ここでドリンクを何にするか選んでいないことに気づき、ドリンクのメニューを見ると
マンゴージュース、グァバジュース、ライチジュース、マンゴー&ラッシー、グァバ&ラッシー、ライチ&ラッシー
という、ザ・東南アジアラインナップだった。
私は迷ったが、マンゴージュースを選んだ。
店員さんを呼ぶと、先ほどの女性店員さんがテーブルに来てくれた。
「すみません、ドリンク選んでなかったと思うんですけど、マンゴージュースでお願いします。」
とドリンクを注文すると、
「ハイ、モウ、マンゴージュースでキマッテマス!!」
と女性店員さんは強く言い放った。
マンゴージュースで決まっていた。決められていた。
マンゴージュース以外の選択権は最初から無かったのだ。
ドリンクメニューを見ながら迷っていたあの時間が、試されていた時間のように感じ、少々愚かな気分になった。
でも、正解して良かったと思った。



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