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PSYCHO-PASS 究極のスマートシティのかたち1 ~シビュラシステム誕生と確立

テレビアニメ PSYCHO-PASSは2012年に放映されて以来、シリーズ3まで続く人気作品のひとつである。放映当初はあまりにもショッキングすぎる内容に、途中脱落(ここではアニメを見ることをやめることを指す)した人も多いのではないだろうか。どうしてもこの話がしたくて、いくつかに分けてこの話を書こうと前々からネタを捏ねすぎたのでどこにぶつけたらよかったのかわからないこの思いと多少お付き合いいただければ幸いです。

さて、このPSYCHO-PASS。ストーリーも面白いのだがそれを面白くさせている要素がいくつかある。

PSYCHO-PASSの世界背景

PSYCHO-PASSの世界背景は公式ページによるとこのように記載されている。

2020年 世界恐慌はじまる
2021年 「新自由主義経済」の崩壊
2031年 サイコパス判定による「職業適性考査」の開始

2020年、現実では東京オリンピックで沸いているのかもしれないが、PSYCHO-PASSの世界ではすべての始まりの年でもある。また、翌年に新自由主義経済の崩壊とあるが、きっかけは中国のバブル崩壊という設定だ。それがトリガーとなり、アジア諸国から始まった不景気はやがて世界に広がる。こうして経済のほころびから始まった出来事は、人々の「考え」や「倫理観」といったものに影響を及ぼし、デモや暴動が常態化する世界になったという。

そのころの日本は、メタンハイドレートのエネルギー自給を確保していたので、世界で起きている内戦から身を守るようにして鎖国を開始した。壊滅状態だった民間企業は、国営化され、失業者に向けた政策の一環としてマークシート式「職業適性考査」の導入がすすめられたというわけだ。

ここまで、読んで現実世界での世界恐慌で起こったことも思い出すと、イタリア・フランスのとったブロック政策のような締め出し(自国と植民地に限る経済交流)がPSYCHO-PASSにおける日本国内で行われたと考えている。しかし、製造業が産業の2割を支える日本がエネルギー源さえ確保ができれば、本当に他国との関係性を絶っても問題なかったのかは多少疑問が残る。部品だけ作ったとしてもモノは作れないし、材料がなければ製造業の息の根は止まるだろうし。もしかしたら、この世界では製造業は完全に放棄された職業なのかもしれない。だからこそ、のこの「職業適性考査」なのかもしれないが。

シビュラシステムの誕生

この物語の核となる、そして究極のスマートシティたらしめるシビュラシステムの誕生はこの後になる。

2031年にサイコパス判定による「職業適性考査」が開始された。

厚生省主導により全国民に「職業適性考査」が義務づけられる。
大規模化した「職業適性考査」をより合理的かつ正確に行うため、サイマティックスキャン技術の導入が進められる。
と同時に、ふくれあがった演算処理に対応できるスーパーコンピュータが開発される。
これが「シビュラシステム」の萌芽となる。
より広範囲かつ正確なサイマティックスキャンが可能になったことにより、全国民にサイコパス測定を義務化。
以降数年の、サイコパス測定とマークシート式による「職業適性考査」の混在期を経て、サイコパス測定による「職業適性考査」に一本化される。
これに合わせ教育改革も始まる。

このスパコンが、後のシビュラシステムとなった。と、アニメ1期のストーリーを知っている人ならおかしなことに気づくだろう。それはネタばれにもなるため、後に説明する。

さて、このサイマスティックスキャンにより、サイコパス測定が可能とあるがアニメでは高精度カメラによるスキャンであった。センサーでのセンシングではなくカメラであることの優位性は「過去に遡って人物のある時点のサイコパス数値を特定する必要があるから」だと考えている。実際にアニメではカメラ映像を解析してサイコパス数値を特定するシーンがいくつか出てきていた。つまり、こういったことが必要となる出来事が起きるというわけだ。

そして、人々が生活している街中には大量のカメラが常に住民を見張っているため、夜間でも正確なサイコパス数値特定ができるようになる必要がある。リアルタイム測定を可能にしているのはおそらくこのシビュラシステムの測定精度だけはない。カメラの精度自体も、かなり高度な処理が行えるものではないかと推測している。

なお、定点カメラだけでなくPSYCHO-PASS内では自動歩行する巡回ロボットも高精度のカメラで常に住民を見張っている。このロボットの役割は、サイコパス数値の異常を検知することだけでなく警官のような役割も果たしている。

シビュラシステムの確立と、省庁再編による国策改革

さて、ここで警官のような、というワードをあえて出したのはこの後に続く省庁再編がこの後のPSYCHO-PASSの要素にも大きく絡むからである。

2051年 「職業適性考査」による日本経済の安定、鎖国政策の推進
2061年 「シビュラシステム」の確立、鎖国政策の完了

シビュラシステム活用した、職業適性考査で日本経済は安定の兆しを見せ始め、日本政府はやがて鎖国をより深めていくこととなった。その推進を担ったのは、エネルギー確保と食料確保問題の解決にある。

その前にひとつ大きな動きがあった。これが省庁編成である。行政の合理化を進めるきっかけになったのは、サイコパス測定を国民に職業適性考査以外でも活用しようと、「包括的生涯福祉支援システム」としてシビュラシステムが確立したことだ。そして、この再編を進めたのは職業適性考査を導入し、シビュラシステム活用を推し進めた厚生省である。いくつかの組織は厚生省配下に再編され、そしていくつかの組織は廃止された。そのうちの一つが警察庁だ。この出来事は、後のPSYCHO-PASSのストーリー中でも重要になる大きな動きであった。

食料確保問題については、北陸地帯一帯に巨大倉庫を設けたことで解決に至った。この巨大倉庫を整備したことと、加工がしやすく、かつ栄養分も調整できる遺伝子組み換え麦「ハイパーオーツ」がある農学博士によって生み出された。
それだけでない。このハイパーオーツの供給を安定化させるために、次は
善玉植物ウィルス「ウカノミタマ」も開発された。

シビュラシステムによって「農業」の適性が出る若者の数、単一の品目に頼った自給体制のリスク、農業用ドローンの性能と生産台数、無人工場や農業用ドローンの維持費を診断したところ、シビュラシステムは「現代人のほとんどに農業は不向き」であり、ウカノミタマがあれば「ハイパーオーツ単一の食料自給体制」でもリスクはほとんどないと判断。

この時点で、農業用ドローンの活用と無人工場が当たり前となっており、かつ需要予測も含めシビュラシステムが出した答えで、鎖国が完了した。

2031年から2061年の30年間のデータと、ハイパーオーツやウカノミタマといった新規要素も含め即座に予測を完了させるAIが今後どのような発展を見せるのか。また、この包括的生涯福祉支援システムはPSYCHO-PASSの世界観の日本に何をもらたしたのかは次回以降に。

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