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女性が最もキャリアを追求しやすい仕事、医師の実情

男女格差縮小は日本に課せられた大きな課題である。現状、出産を経験しない限り大卒の所得カーブに男女差はない。問題になるのは、産後、育児後の職場への復帰である。ふつうはあるポジションをずっと開けておくわけにはいかないので、産休・育休復帰後に元のポジションにはすでに後任が入っており、別のポジションを探すなどキャリアの巻き戻しを求められることが多い。一度パートタイムなどに移行してから正社員に戻ろうとしても、今度は若い新卒と席を争わねばならず、不利である。出産しなければ男女の所得カーブが同じ場合でも、出産を機に女性が後れを取ることになる。これが日本で所得の男女格差やジェンダーギャップ指数を悪化させる大きな原因となっている(なお、諸外国ではキャリア志向の女性は産休は最低限で職場復帰するのがふつうである国が先進国でも多い[*A1])。

男女格差を縮小するには何らかの対策を打たねばならない。その時ベンチマークになるのが、女性医師である。

①育児を外注できるほど高所得である

医師は高所得な職業の代表格である。比較的若い段階でも育児を外注したり主夫を養うに十分な所得を得ることができる。女性の所得が低くなる最大の原因が育児にあることから、諸外国のキャリア志向の女性同様、育児のアウトソースは女性の地位向上に必要なことである。

育児をアウトソースするためには十分な所得がなければならない。ワシントン女子などはキャリア中断の損失が大きいため月20万の保育費を払いながら仕事を続けているが[*A1]、日本でも医師であればその金額は十分払えるだろう。あるいは、配偶者に主夫になってもらって自分がキャリアを追求してもよい。主夫を養うに十分な所得はあるだろう。

②資格職であり復職に強い

育児を配偶者や外注に任せたとしても、どうしても出産に伴う身体的な負担というものもあるだろう。諸外国では産後1~3か月での復帰する前提の産休しかない国も多いが、日本は比較的長くとる国なので、1年程度とったとしよう。そうすると、復帰後のポジションの心配をしなくてはならなくなる。一度主婦化してパートタイムになると、正社員で同じポジションにそのまま復帰するのは難しい。

医師の場合はその心配は少ない。希少であるので常に引き合いがあり、病院側はフルタイムで働くよう懇願する状況にある。資格職の特性から復帰後もキャリア中断後に復帰しても同一労働同一賃金に近い待遇を受けることができる(多少あるにしても、正社員キャリアが途切れるのとは大きく違う)。私は女性の復職を応援するため女性に資格職(会計士などの士業、電気工事関連の資格など、看護師と薬剤師を除けば男性が大多数)を勧めているのだが、その頂点の一つが医師である。

つまり、医師はバリキャリ女子が働きやすさを求めたときに欲しいものが揃っている職業である。「個人では解決できないことを、政府に解決してもらいたい」……それが解決された職業が女性医師である。つまり、女性医師はバリキャリ女子のための育児・キャリア支援を行った時のベンチマークになる存在である。では、その女性医師の結婚事情を見ていこう。

女性医師の結婚・キャリア事情

まず、女性医師は未婚率が高いことで知られており、生涯未婚率(50歳時点)は、35.9%になる(男性医師は2.8%)[*B1]。結婚している6割の女性医師のうち、配偶者が男性医師である割合は6~7割に及ぶ[*B1][*B2]。男性医師はまた激務であるため育児との両立が難しくなり、多くの場合出産後に妻である医師がパートタイマーになるか、または主婦になってしまう[*B1]。育児の外注も限定的で、医師向け託児サービスが新たに提案されているが利用されるかは不明という状況である[*A1]。

キャリア継続を望むならば医師以外と結婚すればいいのだろうが、女性医師が男性医師と結婚する理由の筆頭が自分を上回る所得であり[*B2]、医師を上回る所得となるとどのみち激務であろうから、そのような男性に配偶者たる女性に内助の功を期待するのは無理で、早晩女性側が主婦化してしまうだろう。そのうえで育児の外注にも消極的となると、打つ手なしである[*B3]。男性医師との婚姻率は減っていくようにも見えるが、一部の女性医師が男性医師との婚活のための資格として医師免許を取る「ゆるふわ女医」がいるなどという主張も出ており[*B4]、何とも言えないところである。

「男が稼ぎ女は育児」というロールモデルを打破できる資格を有する女性医師でさえ、配偶者の選択段階で「自分より稼ぐ男」を好み、自ら「女性ジェンダーロール」を選択してしまう状況にある。

つまり、バリキャリ女子のためのあらゆる支援を入れたとして、問題が解消する可能性は低い。彼女らは自分より年収の高い男性を探してさまよい、多くが未婚になる。結婚したとして結局子育てのために労働を降りてしまう。バリキャリ女子が主張する育児支援、キャリア支援にいくらつぎ込んでも、少子化対策としても男女格差縮小策としても効果が低いと予想される。

男女格差縮小のために実効性のある手は、今私が思いつく中では一つしかない。男性を労働市場から強制排除することである。バリキャリ高年収男性の存在を消す。そこまですれば、確実に男女格差は縮小するであろう。



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