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利益をすべて還元しますが、「いい会社」ではありません

バリューブックスというオンラインの本屋で働く、飯田と申します。

いま、バリューブックスでは、下記の本の先行販売・予約販売を行なっており、かつ、定価の2〜3割にあたる書店利益をすべて還元しています。

ポッドキャスト「ゆる言語学ラジオ」を運営する、水野さんと堀元さんによる共著。身近な言葉の不思議を掘っていく1冊。書店利益分は著者に還元。


聴こえない親をもつ、聴こえる子ども、いわゆる「コーダ」の五十嵐さんが、家族の積み重ねた歴史を紐解いていくエッセイ。書店利益分は、本書にも登場する「優生手術被害者とともに歩むみやぎの会」に寄付。

端的に言えば、上記の本をどれだけバリューブックスが販売しても、直接的には1円も売上は立ちませんし、利益も出ません。むしろ、人件費を考えればマイナスです。

ゆる言語学ラジオの YouTube より
https://youtu.be/qY2RrfwTqXg

「利益を取らず、本のつくり手や社会のために利益を還元する素晴らしい(かつ、理解しがたい)会社だ」という言葉をいただくことも多いです。

しかし、これは"利益を出すための真っ当なビジネス"として取り組んでいます。

その仕組みを隠しているわけではないのですが、そこが伝わらずに「いい会社なんですね」と捉えられてしまうのはフェアではありませんし、謎に思われがちな本企画の構造を説明したく、この note を書いています。


後発のオンライン本屋は、どうやって Amazon に立ち向かうのか?


長野県上田市の倉庫風景

バリューブックスは、主に本の買取と販売を手がける会社です。長野県上田市に構えた倉庫からは、1日に約1万冊の本が売れていきます。そして、自社サイトでの販売を行なっているものの、その多くは Amazon といった他のプラットフォームから売れています。

かんたんに言えば、「Amazon でめちゃくちゃ本を売っている会社」です。「そういえば VALUE BOOKS から届いたことあるな」なんて人もいるのではないでしょうか。

Amazon という巨大な"書店"のおかげで、僕たちはたくさんの本を次の読み手に届けています。が、もちろんそこには手数料が発生し、いまや ◯億円という規模になっています。

そこで、2020年に自社サイトでの販売を始めました。他のプラットフォームで販売した時のように手数料はかからず、それにあわせて、お売りする際の販売金額も下げられます。

とはいえ、自分自身を振り返ってもそうですが、「本を買うなら、とりあえず Amazon」という認識が浸透していますよね。自社で本の販売を始めたところで、お客様を呼び込むのはとても難しい。

「VALUE BOOKS で本を購入する」という最初の体験を生み出すためには、どうすればよいのだろうか。

Amazon を活用して拡大してきた会社が、Amazon ではなく自社で本を購入してもらう、という体験づくりに挑戦しているわけです。

その一環として生まれた取り組みが、冒頭でお話した「書店利益分を全て還元して、本を売る」です。

「最初の購入」さえ生み出せれば、あとは自分たちの実力次第


VALUE BOOKS は、(無料で登録できる)会員制のサービスです。つまり、VALUE BOOKS で本を購入するために会員登録し、かつ、メルマガを受け取る設定を選んだ方には、その後もおすすめの本の紹介や、キャンペーンの案内をお送りすることができます。

「わざわざ VALUE BOOKS に会員登録をして、本を購入する」という最初の高いハードルさえ越えることができれば、僕たちの実力次第で、その後も VALUE BOOKS で本を購入していただける、長期的なお客様との関係を築けるのです。


実は、ゆる言語学ラジオが発売する『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』は、去年から予約受付をしていました。その後に書籍内容を改訂する必要が生まれ、予約の取り止めと発売延期となってしまったものの、3,000人以上の方から予約注文をいただきました。

つまり、この取り組みからは一銭の利益が生まれずとも、逆に言えば、(人件費を除けば)費用の負担なく、3,000人の方が VALUE BOOKS に会員登録してくださったのです。

広告費をほとんどかけずに、たくさんのお客様が VALUE BOOKS にやってくる。ひとつの広告手段として捉えたときには、とても有用な方法だと考えているんです。


ゆる言語学ラジオの YouTube より
https://youtu.be/qY2RrfwTqXg

書店利益をすべて著者に還元するので、ゆる言語学ラジオにとっても、「Amazon ではなく VALUE BOOKS で買ってね」と言いやすくなるはず、という意図もありました。

本が出版されたら、予約は Amazon のページを案内する。それが、普通です。 

でも、書店利益を著者に還元したり、寄付に活用したり、オリジナルの特典制作にあてたりすることで、その本の関係者が自然と Amazon ではなく VALUE BOOKS での購入を促したくなる。

そんな状況をつくりたかったんです。

あわせて、他の本を買ってくださる方もいる


VALUE BOOKS では、一回の注文に対して 250円の送料をいただいています。1冊買っても、10冊買っても、250円。

送料無料の Amazon と比べればデメリットではあるものの、「だったら、ついでに他の本も買おう」という動機に繋がりやすい、とも言えます。

※ 同時購入していただき、ありがとうございます!

あわせて購入された本に関しては、通常通り VALUE BOOKS の売上となり、利益へと繋がっています。

これに関しても、ほとんど広告費をかけることなく、VALUE BOOKS からたくさんの本が売れていく状況を生み出すことができている、というわけです。


これが本当に通用するかは分からないけれど


オンライン販売の話がメインでしたが、上田市で実店舗も経営しております

と、ここまで書いていて、自分でも「できすぎた話だなぁ」と思っています。

実際は、まだまだ始めたばかりの取り組みですし、果たしてこれが長期的に成立する企画なのかは、分かりません(もちろん、そうなるように努力している最中なのですが)。

この仕組みの単純な欠点で言うと、新刊の発売情報を事前にキャッチアップするのが難しく、気づいたときにはすでに Amazon の予約ページがバッチリ貼られている、ということがほとんどです(笑)。

Amazon への誘導はもちろんあってよいのですが、あとから僕たちが予約合戦に加わっても、なかなか太刀打ちできません。

ただ、ひとつひとつ事例をつくりながら、この取り組みに興味を持ってくれる著者・出版社の方々を増やしていきたい、と思っています。

地方のオンライン書店がどこまでできるのか、見守っていただければ幸いです。


そして、繰り返しにはなりますが、冒頭でご紹介した下記の2冊、絶賛先行販売 & 予約受付中です!

特典の動画やエッセイもご用意していますし、そもそもの本の内容がすごく魅力的なので、ぜひご覧いただければ幸いです。



すでにご予約・ご購入いただいたみなさま、本当にありがとうございます。

まだまだ小さなオンライン書店ですが、引き続き、頑張ります!

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