６月10日の聖火リレー　青森県１日目。青森市・青い海公園で関係者のみの代替セレモニー。東京五輪開幕まで43日、東京パラ開幕まで75日。

菅義偉首相が９日、国会の党首討論で東京五輪（1964年）の思い出を語る。「東洋の魔女」「マラソンのアベベ」「オランダのヘーシンク」などに感動したというが、場違いな発言である。

前回の東京五輪での思い出は首相と同じだ。女子バレーボールはテレビに釘付けになる。回転レシーブが武器の東洋の魔女が、宿敵・ソ連を下して頂点に立った。テレビの視聴率は66.8％。

アベベが２時間12分11秒2の世界最高記録で史上初めてマラソン連覇を果たす。２番手でトラックに入ってきた円谷幸吉が、ゴールを目前に抜き去られ３位。このシーンは忘れられない。

柔道無差別級決勝。巨漢ヘーシンクが、神永昭夫をけさ固めで押さえ込んで一本勝ち。喜んだオランダのコーチ陣が畳に駆け上がろうとするのを、ヘーシンクは手で制して押しとどめた。

首相はこの場面を振り返る。ヘーシンクは強さだけでなく、礼節を重んじる武道精神を体現した。あっぱれ。首相は64年五輪の思い出よりも、開催の是非を真剣に議論していただきたい。