見出し画像

日常に潜むサイケデリクス

あれは幼稚園の頃だったか、小学生の低学年の頃だったか。私は高熱にうなされていた。布団に入り目を開けるとオレンジ色の常夜灯、見慣れた天井に走る杉の杢目、右側には鎌倉彫りの和ダンスの模様が見える。常夜灯をじっと見つめてなんとか平常心を保とうとするも、目を閉じるたびにチカチカと別の景色が見えて、声が聞こえてきた。

「死ぬはずないじゃん」とおどけた様子で話しているのは、「ドラえもん」ののび太だ。90年代前半のアニメ作画と声だ。「死ぬはずないじゃーん」と繰り返し笑うのび太の姿と声がだんだんと歪んていく。そこに太ったモンク僧(ラーメンマン?)が飛び蹴りをしながら現れる。そんなループが脳内を駆け巡る中、目を開けば常夜灯が眩しく、だんだんと常夜灯がラーメンマンに見えた。朝を迎えたときの記憶はすでにない。

おそらくあれが初めてのサイケデリックな幻覚・幻聴体験だったはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?