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カッコいいお医者さんのおはなし

 お恥ずかしながら先日体調を崩してしまい高熱が続いた期間があり、ふと思い出したことがあった。10年くらい前にも同じような症状になったことがある。今回はその時に出会ったお医者さんのおはなし。

 当時は熱が何カ月も下がらなくて、そのうち高熱が続くようになってきたので、何件か医者巡りをしていた。平熱が36.8度と高めですこし動くと38度近くにはなるから、健康診断前には看護師さんに『体を冷やしてから検温してください』といつも言われていた。熱が高いことに耐性はあるものの、あまりにも長期間続いていたので病院嫌いながらも診察を受けることにした。しかしそこで分かったのは病気の名前でも治し方でもなく、医者は皆、口をそろえて同じことを言うということだった。

ヤブ『熱高いですねー。薬を処方するので様子を見てみましょう。また来週来て下さい。』

 で、翌週症状が変わらないまま病院へ行くと

ヤブ『熱高いですねー。原因がわからないので血液検査でもしてみましょうか。薬を処方するので様子を見てみましょう。また来週来てください。』

 えっ、なんなん。日本ヤブ医者協会のマニュアルでもあるんか。それとも協力して初診料稼ぎみたいなこすいことしてるんか。最近のソシャゲでも初回限定ログインボーナスってプレイヤーに対してサービスがあるのに。なんなんこいつらグルか。グルなんか。

 おそらく5つくらいの病院には行った。なぜ決まって同じ対応なのか。いっそのこと治らんなら治らんでいつかそのうち治るやろうから(意味不明)このままでいっかとも思い始めていた。ぼくは痛みやダルさに対する耐性が人よりも強いから、39度前後の熱ならいつも通り働ける。ただ、さすがに長期間高熱が続くと燃費も悪く疲れの回復が追いつかない。さらに喉の痛みも強くなり一滴の水も飲めなくなってきた。治したくて病院に行ってるのになんなんこいつら。と、ヤブに嫌気しかなかった。

 その日はなぜか、とある病院に向かっていた。

 その病院は大阪の某有名な繁華街にあった。メイン通りから裏道に入って、晴れた日でも陽が当たらないところに位置していた。人通りはまったくない。夜は絶対に通りたくないような場所。繁華街の裏道はいつ来ても怪しい。

 どうやってその病院を探しだしたのか、なぜそこに診察に行こうと思ったのかは覚えていない。なんとなくその病院を選んでいた。

 中に入ると少し古めかしい光景だった。紙の多い、アナログ感満載の昭和な雰囲気が漂う院内。立地のせいか、院内もやっぱりすこし暗い。朝いちばんで行ったおかげで診療待ちの患者さんはそう多くなかった。

 受付を済ませ順番を待つ。どこの病院でも同じ流れである。そして当然だが、なんの期待感も抱いていない。どうせ言われることはまた一緒なんやろななんて思っていた。診察してもらうまでは。

 仮に医師の名前はDr.BJとしておこう。

 さて、ぼくの順番が回ってきた。


Dr.BJ『今日はどうされました?』

 いつも伝えてることをいつもと同じ様に伝える。熱が数カ月も下がらないこととか、喉が痛くて水も飲めないこととか。どいつもこいつも様子見しかしないこととか。←new!!

Dr.BJ『なるほど。では、口を開けて、、、』

 どうせ症状を聞いたところでまた様子見になるだけやろ。くらいにしか思ってなかった。が、予想外の言葉が返ってきた。そしてここからのスピード感。

Dr.BJ『いやぁ、辛かったやろ! 痛かったやろ! しんどかったなぁ! よくここまで来てくれた! おれが治したるからな! ちょっと待っててや、、、』

(ほら、こいつも他のヤブと一緒、、、えっ?えっ?? このひとなんて言った? 「おれが治したる」って言った、、、?)

Dr.BJ『よし原因分かった。ちょっと強い薬使うけどええか?』

「は、、、はい。」

Dr.BJ『本来は××の治療に使うための強い薬やからな。だから強めの副作用がでるかもしれへん。それでもええか?』(xxは、ほっておいたら死に至る病だった)

「わかりました」

Dr.BJ『よっしゃ。ほなこれ飲んで。』

(えっ、ここで飲むん? いや、飲むけど。 えっ、いま? 普通薬局行って薬もらってから家に帰って、、、えっ?)

言われるがままに出された薬を一気に飲み干す。

Dr.BJ『なんかあったらいつでも連絡して。なんかなくてもまた様子見せにきて。』

(ほら出た得意の様子見。いつも通り1週間、、、)

『ほな、、、明日は何時に来れる? 午前中に来れるか?』

(、、、えっ!? 明日?? 来週じゃなくて?? しかも午前中!!?)

「、、、はい、大丈夫です」

『よっしゃ! ほんなら今日はしまいや! お大事に! 次の方ー』


 なにが起こったか理解出来なかった。診察開始まではいつも通りだったけれど、そこから怒涛のごとく進む診療。

『おれが治したる』

 めちゃくちゃタメ口で話されるのも初めてやったけど、今までのどのヤブよりも頼もしく感じられた。だって治すと宣言してくれた。帰路に着くとともに、ゆっくりとさっきまでの診療のことを振り返っていた。気付いたらぼくは泣いてた。当時は殺伐とした環境の中で生活していて、自分の居場所がどこにもなかった頃なので、病気が治るということよりもその優しさに触れたことで安堵したのだろう。

宣言するということは約束するということ。余談だが、ぼくはひとと約束することを怖いと思っている。なぜなら、約束は100%守り履行する義務があると考えているからだ。逆に約束を守らないということは、よほどのことがない限り嘘つきだし裏切りだ。約束するには覚悟がいるんだ。でもDr.BJは約束してくれた。

 翌朝、からだは軽くなっていた。体力は回復していないけど、久しぶりの平熱だ。すごく楽に感じた。

 そしてぼくは約束の時間に病院に行き、前日に引き続き診察してもらう。


『どないや??』

「いや、楽になりました。」

『おぉ、それは良かったな。原因もおしえたるからな、これからはちょっとでいいから気にかけとき。ほならもうええで。次の方ー』

 この日もアッという間に診察が終わった。

 これがカッコいいお医者さんの話。先日もすこし熱が続いていたからか、いままで忘れていたけどなんとなくDr.BJを思い出した。だからぼくのことは覚えていないだろうけど挨拶がてら診察してもらおうと思い、記憶を頼って病院に行ってみたところ、、、

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 きっといまもどこかで苦しんでるひとを助けているんだと思う。規則とかマニュアルとかそんなものは度外視して、誰にも言えない治療もたくさんしてきたんだろうなと思ってしまう。それくらい、助けられるひとを助けることに全力を尽くすお医者さんだったんだろうなと勝手に思ってる。

 ヤブたちがやったように様子見もだいじなんだろうと思う。でも目の前で苦しんでるひとがいて、きっとヤブが持ってる知識のどこかにも救う手段は存在していて、それなのに苦しんでる患者に寄り添うこともせず、ただただ様子見の使い回し。通院するのにも時間を削らなあかんねん。なんで治しも出来ないヤブのために時間を使わなければならないんだ。

 と思う一方で、経営を継続できないのであれば、様子見得意な医者たちの方が一定の社会的意義はあるのかもなとも思ったり。

ただぼくは、Dr.BJのように目の前のひとに全力で当たりたい。適当なことはしたくない。だからぼくは全力で選ぶし、これからも約束していく。