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JFL2位の衝撃(上)

JFL昇格をした2023年度、ブリオベッカ浦安は準優勝を飾った。2022年度は関東サッカーリーグ1部で6位だったチームだ。
一体なぜ準優勝が出来たのか?
準優勝したことで何があるのか。
3回にわたって少し考察してみたい。


JFL最終節

その瞬間を知るまで試合が終わってから3分が必要だった。
ブリオベッカ浦安は最終節、FCマルヤス岡崎(以下「マルヤス」)とマルヤス岡崎龍北スタジアムで戦っていた。前半戦(15節まで)が終わって選手たちは「マルヤスが一番大変な試合だった」とこぼしていたから接戦が予想された。
案の定、立ち上がりからマルヤスの波状攻撃に身を晒すことになる。ディフェンス陣が体を張ってなんとか耐える。
マルヤスは浦安をよく研究しているようで、小泉と村越の左からの攻撃に対してしっかりと守っていた。切り替えも早くすぐに後退させられる。浦安もシュートを外してしまうなど安定性がない。
そして後半になり走りきっているマルヤスに対して体力勝負で浦安が少しずつ形勢を逆転し始める。

井上のゴール


後半25分、29分と立て続けに得点をして2−0でアディショナルタイムに突入。そこでも走力に衰えが感じられなかった。そして終了のホイッスル。最終節を勝利で飾れた。

自分は体調面で試合会場には行けずyoutubeで試合を注視していた。
試合前は5位だった浦安。一方でレイラック滋賀とラインメール青森は勝利して2位となればJ3最下位のギラヴァンツ北九州との入れ替え戦に進む可能性を残していた。ソニー仙台も2位を狙っていた。
浦安の試合終了に合わせて青森とソニーの敗戦がわかり、3位以上が確定していた。一方の滋賀は2−1でヴィアティン三重に勝っていたものの、85分に失点をして同点に。アディショナルタイムが6分以上あり、浦安終了時点でまだ3分を残していた。

準優勝の瞬間

自分は慌てて三重(ホーム)と滋賀のチャネルに切り替えてその3分をドキドキしながら観戦した。
どうしても得点が欲しい滋賀がシュートを打ち込むも、三重のGKがなん度も弾き返す攻防。最後は滋賀のフリーキックを三重が跳ね返し試合終了。
その瞬間に浦安の準優勝が決まった。5位からの2位浮上。勝ち点1差というギリギリの結果であった。
自分は興奮して頭が真っ白になった。2017年のJFL降格をした時の対戦相手は滋賀(当時はMIOびわこ滋賀)に勝利をしながらの降格。その浦安がJFLで準優勝を飾るなどこの瞬間まで信じられなかった。

2017年 最終節に勝利しながらの降格確定に涙のラインダンス


すぐに正気に戻った自分はまず岡崎にいる主務の石下君に電話をした。石下君も興奮をしていて、電話からは選手たちの叫ぶ声が聞こえた。後から聞いたら浦安サポーターの方が観客席からこの驚くべき結果をチームに伝えてくれたとのことだった。
都並監督も「やりましたよ!!」と大声で語るし、二瓶選手など「社長!祝勝会するので奢ってください!」とすでにちゃっかりしたリクエストをしてくれた(笑)。
自分も本来なら主要スポンサー様に電話したり、浦安サッカー協会に連絡したりすべきだったのだが、なんだか興奮してその後の30分はあまり覚えていない。

優勝してもいないのになんで騒ぐ?

実は最終節前にすでにHonda FCの優勝は決まっていた。後半のHonda FCの勢いはすごく、2節を残して28節で優勝を決めていたのだ。
となると残りの話題は準優勝チームと最下位チーム(最下位は地域との入れ替え戦)になる。しかし最下位争いも28節で決していた。残り2節を残して15位の沖縄SVが勝ち点23、14位のミネベアミツミFCが31となっていた。
つまり残り2節の話題は準優勝に絞られた。浦安は29節を終わって5位。昇格のかかった滋賀と青森が全力で戦い、ソニーも持ち前の粘りを発揮するはずなので順当に5位ぐらいかなー、と思っていた。元々の目標は7位だったのでそれはクリアできており自分たちは満足していた。
しかし最後に勝って終わることは重要だ。監督もスタッフ陣も選手もその想いは変わらない。前節のミネベア戦で4得点と好調だったこともあり、勝利しか考えていなかった。

2017年に最終節で勝利しながらの降格を味わった。過去2年のJFL経験では苦しみが喜びを上回っていた記憶がある。勝てない、2年目に選手が流出する、監督の途中解任による交代。表彰式では何もなく隅っこでビールを舐めていた自分たちを思い出す。

2023年に制度が変わるまでは4位以内(上位2チーム)で条件が整えばJ3昇格が出来た。2023年度は2位以内でないとそれが叶わない。つまり昇格を目指すクラブチームにとって狭き門となってしまった。しかも優勝が決まったしまっていた最終節はどのチームも勝利しかないという状況だった。

自分たちにはスタジアムがない。だから昇格は今は関係ない。しかし関係ないと割り切ってしまうと何も生まれないのだ。心の中では一つでも順位を上げて行政や市民にアピールしたいという思いが強くあった。
そして他の上位が(おそらく)プレッシャーに苛まれながら勝てずに順位を落としていく中、残り3分の時間が「信じられないことが起こる!」といやが応にも興奮してしまったのだ。
そして準優勝。この結果は浦安市の関係者(市民も)にものすごいアピールになるはずなのだ。選手にも「JFLで準優勝させた」という思いが一生残るはずだ。
何より都並監督は常々「自分はJリーグの監督として結果を残せなかった」と話しているが、それを払拭する結果なのだ。

選手に送ったメッセージ

チームではtalknoteというメッセージアプリを使っている。自分が病後で試合に帯同できないので、試合前のはいつもここからメッセージを送っていた。その一部を紹介する。

おはようございます。本日も試合に行けず申し訳ありません。
まだ100メートル以上歩けない状態です。自分でもここまで治りが遅いとは思ってもいませんでした。最後の試合に行けないのはとても残念ですがリモート応援させてもらいます。

今年のチームはトップチームの長い歴史の中でもとびきり良いチームです。過去にも関東リーグに昇格した年なんかも感じたことがありますが、とにかくチームの一体感がよく分かります。素晴らしいチームだと思います。
素晴らしい、とは強いという意味だけではありません。サッカーを通して選手やスタッフの強い結束が感じられます。
よく他チームの選手から「浦安さんは楽しそうにサッカーをしている」と村田コーチが聞くようですが、他チームの選手から羨ましがられるというのは最高の褒め言葉だと思います。
本日も130%の力を出して、支援・応援していただいたいる皆様に勇気と感動と夢を与えてください。このメンバーでサッカーをするのは今日で最後です。企業チームと違い、選手それぞれの選択は毎年起こります。この最後の時間を楽しみ、喜びを爆発させてください。
残念ながら帯同できなかった選手の皆さん。試合はチームの集大成です。全員がいないとこのチームは出来上がっていません。一緒に練習をしたり、声をかけ合ったり、ホームゲームでサポートしたり。選手全ての力が結集されてピッチ上の試合が成り立っています。そういう意味ではピッチにいる選手たちは代表して皆さんと一緒に戦っているのです。放映を見ながら声を出して、エネルギーを送り続けましょう。

クラブのtalknoteから

チーム予算が限られているため、遠征できる選手はスタメン11のベンチ7名。合計18名だ。累積警告で出場停止になったDFの要の西袋選手から「自分のせいでクラブに迷惑をかけた。できれば帯同して全力で選手をサポートしたい」と申し入れがあった。その西袋の思いに応えて帯同を許可した。この19名以外の10名以上の選手は浦安に居残りなのだ。

一体感

チーム浦安の強みは「一体感」。このスローガンはすでに7年使っている。辻秀一先生(スポーツコンセプター)のメンタルトレーニングで得た言葉は「全員、全力、最後まで」。この2つの言葉を常に座右にしている。

2023年は勝利のラインダンスが復活

フィールドの選手は120%で走り切る。ベンチの選手はこの瞬間に交代があったらすぐに120%を発揮できるように準備。メンバー外の選手は今自分がやるべきことを自分で見つけて最大限の努力をする。
この役割に全く邪心なく取り組めたのが2023年のチームだった。

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