「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第22話〜V様宅〜
本日のお客様はV様。
V様は不動産屋さんでした。
「リフォーム後の部屋のクリーニングをお願いできる?」
そうお電話があり、気軽に受けたのが悪夢のはじまりでした……
当店のハウスクリーニングは一般のお客様からのご依頼が多く、いつもニコニコ現金払いをしていただいています。
業者さんや企業さん相手の場合、見積書・請求書・領収書など、提出書類の手間は増える上、支払いは翌月や翌々月になったりするので、積極的にはお受けしていません。
V様よりお電話いただいた時は、お掃除のオフシーズンだったので、
「仕事が無いよりはいいよね」
と、FAXでお見積書をお送りして受注することにしました。
V様より依頼があったのは、平家の戸建て。
『リフォームが終わった後のクリーニング』だとお聞きしていましたが、現場に着くと、職人さんがいっぱいいて、まだまだ作業中のようです。
(これではお掃除できないわ)
V様に確認のお電話をすると、
「作業が押してるようだから終わり次第、お掃除してくれる?でもお客さんが明後日引越しの予定でその前に見に来るそうだから、明日の朝8時までに終わらせてくれる?」
(うわっ無茶なことを言う人だなぁ)
「承知しました……職人さんと相談して進めてみます」
スタッフと一緒に職人さん達にご挨拶して、室内を確認しました。
水回りのリフォームは終わっていて、壁紙や玄関周りがまだのようでしたので、水回りのクリーニングから始めることに。
クリーニングと言っても、水回りはほとんど新品なものが設置されていたので、ささっと仕上げるだけでOKでした。
問題は室内のクリーニング。床も張り替えた後らしく、細かな木くずがたくさんあり、吸っても拭いても次々にどこからか出てきます。
(床は壁紙を貼り終えてからにしよう)
室内は最後に行い、窓ガラスを先に仕上げることにしました。
窓ガラスのサッシ枠にも、木くずがこんもり積もっています。
外せる窓は外し、水を流してブラシをかけるとスッキリ。
「よしっ!これで窓周りもOK。あとは…室内だけね」
クロス職人さんが壁紙を貼り終えるまで、スタッフとお昼休憩に入ることにしました。
お昼を終えて現場に戻ると……
「え?いない?」
壁紙を貼っていたクロス職人さんが見当たりません。
「壁紙は途中なのに、お昼を長めにとってるのかな?」
そうスタッフと話をしているのを聞いて、玄関のタイル貼りをしていた業者さんが……
「なんか電話があって『トラブルだ!』って急いで出て行ったぞ」
「えっそうなのですね。教えていただき、ありがとうございます」
(困ったわ。壁紙が終わらないと床のワックスがけができないし……)
「オーナー、待っててもできることがないので出直しませんか?パートさんはもうすぐ帰る時間になるし」
スタッフの提案で、一旦事務所に戻ることに。
「予定では3人でクリーニングして14時には終わる予定だったのに」
「今日は夜中までの作業になる予感がします」
事務所に向かう車で、感のいいスタッフがそんな予言めいたことを言いました。
そして、スタッフの予言は的中。
結局、壁紙職人さんが戻って来たのがその日の夕方で、貼り終えたのが21時。
それから、室内を一通り掃除して床洗浄してワックスがけをして……
ぜんぶの作業が終わったのが、日付が変わった夜中の1時すぎでした。
スタッフには残業手当をつけましたが、V様とは時間での契約ではなく、部屋面積でのお見積りだったため追加料金は請求できず。
「ちょっとマイナスになったわね」
そう言いつつ、請求書を作成してV様に郵便でお送りしました。
それから1ヶ月経った月末。
「あれ?振り込まれてない」
月末の締め作業をしようと銀行へ記帳に行った私は、未入金に気がつきます。
V様とお約束した期日を過ぎても、クリーニング代金が振り込まれていません。
「翌月20日には支払うとおっしゃっていたのに……」
V様に確認しようと不動産屋に電話をかけると、不在だと言います。
「V様がいらっしゃらなければ、経理のことがわかる方におつなぎいただけますか?」
それも不在だと言います。
最初はたまたま不在なのかと思いましたが、翌日の朝昼夕方、いつかけても「不在」続き。
感のいいスタッフに
「バックレようとしてるんじゃないですか?」
そう言われてハッと気がつき。
業者だけが知る裏サイトで「○○不動産」を調べたところ、未払いや遅延が多い業者リストに名前が載っていました。
しかも、ヤ○ザと関係しているとの噂も書かれています。
「うわ〜最初から支払う気がないのに頼んだってこと?」
「そうかもしれませんね。ウチはゆるくて騙せそうに見えたんじゃないですか?」
「え〜どうしよう。数万円で訴訟を起こすのもなんだし……」
「まずは内容証明郵便を出しましょう!」
手続きに詳しいスタッフに教えてもらいながら、同じ請求内容の文書を3通作成し、郵便局より差し出しました。
「これで様子をみましょう」
内容証明郵便が届いたころに再度お電話しましたが、またまた担当者は不在だと言います。
「いつお戻りか教えていただけますか?」
「それはこちらもわかりません。ガチャッ!」
乱暴に電話を切られ、モヤモヤが倍増。
「もう怒った!少額訴訟をする!」
手続きの仕方は窓口に行けば教えてもらえるはず。
そう考えた単純な私は、少額訴訟のやり方を教わろうと裁判所へ行きました。
裁判所の窓口で事情を説明すると、係の方は戸惑った様子。
別室に案内され、以下の説明を受けました。
「裁判所では、訴状の書き方は教えることはなく、書類を受け付けるのみとなります。また、対業者の場合、相手の言い分…例えばお掃除のクオリティが低かったから支払わない、などがあると訴訟を起こしても少額の和解金になるかもしれません。それでも手続きを行いますか?」
「仕上がりについてはクレームもなにもなかったので、手続きを進めたいです」
「承知しました…」
窓口の方より少額訴訟の手続きに必要な書類と添付書類のメモを受け取り、その日は帰りました。
事務所でV様にお送りした見積書や、これまでの経緯をまとめているところへ、スタッフから電話が入ります。
「オーナー、事務所のテレビ見れますか?V様の不動産屋がニュースに出てます!」
急いでテレビをつけると、訴訟相手の不動産屋が倒産したとのニュースが流れています。
「えぇ!これじゃ請求できない……」
というわけで、ブラック不動産はつぶれ、クリーニング代は回収できませんでしたが、これは勉強代だと切り替えました。
それから、初めてお取引する法人様・店舗様は、初回のみ現金払いで2回目以降から請求書払いも可という対応にし、未払いは無くなったのでした。
ぜんぶがぜんぶとは言いませんが、世の中にはびこるブラック不動産にはどうぞご注意ください。
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