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検証!ジェンダーレスネームは本当に増えているのか

Xジェンダーの当事者団体であるlabel Xでは、名前についての悩みがよく話題になる。ジェンダーアイデンティティは男女どちらでもないのに、名前がいかにも男っぽいまたは女っぽい名前だと、自分に相応しい名前だと思えないのだ。もちろん改名という選択肢はあるが、親からもらった名前を変えることは簡単なことではない。名前についての悩みを聞くたび、名前のジェンダー差がなくなればいいのに、と思う。

昨年末、2022年生まれの新生児の名前に関して、女の子としても男の子としてもよくある名前、いわゆるジェンダーレスネームが増えているという記事が目に入った。

実際にジェンダーレスネームは増えてきているのだろうか?

そこで、ここ数年の新生児名トップ100のデータから名前のジェンダーレス化について実際に検証してみたので、その内容を紹介する。

ジェンダーレスネームの定義

そもそもジェンダーレスネームとはどのように定義したらいいのだろうか。ネットをググってみても、明確な定義は見当たらない。一旦以下のように定義してみた。

ジェンダーレスネームの定義:
男女どちらかの性別が想起されるジェンダーバイアスが生じる可能性が低い名前

実際に統計的な検証をする際には、より具体的な条件が必要になる。今回は以下の条件でジェンダーレスネームをピックアップした。

ある年の新生児の名前(読み)のうち、男女両方のトップ100にランクインしている名前

トップ100に限定したのは、単にそれ以下のデータが手に入らなかったためであるが、少なくともよくある名前だと言うことができる。また、名前を漢字ではなく読みにしたのは、日常のコミュニケーションにおいては漢字よりも読みの方がより影響力が大きいと考えたためである。

2022年の名前トップ100

まずは2022年の新生児につけられた名前のうち、男女別読みのトップ100を見てみよう。データは「ベビーカレンダー」のサイト※1からダウンロードしたものを使用している。

2022年 男女別新生児の名前(読み)トップ100

漫画に出てくるような今どきの名前が多いことに驚く。そして女の子の名前は女の子らしく、男の子の名前は男の子らしい名前がまだまだ主流なのだと改めて感じた。そんな中でも前述の定義に当てはまるジェンダーレスネームがいくつもランクインしている。黄色に色付けした名前である。

2017年~2022年のジェンダーレスネーム傾向

次にここ6年間のジェンダーレスネーム数の推移を見てみよう。結論から言うと、ジェンダーレスネームは増えてきている。特に2022年は一気に増えたようだ。

男女ともトップ100にランクインしたジェンダーレスネーム数の推移

それぞれの年のジェンダーレスネームは以下の通りである。年ごとの流行りはあるものの、「あおい」「はる」「ひなた」「みつき」「ゆうり」「れい」は6年間ずっとランクインしている常連のようだ。

各年の名前の一覧を眺めているうち、どうもジェンダーレスネームになりやすい名前とそうでない名前があることに気が付いた。

日本人の名前は2~4音程度が多い。その中でも最初の2音が主な音、3~4音目が添えられる音という構造の名前が多いように思われる。その添えられる音が「な」「り」「さ」「は」「か」「の」「ん」等だと女の子っぽく、「と」「ま」「た」「せい」等だと男の子っぽくなるようだ。

例えば主な音が「はる」である場合、「はるな」「はるか」だと女の子っぽく、「はると」「はるま」だと男の子っぽくなる。

ところが、2音の名前は添えられる音がない。なので男女どちらかに固定される印象が薄く、ジェンダーレスネームになりやすいと考えられる。

2022年は2文字のジェンダーレスネームが多く、特に「あお」「うた」「なお」「るい」「るか」といった新しいジェンダーレスネームがランクインしている。

もうひとつは添えられる音が「き」と「り」の名前である。2022年のジェンダーレスネームとしても「なつき」「みつき」「いおり」「ゆうり」等がランクインしている。「き」と「り」の音は男女どちらにも多く見られるため、これもジェンダーレスネームになりやすいようだ。

さいごに

女の子は女の子らしく育ってほしいから女の子らしい名前をつける。男の子もまた然り。そんな名づけが今でも主流なわけだが、敢えてジェンダーレスネームを選ぶ名づけが徐々に増えてきていることは、Xジェンダーの立場としては朗報だと言える。

生まれてきたこの子は、差し当たって女の子(または男の子)のようだけれど、この子のジェンダーはこの子にしかわからない。どんなジェンダーアイデンティティを備え持っていたとしても、この子らしく輝けるような名前をプレゼントする。そんな名づけが増えていくことを願っている。


※1 ベビーカレンダーの名づけ・名前ランキングサイト

ちなみにこのサイトではある名前を入力すると、その名前が男女別ランキングの何位だったのかがわかる。もし自分の名前にコンプレックスを持っているXジェンダー当事者は、このサイトで自分の名前を調べてみると、意外にどちらの性別にも自分と同じ名前の子がいたりして面白いかもしれない。

どうでもいいが筆者の名前は全部の年で男女ともランキング外、つまりここ数年1人もいなかったらしい。
男女云々以前に、既に時代遅れの名前だった…。


本記事はXジェンダーのための会員制コミュニティlabel X(ラベル・エックス)の公式note記事です。

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記事執筆者:やすよ


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